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時廻りシリーズ
響哉の話
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※この時間軸は響哉達の青年時代です
この時まだ晋也は生きています
俺の名前は霊鳴 響哉。
79代目当主、霊鳴 永真の息子であり、
同じく永真の息子である霊鳴 悠哉の弟だ。
周りの大人は優秀な悠哉兄さんが次の当主だと言ってて、
兄は病弱にも関わらず、霊鳴家の未来を背負っていた。
それでも俺は、兄さんが跡を継ぐのを反対してるわけじゃなくて、
そんな立派な兄さんを、誇らしく思っていたんだ。
「ねえ兄さん、見た目っていつ変化するの?」
「僕達が成人した時に変わるみたいだよ
血筋に関係なく、霊鳴家の跡継ぎに相応しい者は、
髪や目の色が変わるんだ
その基準は童子様が決めるらしいんだけど、
昔から僕達一族はこうして血を繋いできたんだよ」
幽音家と霊鳴家の人間は、童子様が跡継ぎに相応しいと
判断した者には、見た目の変化が訪れる。
俺達の先祖様は代々そんな方法で当主を決めてきたんだ。
兄さんは俺の頭を撫でながら、優しく微笑む。
童子様はきっと、こういう優しい人を選ぶんだと思った。
俺はきっと選ばれないから、これからは兄さんを支えていこう。
でも今は特にやることはないし暇だから、
隣の晋也の所に遊びに行こうと思う。
俺は急いで父さんのいる部屋へと向かい、障子を開けた。
「あら、どうしたの響哉」
「父さん、今から晋也の所行ってくるね」
「おま、せめてもう少し待ってから開けてくれ!
せっかくの良い雰囲気が……」
何か父さんがゴニョゴニョ言っているが、
どうやら何かを邪魔してしまったらしい。
見たところ母さんを抱きしめようとしたようだ。
俺を恨めしそうに見つめる父さんとは対照的に、
母さんはニコニコと笑っていた。
「今からお出かけ?
それなら夕飯までには帰ってきなさい
あんまり晋也くんを困らせちゃダメよ?」
「分かってるよ」
「響哉、次は絶対待ってから開けろよ!
これは父さんとの大事な約束だからな!」
「そう言われても、俺がやらなくても鳴が妨害すると思うよ」
「クソゥ! 鳴め! あいつ、
あやさんとのイチャイチャを、
いつも狙ったように妨害してきて…」
「永真さん! 鳴くんを悪く言わないで下さい!」
「……はい、すみませんでした」
父さんは母さんに叱られると、しょんぼりして大人しくなる。
父さん、母さんの尻に敷かれてるな……
まあそれはいつものことなので、俺は幽音家へと向かった。
俺は障子を突き破るように晋也の部屋へと入った。
「晋也! 遊びに行こうぜ!」
「響哉、お前はもう少しまともに入れんのか?」
「こっちの方がカッコいいかなと思って」
「響哉、これから私の言うことを良く聞いておけ
非常時でも何でもない時に障子を突き破る輩はカッコいい奴ではない
正しくは器物破損をする迷惑な蛮族だ」
「蛮族呼ばわりは流石に酷くねえ?」
「黙れ蛮族響哉、文句あるなら修理代払え」
「そんなことより遊ぼうぜ!」
「お前にはこの無惨に破壊された障子の破片が見えんのか?
そして決してそんなことではないが?」
「あ、そういえば、晋也の家の能面部屋で、
欠けてる能面あったよな?」
「たくっ、後で怒られても助けんからな…
ああ、確か野干の面だったな」
「その能面の試練、行ってみねぇ?」
「……試練は当主のみ通行が許されるはずだが?」
「だって晋也一人っ子だし、後の当主だろ?
なら今行っても問題ねえだろ!」
「むしろ問題しかないのだが?
