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最終章 白紙の便り
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目が覚めると、僕は先生の部屋にいた。
ヴェル「目が覚めたかい?ドーデン」
ドーデン「先生…」
今度はよく覚えている。
先生が今まで叶えられなかった約束。
人になることを望み、悲劇を繰り返してしまった僕達。
今度こそは…叶えてみせる。
僕は白紙の便りを強く握りしめた。
ヴェル「今の君に、この世界はどう見えているのかな?」
前とは違った鮮やかな世界だ。
今までの線画の世界とは違い、
美しく綺麗で絵画のような完成された世界がそこにあった。
ドーデン「とても綺麗な世界です。
今までの線画とは違って」
ヴェル「そうか、それは良かった。
今回は拒まなかったんだね」
白紙病は、色を拒んだ証。
そして、己を拒んだ証。
今まで僕自身を拒んでいたのだ。
それが、今は違うらしい。
こうして昔の記憶もある。
不思議だ。覚えているなんて。
今までの僕は、覚えてすらいなかったのに…
ドーデン「先生」
ヴェル「何だい?ドーデン」
ドーデン「今度こそ、終わらせましょう」
ヴェル「ああ、今度こそ、君を救ってみせる」
それを聞いた先生は、嬉しそうに微笑んだ。
生物兵器は覚悟する。
今度こそ過ちを犯さない為に。
人を傷つけることしか知らぬこの爪が、
いつしか人を抱きしめる為の腕になれるように。
人ではない哀れな化け物。
彼は、人を傷つけないことを誓った。
◇◇◇
今日も少女が倒れている。
もう慣れてしまった展開は、
同じシーンを読み返すかのように、
何度も繰り返していた。
その姿は間違いなく、
僕が今まで殺してきた少女だ。
フェルエット、それが彼女の名前。
先生の弟子でもあり、最初の被害者。
僕は彼女に「ごめんね」と言った。
許してくれとは言わない。
今まで裏切って、殺してきたのだから。
怒ってくれても構わない。
僕は君にそれだけのことをしてきた。
君の絵の具欲しさに殺してきた。
でも、君にとっては望んだ死に方ではない。
僕を恨んでくれても構わない。
それで僕を殺すと言っても、僕は受け入れよう。
僕は自分の爪を頬に当てる。
その時に引っ掻いてしまったのか、
僕の頬からは、一筋の傷が出来ていた。
傷口からは生き物とは思えない、
青い血が流れ出てくる。
ああ、気持ち悪い血だ。
動物でさえ真っ赤なのに、何で僕だけ青色なんだ。
傷口から流れる青い血液は、
地面に落ちた途端嫌な煙が出た。
僕は静かに青い血液を見つめる。
確か、先生は毒の魔女…
ドーデン「・・・なるほど、酸系の血か」
血でさえも、人を傷つけるのか。
なるべく人の前では、
怪我をしないように気を付けよう。
僕は彼女を見つめる。
しかし、彼女が目覚める様子はない。
ドーデン「君は、僕が怖い?」
返事はなかった。
フェルエットは先生の部屋で眠る。
先生は相変わらず不機嫌そうにしていたが、
放ってはおけない。彼女は僕を嫌っているだろうか。
それとも好きでいてくれているのだろうか。
何度も繰り返し君を殺した僕でも、受け入れてくれる?
