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縁を結んで切り裂いて
【虚×暦】その涙が枯れるまでは
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※これは縁を結んで切り裂いてのifの世界線です
虚が暦に対してクソデカ感情を抱えています
真斗がお亡くなりになっています
真斗がカミサマになった。
これだけだと何を言っているか分からないだろうが、
本当に真斗はカミサマになったのだ。
「レキ、今日は食べられそうか?」
「……………」
「部屋の前に置いておくからな、お腹が空いたら食べるんだぞ」
真斗がカミサマになった日を境に、
レキは部屋から出てこなくなってしまった。
それは落ち込んでいるからなのか、
それとも涙でぐしゃぐしゃの顔を見られたくないのか。
そのどちらでもなかったとしても、
レキの心に寄り添えないのは心苦しいものだ。
レキとの出会いは、レキの両親葬式だった。
レキの両親が変死(正確にはマガイモノに殺されたのだが)し、
身寄りがいなく、マガイモノが見えてしまうレキは、
親戚からは気味悪がれていた。
「おい、誰があの気味悪い子を引き取るんだよ」
「私は無理よ、息子を育てるのに精一杯だし……」
「俺も無理だ、あんな子供を養えるような金の余裕なんてない」
誰が引き取るかで押し付け合い、もめる親戚達。
それを生気の無い瞳で眺めるレキは、
どうしようもなく儚くて、今にも消えてしまいそうだった。
「あんたら、当の本人の前でする話じゃないだろ」
「だったら立川さんが引き取ってくれるのか?
あんた化け物退治がお仕事なんだろ?
化け物が見えるあの子供にちょうど良いんじゃないか?」
「……………もし俺が断ったらどうするつもりなんだ?」
「そりゃ施設に預けるよ
誰もあんな子供引き取りたくないからな」
「分かったよ、俺が引き取る
あんたらに任せたらろくなことにならなそうだからな」
俺はレキの近くに行くと、出来るだけ優しい声で話しかけた。
「今日から君のお父さんになる立川 虚だ
君の名前は?」
「…………松雪 暦」
「そうか、これから宜しくな、レキ」
「…………宜しく、お願いします」
レキは俺の差し出した手を遠慮がちに掴み、
少しだけ、嬉しそうに笑った。
俺はマガイモノを切る仕事だから、
レキが化け物がいたと聞いても、否定することはなかった。
マガイモノの存在は知っていたし、俺ならマガイモノに対処できる。
レキの為に可愛い備品を揃えたし、家具も、衣装も、
俺が出来ることは何だってした。
温かいご飯に驚き、頭を撫でると戸惑い、
無償の愛を受けると嬉し涙を流す。
「こんなに優しくして貰ったの初めて」
嗚呼、今の彼女はとても幸せそうだ。
まだ自分がこんなに愛してもらって良いのかと遠慮しているが、
それも時期に慣れていくのだろう。
愛して貰うと嬉しい。
温かいご飯は美味しい。
友達といる時間は楽しい。
それで良い、レキには沢山の経験をして欲しい。
人に恋をするのも、レキに良い影響を与えているようだ。
お互い何か通ずるものがあったのだろう。
レキ、今まで報われなかった分、沢山幸せになるんだぞ。
「虚、俺は明日カミサマになる」
その矢先だ、真斗がカミサマになることが決まったのは。
マガイモノが増えすぎてしまった場合、
こうしないとマガイモノが溢れてしまう。
これは、一斉にマガイモノを輪廻に還す儀式なんだ。
「すまない、俺も力が及ばなかった
俺がもっと動けていれば、こんなことには……」
「謝らないでくれ、これは仕方無いことなんだよ
だから、虚には最後のお願いがあるんだ」
真斗は怪しく光る五芒星のしめ縄の真ん中で、
首吊り用のロープを手に取り悲しそうに微笑む。
やっぱりここにレキを連れてこなかったのは正解だった。
来てしまえば、一生残る心の傷になってしまうだろうから。
「何だ?最後のお願いって」
「俺の代わりに、暦を幸せにしてやってくれ」
「真斗くん!」
「レキ!これ以上来たらダメだ!」
「嫌だ!嫌だよ真斗くん!私を置いていかないで!」
「これ以上近付いたらレキも連れていかれるぞ!」
涙でぐしゃぐしゃのレキを愛しそうに見ながら、
真斗は別れの言葉を切り出した。
「さようなら、暦
来世では、俺みたいな男には気を付けるんだよ」
その光景は鮮明に覚えている。
声にならないうめき声。
苦しそうに暴れる体。
レキの悲痛に泣き叫ぶ声。
真斗が苦しんでいるにも関わらず、見ているだけの村人達。
やがて真斗が動かなくなった頃、
マガイモノが一斉に天へと昇っていくのが見えた。
それからだ、レキが壊れてしまったのは。
レキはあれ以来泣けなくなってしまった。
心が壊れてしまったのか。
それとも流す涙が枯れてしまったのか。
学校にも行けないようで、とても心配だ。
せめて、部屋から出れるようになって欲しいところだ。
~数日後~
「レキ、もう体調は大丈夫なのか?」
しばらくすると、レキは部屋から出てくるようになった。
部屋は荒れていたから、後で綺麗にしておかないと。
「うん、心配かけてごめんね、虚さん」
「学校には行けそうか?」
「…………」
「そうか、行けないなら仕方無い
辛いことがあったばかりだからな
俺が代わりに勉強を教えよう
ゆっくり心と向き合っていこうな」
「…………ありがとう、虚さん」
その日から勉強は俺が教えることになり、
身の回りのことは俺がお世話をすることになった。
次第に俺がいないと何も出来なくなっていたが、
まあ、これは特に問題はないだろう。
俺は当たり前のことをしているだけに過ぎないのだから。
「このままだと私、ダメになっちゃいそうだね」
「もう既に俺がいないとダメになってるけどな」
「私、これ以上虚さんに迷惑はかけられないよ」
「レキは何も心配しなくて良いんだよ
俺が好きでやってるだけだからな」
「…………」
レキが逃げた。
自分が何も出来なくなるのがそんなに怖かったのだろうか。
「そんなの心配せずとも、全部俺に任せれば良いのに」
何を困ることがある。
例え何も出来なくなったとしても、
俺がレキのお世話をすれば解決するのだ。
どうして俺の愛をそこまで否定する?