そんなことをすれば、私も父上に怒られるじゃないか」
「あー……晋也の所の父さん過保護だもんなーー」
「ああ、わざわざ危険な場所に行くメリットもないしな」
「ということで行こうぜ!」
「人の話聞いてたか?私は行かんと言って……
おい! 引っ張るんじゃない!」
俺は半ば強引に晋也を野干の試練へと連れ出した。
野干の試練にいたのは、赤く穢れきった妖狐で、
これは関わってはいけないと一目で分かった。
赤い妖狐はうわ言のように呟いている。
「ユ……マ……タイ……ア……ユウ……」
でも俺達は二人で、守ってくれる式神もいない。
どうすれば……
「探しましたよ、晋也様」
俺達を助けにきたのは晋也の父さんの式神で、
俺達は無事に野干の試練から出ることが出来た。
やっぱり俺達は父さんに怒られて……
(俺だけ説教長かった気がする)
音さんには二度と試練の空間に立ち入らないよう注意をされた。
あの赤い妖狐は結局何だったのか……
それが分かるのは、まだ遥か未来の話である。
この時まだ晋也は生きています
俺の名前は霊鳴 響哉。
79代目当主、霊鳴 永真の息子であり、
同じく永真の息子である霊鳴 悠哉の弟だ。
周りの大人は優秀な悠哉兄さんが次の当主だと言ってて、
兄は病弱にも関わらず、霊鳴家の未来を背負っていた。
それでも俺は、兄さんが跡を継ぐのを反対してるわけじゃなくて、
そんな立派な兄さんを、誇らしく思っていたんだ。
「ねえ兄さん、見た目っていつ変化するの?」
「僕達が成人した時に変わるみたいだよ
血筋に関係なく、霊鳴家の跡継ぎに相応しい者は、
髪や目の色が変わるんだ
その基準は童子様が決めるらしいんだけど、
昔から僕達一族はこうして血を繋いできたんだよ」
幽音家と霊鳴家の人間は、童子様が跡継ぎに相応しいと
判断した者には、見た目の変化が訪れる。
俺達の先祖様は代々そんな方法で当主を決めてきたんだ。
兄さんは俺の頭を撫でながら、優しく微笑む。
童子様はきっと、こういう優しい人を選ぶんだと思った。
俺はきっと選ばれないから、これからは兄さんを支えていこう。
でも今は特にやることはないし暇だから、
隣の晋也の所に遊びに行こうと思う。
俺は急いで父さんのいる部屋へと向かい、障子を開けた。
「あら、どうしたの響哉」
「父さん、今から晋也の所行ってくるね」
「おま、せめてもう少し待ってから開けてくれ!
せっかくの良い雰囲気が……」
何か父さんがゴニョゴニョ言っているが、
どうやら何かを邪魔してしまったらしい。
見たところ母さんを抱きしめようとしたようだ。
俺を恨めしそうに見つめる父さんとは対照的に、
母さんはニコニコと笑っていた。
「今からお出かけ?
それなら夕飯までには帰ってきなさい
あんまり晋也くんを困らせちゃダメよ?」
「分かってるよ」
「響哉、次は絶対待ってから開けろよ!
これは父さんとの大事な約束だからな!」
「そう言われても、俺がやらなくても鳴が妨害すると思うよ」
「クソゥ! 鳴め! あいつ、
あやさんとのイチャイチャを、
いつも狙ったように妨害してきて…」
「永真さん! 鳴くんを悪く言わないで下さい!」
「……はい、すみませんでした」
父さんは母さんに叱られると、しょんぼりして大人しくなる。
父さん、母さんの尻に敷かれてるな……
まあそれはいつものことなので、俺は幽音家へと向かった。
俺は障子を突き破るように晋也の部屋へと入った。
「晋也! 遊びに行こうぜ!」
「響哉、お前はもう少しまともに入れんのか?」
「こっちの方がカッコいいかなと思って」
「響哉、これから私の言うことを良く聞いておけ
非常時でも何でもない時に障子を突き破る輩はカッコいい奴ではない
正しくは器物破損をする迷惑な蛮族だ」
「蛮族呼ばわりは流石に酷くねえ?」
「黙れ蛮族響哉、文句あるなら修理代払え」
「そんなことより遊ぼうぜ!」
「お前にはこの無惨に破壊された障子の破片が見えんのか?
そして決してそんなことではないが?」
「あ、そういえば、晋也の家の能面部屋で、
欠けてる能面あったよな?」
「たくっ、後で怒られても助けんからな…
ああ、確か野干の面だったな」
「その能面の試練、行ってみねぇ?」
「……試練は当主のみ通行が許されるはずだが?」
「だって晋也一人っ子だし、後の当主だろ?
なら今行っても問題ねえだろ!」
「むしろ問題しかないのだが?
そんなことをすれば、私も父上に怒られるじゃないか」
「あー……晋也の所の父さん過保護だもんなーー」
「ああ、わざわざ危険な場所に行くメリットもないしな」
「ということで行こうぜ!」
「人の話聞いてたか?私は行かんと言って……
おい! 引っ張るんじゃない!」
俺は半ば強引に晋也を野干の試練へと連れ出した。
野干の試練にいたのは、赤く穢れきった妖狐で、
これは関わってはいけないと一目で分かった。
赤い妖狐はうわ言のように呟いている。
「ユ……マ……タイ……ア……ユウ……」
でも俺達は二人で、守ってくれる式神もいない。
どうすれば……
「探しましたよ、晋也様」
俺達を助けにきたのは晋也の父さんの式神で、
俺達は無事に野干の試練から出ることが出来た。
やっぱり俺達は父さんに怒られて……
(俺だけ説教長かった気がする)
音さんには二度と試練の空間に立ち入らないよう注意をされた。
あの赤い妖狐は結局何だったのか……
それが分かるのは、まだ遥か未来の話である。
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