僕は今まで彼女を殺してきた。
この爪で、赤い絵の具を、引きずり出して…
そして彼女は目覚める。
・・・やはり僕を覚えていない。
僕には昔の記憶があるけれど、
彼女には僕が今までずっと殺してきた
あの日の記憶は全て白紙に、戻っている。
最初からなかったかのように、
痕跡を消していくかのように。
毒の魔女は人間達からあの日の出来事を
綺麗に記憶から消していた。
ヴェル「彼女もどうかと思うが、君も大概だね。
いつも、同じ行動しかしないじゃないか」
先生は大きなため息を吐いて僕を見つめた。
彼女は訳が分からず首を傾げている。
ドーデン「先生、僕はともかく、
今の彼女に言っても分かりませんよ」
ヴェル「それもそうだったね…」
彼女には、記憶がない。
そして彼女は魔女の弟子となる。
これも今までと同じだ。
でも、違う所が二つある。
一つ目は、僕には今までの記憶があること。
二つ目は…
タルテ「やあヴェル、今回は上手くいきそう?」
今まで先生の会話でしか出てこなかった。
彼、ヒェスタルテの登場だ。
ヴェル「あ、クソタルト…」
タルテ「だから何でスイーツ扱いするのさ」
ドーデン「クソタルトという名前の魔女なんですか?」
ヴェル「そうだ」
タルテ「嘘を教えるんじゃないよ嘘を」
ヴェル「間違えてはいないだろ」
タルテ「いや、僕ヒェスタルテだし、
ヴェルが勝手にそう呼んでるだけでしょ?」
ヴェル「何だ、不満か?
これ程ぴったりで覚えやすい呼び方はないだろ」
タルテ「むしろ不満しかないよ」
ドーデン「タルトさんは、何の魔女なんですか?」
タルテ「・・・まあ、まだましか。
僕は変幻自在の魔女、気分で様々な姿に変わるから、
僕に性別は存在しないんだ。」
ドーデン「どんな姿にも変身出来るんですか?」
タルテ「うん、試しにやってみてあげるよ。
あ、何かリクエストとかある?」
ドーデン「ではまず先生の姿を」
ヴェル「おい、ふざけるな」
タルテ「えーと、そうだな…
ヴェルの姿となると…」
タルトさんは段々と先生の姿に変わっていった。
タルテ「こんな感じかな?」
ドーデン「凄い、先生そっくりですね!」
ヴェル「おい、手を抜くんじゃない。
私はもっときりっとした顔をしてだな…」
フェル「・・・二人は魔女さんなの?」
タルテ「あ、フェルのこと忘れてた…」
フェルエットは長いので、
これからはフェルと呼ぼう。
フェル「ねえドーデン、先生は魔女なの?」
ドーデン「うん、そうだよ。
先生は、僕を作った毒の魔女なんだ」
フェル「毒の魔女…」
魔女と聞いて明らかにフェルの顔が曇った。
人間にとっては、魔女は脅威の存在だからだろう。
でも、先生なら大丈夫だよね。
ヴェル「おい、クソタルト。
私はもっとイケメンだ」
タルテ「注文が多いなヴェルは…
ならこれで良いかい?」
ヴェル「いや、まだダメだな。
まだ私の姿を完全に似せていない」
タルテ「そこまで言うなら、
その完全体のヴェルになってみせるよ!
ほら、どこが違うのかちゃんと言って!」
ヴェル「よし!その意気だタルト!
一体どこまで私に似せられるかな!?」
二人は…もうほっとこう。
ドーデン「フェルは、魔女は嫌い?」
フェル「・・・だって、魔女は人を食べるんでしょ?」
ドーデン「そう?僕は聞いたことないけど。
先生、魔女って人を食べるんですか?」
ヴェル「ふむ、段々近づいてきたな。
後少しで完璧な私になれるだろう」
全然聞いてない…
しかも、タルトさんが変身した先生の顔が、
最早別人レベルだし…
ドーデン「先生、自分の顔を無駄に美形にしてないで、
質問に答えて下さいよ」
ヴェル「おい、無駄って何だ無駄って」
タルテ「ん?何を聞きたいの?」
ドーデン「まずその気味悪い顔戻してもらって良いですか?」
ヴェル「気味悪い言うな」
タルトさんはすぐに元の顔に戻した。
タルテ「で、用件は?」
ドーデン「魔女って人食べるんですか?」
タルテ「中にはいるよ」
そんなさらっと言われても…
あ、フェルが怯え始めた。
タルテ「と言っても、僕は不味そうだから食べないけどね」
ヴェル「私も同意見だな」
ドーデン「あ、二人は大丈夫そ…」
ヴェル「食うよりも、殺した方が楽だろ」
前言撤回しよう。
ドーデン「さらっと物騒なこと言うのやめてくれません?