……………まあ良い、どうせレキは戻ってくる。
逃げたところで自分で何も出来ずに帰ってくるのは目に見えている。
わざわざ連れ戻しに行かずとも、
向こうから俺の手の中に戻ってくるのだから。
案の定、レキは泣きながら俺のところに戻ってきた。
「ごめんなさい、虚さん
迷惑なのは分かっているんだけど、
私、虚さんがいないと何も出来なくて……」
泣きながら謝るレキを優しく抱きしめ、
なるべく優しい声で語りかける。
「迷惑なんかじゃないよ
俺はレキのことを大切な家族だと思っているんだ
迷惑だったのなら謝るよ
だから、そんな悲しいことを言わないでくれ」
レキは遠慮がちに俺の背中に手を回し、か細い声で答える。
「………心配させて、ごめんなさい
もう、どこにも行ったりしないから、私を捨てないでね」
「ああ、勿論だよ」
誰が手放すものか。
何のためにレキを俺がいないとダメにしたと思っている。
レキは誰よりも魅力的だから、
こうでもしないと俺の手から離れてしまうだろう?
なあ、レキは俺のことをどう思っているんだ。
例え今は家族程度にしか思っていないのだろうな。
だとしても問題はない、恋心は作れば良いだけだ。
俺に依存させて、ドロドロに甘やかしてやるからな。
「愛しているよ、レキ」
虚が暦に対してクソデカ感情を抱えています
真斗がお亡くなりになっています
真斗がカミサマになった。
これだけだと何を言っているか分からないだろうが、
本当に真斗はカミサマになったのだ。
「レキ、今日は食べられそうか?」
「……………」
「部屋の前に置いておくからな、お腹が空いたら食べるんだぞ」
真斗がカミサマになった日を境に、
レキは部屋から出てこなくなってしまった。
それは落ち込んでいるからなのか、
それとも涙でぐしゃぐしゃの顔を見られたくないのか。
そのどちらでもなかったとしても、
レキの心に寄り添えないのは心苦しいものだ。
レキとの出会いは、レキの両親葬式だった。
レキの両親が変死(正確にはマガイモノに殺されたのだが)し、
身寄りがいなく、マガイモノが見えてしまうレキは、
親戚からは気味悪がれていた。
「おい、誰があの気味悪い子を引き取るんだよ」
「私は無理よ、息子を育てるのに精一杯だし……」
「俺も無理だ、あんな子供を養えるような金の余裕なんてない」
誰が引き取るかで押し付け合い、もめる親戚達。
それを生気の無い瞳で眺めるレキは、
どうしようもなく儚くて、今にも消えてしまいそうだった。
「あんたら、当の本人の前でする話じゃないだろ」
「だったら立川さんが引き取ってくれるのか?
あんた化け物退治がお仕事なんだろ?