フェルが怯えるじゃないですか」
ヴェル「事実なのだから仕方無いだろ」
タルテ「確かにそうだね。
僕は人を食べるのは反対だけど、
向こうが襲ってきたなら、
何人殺しても問題ないよね?」
ダメだ、この魔女達思いやりを知らない。
ドーデン「二人とも、人間の前でそんなこと言うとか、
思いやりはないんですか?」
ヴェル「待てドーデン、
どうやらお前は私達を冷たい奴と思っていないか?」
タルテ「え?僕もその一人なの?
そんなつもりじゃなかったんだけど」
ドーデン「いや、タルトさんも充分
思いやりありませんからね?」
タルテ「な、何だって!?」
ヴェル「そんなことより本題に戻ろう」
タルテ「そんなことよりって何」
ドーデン「何か言いたいことでも?」
ヴェル「私が人間嫌いということは、
もう知っているだろう?」
ドーデン「知ってますけど、
それがどうしたんですか?」
ヴェル「人間が嫌いな魔女は、
実際そんなに珍しくはないんだ」
タルテ「今まで人間に歩み寄った同胞達は、
同様に酷い目に遭わされたからね…」
ヴェル「むしろ嫌いじゃない方がおかしいし珍しいな」
ドーデン「そんなに人間って、悪いことしたんですか?」
ヴェル「何なら、今からフェルに
魔女が出たと村中に言いふらしてもらうか?
奴らの本性が分かるだろう」
タルテ「ちょっとヴェル、
僕も巻き込むような危険なこと試さないでよ。
ヴェルと一緒に殺されたくない」
フェル「どういうこと?」
ドーデン「ああ、そういうことですか」
ヴェル「まあ要するに、魔女を売って見殺しにするか、
このまま生かすかの二択ってことだ」
魔女に与えられた選択肢は、
二択しかない。
人とは違った魔女。
容姿だけは似ているその姿は、
どうやら人間には受け入れがたいらしい。
僕は、昔人間に化け物と言われて
急に襲われた記憶を思い出した。
彼ら魔女は、人の姿に近い。
人間は、色を拒んだ僕よりも、
友好的かどうかなんて関係なく、
様々な存在を拒んでいた。
ヴェル「恐らく人間達が私達を殺す理由は、
畏怖(いふ)からだろうな」
タルテ「ああ、言われてみればそうかも。
人間にとって、自分には使えない力とかあったら怖いのかもね」
ドーデン「つまり、殺されるかもしれないという恐怖から、
魔女を殺すということですか?」
ヴェル「まあ、それでも悪質だけどな。
我らは特に理由とかなくてもやるが、
あいつらの行動は悪意で行動する」
タルテ「そこが怖いところだよね。
人間って、同族でも潰し合うんでしょ?
人間じゃなくて悪魔なんじゃない?」
ヴェル「いや、悪魔の方がまだ紳士的だろ」
タルテ「あ、それもそうか」
ヴェル「ところで、クソタルト。
お前は今日雑談をしに来ただけなのか?」
タルテ「あ、そのことなんだけどね」
◇◇◇
タルテ「じゃあヴェル、僕はちゃんと伝えたからね」
タルトさんは先生としばらく話すと帰っていった。
何の話をしていたのかな?
ヴェル「あのクソババア…
わざわざ片付けに行く私の身にもなれよ」
先生を見ると、
明らかに不機嫌そうな顔で壁を殴っていた。
一体誰のことだろう。
ヴェル「ああ、イライラする!
あのババア、いつも何かやらかした時に私を呼びつけやがって!
何が『ヴェルちゃん宜しくね♪』だ!
可愛くねえんだよ!」
ドーデン「フェル、散歩に行こうか」
フェル「う、うん、そうだね…」
先生が荒ぶり始めたので、
落ち着くまで外に避難することにした。
ふと、あの手紙を思い出し、取り出す。
ドーデン「結局、まだ返せていないな…」
誰かから貰った(というか落ちてた)
何も書かれていない白紙の便り。
フェル「その手紙、何て書いてあるの?」
ドーデン「それが、白紙なんだよ」
フェル「何も書いてないお手紙?変なの」
ドーデン「そうだね、誰がこの手紙を…」
僕は何となく手紙の封を解いた。
今まで見えなかった物が、
見えるかもしれないと、そう思ったのだ。
ドーデン「・・・魔方陣?」
中に入っていたのは、七色に光る魔方陣。
沢山の色が混じって、キラキラと輝いていた。
急に魔方陣が光だしたと思うと、
それは絵の具へと変わり、僕に降りかかった。
ドーデン「何だったんだ今のは…」
不思議とさっきまで滴り落ちていた
絵の具が跡形もなく消えている。
あれ?それに体にも違和感が…
フェル「ドーデン、今の姿だと私と同じ人間に見えるね!」
人間?僕が?一体いつから…
?「あら、ヴェルちゃんの種族転換魔法、
やっと完成したのね」
ドーデン「誰ですか?」
すると、目の前に成人女性の魔女が現れた。
?「はあい、ドーデンちゃん。
私はヴェルちゃんの師匠で、
兵器の魔女のケインベルトよ」
ドーデン「・・・ああ、遂に成功したんですね。
生物兵器を人間に変える種族転換魔法」
ケイン「私達の目的はもう果たした。
ドーデンはもう二度と、
魔女の世界に足を踏み入れる事はできないわ」
ドーデン「そう…ですね。
せめて最後くらいは、先生にお別れを言いたかったな…」
フェル「ドーデン、悲しいの?」
ドーデン「いいや、もう大丈夫だよ。
ほら、一緒に行こう」
フェル「うん!」
僕は知っていた。七色絵の具の正体を。
けど、彼女には言えなかった。
誰から奪った絵の具なのだろう。
誰を犠牲にして集めた絵の具なのだろう。
他人の絵の具で己を塗り固めて、
僕は今日も人間として生きる。
あの魔女達はもう、僕の視界には写らない。
ヴェル「目が覚めたかい?ドーデン」
ドーデン「先生…」
今度はよく覚えている。
先生が今まで叶えられなかった約束。
人になることを望み、悲劇を繰り返してしまった僕達。
今度こそは…叶えてみせる。
僕は白紙の便りを強く握りしめた。
ヴェル「今の君に、この世界はどう見えているのかな?」
前とは違った鮮やかな世界だ。
今までの線画の世界とは違い、
美しく綺麗で絵画のような完成された世界がそこにあった。
ドーデン「とても綺麗な世界です。
今までの線画とは違って」
ヴェル「そうか、それは良かった。
今回は拒まなかったんだね」
白紙病は、色を拒んだ証。
そして、己を拒んだ証。
今まで僕自身を拒んでいたのだ。
それが、今は違うらしい。
こうして昔の記憶もある。
不思議だ。覚えているなんて。
今までの僕は、覚えてすらいなかったのに…
ドーデン「先生」
ヴェル「何だい?ドーデン」
ドーデン「今度こそ、終わらせましょう」
ヴェル「ああ、今度こそ、君を救ってみせる」
それを聞いた先生は、嬉しそうに微笑んだ。
生物兵器は覚悟する。
今度こそ過ちを犯さない為に。
人を傷つけることしか知らぬこの爪が、
いつしか人を抱きしめる為の腕になれるように。
人ではない哀れな化け物。
彼は、人を傷つけないことを誓った。
◇◇◇
今日も少女が倒れている。
もう慣れてしまった展開は、
同じシーンを読み返すかのように、
何度も繰り返していた。
その姿は間違いなく、
僕が今まで殺してきた少女だ。
フェルエット、それが彼女の名前。
先生の弟子でもあり、最初の被害者。
僕は彼女に「ごめんね」と言った。
許してくれとは言わない。
今まで裏切って、殺してきたのだから。
怒ってくれても構わない。
僕は君にそれだけのことをしてきた。
君の絵の具欲しさに殺してきた。
でも、君にとっては望んだ死に方ではない。
僕を恨んでくれても構わない。
それで僕を殺すと言っても、僕は受け入れよう。
僕は自分の爪を頬に当てる。
その時に引っ掻いてしまったのか、
僕の頬からは、一筋の傷が出来ていた。
傷口からは生き物とは思えない、
青い血が流れ出てくる。
ああ、気持ち悪い血だ。
動物でさえ真っ赤なのに、何で僕だけ青色なんだ。
傷口から流れる青い血液は、
地面に落ちた途端嫌な煙が出た。
僕は静かに青い血液を見つめる。
確か、先生は毒の魔女…
ドーデン「・・・なるほど、酸系の血か」
血でさえも、人を傷つけるのか。
なるべく人の前では、
怪我をしないように気を付けよう。
僕は彼女を見つめる。
しかし、彼女が目覚める様子はない。
ドーデン「君は、僕が怖い?」
返事はなかった。
フェルエットは先生の部屋で眠る。
先生は相変わらず不機嫌そうにしていたが、
放ってはおけない。彼女は僕を嫌っているだろうか。
それとも好きでいてくれているのだろうか。
何度も繰り返し君を殺した僕でも、受け入れてくれる?