化け物が見えるあの子供にちょうど良いんじゃないか?」
「……………もし俺が断ったらどうするつもりなんだ?」
「そりゃ施設に預けるよ
誰もあんな子供引き取りたくないからな」
「分かったよ、俺が引き取る
あんたらに任せたらろくなことにならなそうだからな」
俺はレキの近くに行くと、出来るだけ優しい声で話しかけた。
「今日から君のお父さんになる立川 虚だ
君の名前は?」
「…………松雪 暦」
「そうか、これから宜しくな、レキ」
「…………宜しく、お願いします」
レキは俺の差し出した手を遠慮がちに掴み、
少しだけ、嬉しそうに笑った。
俺はマガイモノを切る仕事だから、
レキが化け物がいたと聞いても、否定することはなかった。
マガイモノの存在は知っていたし、俺ならマガイモノに対処できる。
レキの為に可愛い備品を揃えたし、家具も、衣装も、
俺が出来ることは何だってした。
温かいご飯に驚き、頭を撫でると戸惑い、
無償の愛を受けると嬉し涙を流す。
「こんなに優しくして貰ったの初めて」
嗚呼、今の彼女はとても幸せそうだ。
まだ自分がこんなに愛してもらって良いのかと遠慮しているが、
それも時期に慣れていくのだろう。
愛して貰うと嬉しい。
温かいご飯は美味しい。
友達といる時間は楽しい。
それで良い、レキには沢山の経験をして欲しい。
人に恋をするのも、レキに良い影響を与えているようだ。
お互い何か通ずるものがあったのだろう。
レキ、今まで報われなかった分、沢山幸せになるんだぞ。
「虚、俺は明日カミサマになる」
その矢先だ、真斗がカミサマになることが決まったのは。
マガイモノが増えすぎてしまった場合、
こうしないとマガイモノが溢れてしまう。
これは、一斉にマガイモノを輪廻に還す儀式なんだ。
「すまない、俺も力が及ばなかった
俺がもっと動けていれば、こんなことには……」
「謝らないでくれ、これは仕方無いことなんだよ
だから、虚には最後のお願いがあるんだ」
真斗は怪しく光る五芒星のしめ縄の真ん中で、
首吊り用のロープを手に取り悲しそうに微笑む。
やっぱりここにレキを連れてこなかったのは正解だった。
来てしまえば、一生残る心の傷になってしまうだろうから。
「何だ?最後のお願いって」
「俺の代わりに、暦を幸せにしてやってくれ」
「真斗くん!」
「レキ!これ以上来たらダメだ!」
「嫌だ!嫌だよ真斗くん!私を置いていかないで!」
「これ以上近付いたらレキも連れていかれるぞ!」
涙でぐしゃぐしゃのレキを愛しそうに見ながら、
真斗は別れの言葉を切り出した。
「さようなら、暦
来世では、俺みたいな男には気を付けるんだよ」
その光景は鮮明に覚えている。
声にならないうめき声。
苦しそうに暴れる体。
レキの悲痛に泣き叫ぶ声。
真斗が苦しんでいるにも関わらず、見ているだけの村人達。
やがて真斗が動かなくなった頃、
マガイモノが一斉に天へと昇っていくのが見えた。
それからだ、レキが壊れてしまったのは。
レキはあれ以来泣けなくなってしまった。
心が壊れてしまったのか。
それとも流す涙が枯れてしまったのか。
学校にも行けないようで、とても心配だ。
せめて、部屋から出れるようになって欲しいところだ。
~数日後~
「レキ、もう体調は大丈夫なのか?」
しばらくすると、レキは部屋から出てくるようになった。
部屋は荒れていたから、後で綺麗にしておかないと。
「うん、心配かけてごめんね、虚さん」
「学校には行けそうか?」
「…………」
「そうか、行けないなら仕方無い
辛いことがあったばかりだからな
俺が代わりに勉強を教えよう
ゆっくり心と向き合っていこうな」
「…………ありがとう、虚さん」
その日から勉強は俺が教えることになり、
身の回りのことは俺がお世話をすることになった。
次第に俺がいないと何も出来なくなっていたが、
まあ、これは特に問題はないだろう。
俺は当たり前のことをしているだけに過ぎないのだから。
「このままだと私、ダメになっちゃいそうだね」
「もう既に俺がいないとダメになってるけどな」
「私、これ以上虚さんに迷惑はかけられないよ」
「レキは何も心配しなくて良いんだよ
俺が好きでやってるだけだからな」
「…………」
レキが逃げた。
自分が何も出来なくなるのがそんなに怖かったのだろうか。
「そんなの心配せずとも、全部俺に任せれば良いのに」
何を困ることがある。
例え何も出来なくなったとしても、
俺がレキのお世話をすれば解決するのだ。
どうして俺の愛をそこまで否定する?
……………まあ良い、どうせレキは戻ってくる。
逃げたところで自分で何も出来ずに帰ってくるのは目に見えている。
わざわざ連れ戻しに行かずとも、
向こうから俺の手の中に戻ってくるのだから。
案の定、レキは泣きながら俺のところに戻ってきた。
「ごめんなさい、虚さん
迷惑なのは分かっているんだけど、
私、虚さんがいないと何も出来なくて……」
泣きながら謝るレキを優しく抱きしめ、
なるべく優しい声で語りかける。
「迷惑なんかじゃないよ
俺はレキのことを大切な家族だと思っているんだ
迷惑だったのなら謝るよ
だから、そんな悲しいことを言わないでくれ」
レキは遠慮がちに俺の背中に手を回し、か細い声で答える。
「………心配させて、ごめんなさい
もう、どこにも行ったりしないから、私を捨てないでね」
「ああ、勿論だよ」
誰が手放すものか。
何のためにレキを俺がいないとダメにしたと思っている。
レキは誰よりも魅力的だから、
こうでもしないと俺の手から離れてしまうだろう?
なあ、レキは俺のことをどう思っているんだ。
例え今は家族程度にしか思っていないのだろうな。
だとしても問題はない、恋心は作れば良いだけだ。
俺に依存させて、ドロドロに甘やかしてやるからな。
「愛しているよ、レキ」
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