僕は今まで彼女を殺してきた。
この爪で、赤い絵の具を、引きずり出して…
そして彼女は目覚める。
・・・やはり僕を覚えていない。
僕には昔の記憶があるけれど、
彼女には僕が今までずっと殺してきた
あの日の記憶は全て白紙に、戻っている。
最初からなかったかのように、
痕跡を消していくかのように。
毒の魔女は人間達からあの日の出来事を
綺麗に記憶から消していた。
ヴェル「彼女もどうかと思うが、君も大概だね。
いつも、同じ行動しかしないじゃないか」
先生は大きなため息を吐いて僕を見つめた。
彼女は訳が分からず首を傾げている。
ドーデン「先生、僕はともかく、
今の彼女に言っても分かりませんよ」
ヴェル「それもそうだったね…」
彼女には、記憶がない。
そして彼女は魔女の弟子となる。
これも今までと同じだ。
でも、違う所が二つある。
一つ目は、僕には今までの記憶があること。
二つ目は…
タルテ「やあヴェル、今回は上手くいきそう?」
今まで先生の会話でしか出てこなかった。
彼、ヒェスタルテの登場だ。
ヴェル「あ、クソタルト…」
タルテ「だから何でスイーツ扱いするのさ」
ドーデン「クソタルトという名前の魔女なんですか?」
ヴェル「そうだ」
タルテ「嘘を教えるんじゃないよ嘘を」
ヴェル「間違えてはいないだろ」
タルテ「いや、僕ヒェスタルテだし、
ヴェルが勝手にそう呼んでるだけでしょ?」
ヴェル「何だ、不満か?
これ程ぴったりで覚えやすい呼び方はないだろ」
タルテ「むしろ不満しかないよ」
ドーデン「タルトさんは、何の魔女なんですか?」
タルテ「・・・まあ、まだましか。
僕は変幻自在の魔女、気分で様々な姿に変わるから、
僕に性別は存在しないんだ。」
ドーデン「どんな姿にも変身出来るんですか?」
タルテ「うん、試しにやってみてあげるよ。
あ、何かリクエストとかある?」
ドーデン「ではまず先生の姿を」
ヴェル「おい、ふざけるな」
タルテ「えーと、そうだな…
ヴェルの姿となると…」
タルトさんは段々と先生の姿に変わっていった。
タルテ「こんな感じかな?」
ドーデン「凄い、先生そっくりですね!」
ヴェル「おい、手を抜くんじゃない。
私はもっときりっとした顔をしてだな…」
フェル「・・・二人は魔女さんなの?」
タルテ「あ、フェルのこと忘れてた…」
フェルエットは長いので、
これからはフェルと呼ぼう。
フェル「ねえドーデン、先生は魔女なの?」
ドーデン「うん、そうだよ。
先生は、僕を作った毒の魔女なんだ」
フェル「毒の魔女…」
魔女と聞いて明らかにフェルの顔が曇った。
人間にとっては、魔女は脅威の存在だからだろう。
でも、先生なら大丈夫だよね。
ヴェル「おい、クソタルト。
私はもっとイケメンだ」
タルテ「注文が多いなヴェルは…
ならこれで良いかい?」
ヴェル「いや、まだダメだな。
まだ私の姿を完全に似せていない」
タルテ「そこまで言うなら、
その完全体のヴェルになってみせるよ!
ほら、どこが違うのかちゃんと言って!」
ヴェル「よし!その意気だタルト!
一体どこまで私に似せられるかな!?」
二人は…もうほっとこう。
ドーデン「フェルは、魔女は嫌い?」
フェル「・・・だって、魔女は人を食べるんでしょ?」
ドーデン「そう?僕は聞いたことないけど。
先生、魔女って人を食べるんですか?」
ヴェル「ふむ、段々近づいてきたな。
後少しで完璧な私になれるだろう」
全然聞いてない…
しかも、タルトさんが変身した先生の顔が、
最早別人レベルだし…
ドーデン「先生、自分の顔を無駄に美形にしてないで、
質問に答えて下さいよ」
ヴェル「おい、無駄って何だ無駄って」
タルテ「ん?何を聞きたいの?」
ドーデン「まずその気味悪い顔戻してもらって良いですか?」
ヴェル「気味悪い言うな」
タルトさんはすぐに元の顔に戻した。
タルテ「で、用件は?」
ドーデン「魔女って人食べるんですか?」
タルテ「中にはいるよ」
そんなさらっと言われても…
あ、フェルが怯え始めた。
タルテ「と言っても、僕は不味そうだから食べないけどね」
ヴェル「私も同意見だな」
ドーデン「あ、二人は大丈夫そ…」
ヴェル「食うよりも、殺した方が楽だろ」
前言撤回しよう。
ドーデン「さらっと物騒なこと言うのやめてくれません?
フェルが怯えるじゃないですか」
ヴェル「事実なのだから仕方無いだろ」
タルテ「確かにそうだね。
僕は人を食べるのは反対だけど、
向こうが襲ってきたなら、
何人殺しても問題ないよね?」
ダメだ、この魔女達思いやりを知らない。
ドーデン「二人とも、人間の前でそんなこと言うとか、
思いやりはないんですか?」
ヴェル「待てドーデン、
どうやらお前は私達を冷たい奴と思っていないか?」
タルテ「え?僕もその一人なの?
そんなつもりじゃなかったんだけど」
ドーデン「いや、タルトさんも充分
思いやりありませんからね?」
タルテ「な、何だって!?」
ヴェル「そんなことより本題に戻ろう」
タルテ「そんなことよりって何」
ドーデン「何か言いたいことでも?」
ヴェル「私が人間嫌いということは、
もう知っているだろう?」
ドーデン「知ってますけど、
それがどうしたんですか?」
ヴェル「人間が嫌いな魔女は、
実際そんなに珍しくはないんだ」
タルテ「今まで人間に歩み寄った同胞達は、
同様に酷い目に遭わされたからね…」
ヴェル「むしろ嫌いじゃない方がおかしいし珍しいな」
ドーデン「そんなに人間って、悪いことしたんですか?」
ヴェル「何なら、今からフェルに
魔女が出たと村中に言いふらしてもらうか?
奴らの本性が分かるだろう」
タルテ「ちょっとヴェル、
僕も巻き込むような危険なこと試さないでよ。
ヴェルと一緒に殺されたくない」
フェル「どういうこと?」
ドーデン「ああ、そういうことですか」
ヴェル「まあ要するに、魔女を売って見殺しにするか、
このまま生かすかの二択ってことだ」
魔女に与えられた選択肢は、
二択しかない。
人とは違った魔女。
容姿だけは似ているその姿は、
どうやら人間には受け入れがたいらしい。
僕は、昔人間に化け物と言われて
急に襲われた記憶を思い出した。
彼ら魔女は、人の姿に近い。
人間は、色を拒んだ僕よりも、
友好的かどうかなんて関係なく、
様々な存在を拒んでいた。
ヴェル「恐らく人間達が私達を殺す理由は、
畏怖(いふ)からだろうな」
タルテ「ああ、言われてみればそうかも。
人間にとって、自分には使えない力とかあったら怖いのかもね」
ドーデン「つまり、殺されるかもしれないという恐怖から、
魔女を殺すということですか?」
ヴェル「まあ、それでも悪質だけどな。
我らは特に理由とかなくてもやるが、
あいつらの行動は悪意で行動する」
タルテ「そこが怖いところだよね。
人間って、同族でも潰し合うんでしょ?
人間じゃなくて悪魔なんじゃない?」
ヴェル「いや、悪魔の方がまだ紳士的だろ」
タルテ「あ、それもそうか」
ヴェル「ところで、クソタルト。
お前は今日雑談をしに来ただけなのか?」
タルテ「あ、そのことなんだけどね」
◇◇◇
タルテ「じゃあヴェル、僕はちゃんと伝えたからね」
タルトさんは先生としばらく話すと帰っていった。
何の話をしていたのかな?
ヴェル「あのクソババア…
わざわざ片付けに行く私の身にもなれよ」
先生を見ると、
明らかに不機嫌そうな顔で壁を殴っていた。
一体誰のことだろう。
ヴェル「ああ、イライラする!
あのババア、いつも何かやらかした時に私を呼びつけやがって!
何が『ヴェルちゃん宜しくね♪』だ!
可愛くねえんだよ!」
ドーデン「フェル、散歩に行こうか」
フェル「う、うん、そうだね…」
先生が荒ぶり始めたので、
落ち着くまで外に避難することにした。
ふと、あの手紙を思い出し、取り出す。
ドーデン「結局、まだ返せていないな…」
誰かから貰った(というか落ちてた)
何も書かれていない白紙の便り。
フェル「その手紙、何て書いてあるの?」
ドーデン「それが、白紙なんだよ」
フェル「何も書いてないお手紙?変なの」
ドーデン「そうだね、誰がこの手紙を…」
僕は何となく手紙の封を解いた。
今まで見えなかった物が、
見えるかもしれないと、そう思ったのだ。
ドーデン「・・・魔方陣?」
中に入っていたのは、七色に光る魔方陣。
沢山の色が混じって、キラキラと輝いていた。
急に魔方陣が光だしたと思うと、
それは絵の具へと変わり、僕に降りかかった。
ドーデン「何だったんだ今のは…」
不思議とさっきまで滴り落ちていた
絵の具が跡形もなく消えている。
あれ?それに体にも違和感が…
フェル「ドーデン、今の姿だと私と同じ人間に見えるね!」
人間?僕が?一体いつから…
?「あら、ヴェルちゃんの種族転換魔法、
やっと完成したのね」
ドーデン「誰ですか?」
すると、目の前に成人女性の魔女が現れた。
?「はあい、ドーデンちゃん。
私はヴェルちゃんの師匠で、
兵器の魔女のケインベルトよ」
ドーデン「・・・ああ、遂に成功したんですね。
生物兵器を人間に変える種族転換魔法」
ケイン「私達の目的はもう果たした。
ドーデンはもう二度と、
魔女の世界に足を踏み入れる事はできないわ」
ドーデン「そう…ですね。
せめて最後くらいは、先生にお別れを言いたかったな…」
フェル「ドーデン、悲しいの?」
ドーデン「いいや、もう大丈夫だよ。
ほら、一緒に行こう」
フェル「うん!」
僕は知っていた。七色絵の具の正体を。
けど、彼女には言えなかった。
誰から奪った絵の具なのだろう。
誰を犠牲にして集めた絵の具なのだろう。
他人の絵の具で己を塗り固めて、
僕は今日も人間として生きる。
あの魔女達はもう、僕の視界には写らない。
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読ませて頂きました。
深い話だなと思いました。
感想ありがとうございます!
Twitterの診断メーカーから生まれた
作品ではありますが、
深いと言って頂けて嬉しいです
後半はまあまあのグロさですが、
楽しんで頂けたのなら光栄です