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▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath
3-35 アップアップTO〔P3〕
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side九鬼
。。。干上がった湖あと。
ザ、ザ、ザ…
「………、…… 」
こんなもの、水捌けが良いとかのレベルじゃないぞ。
陽光が望めないのは勿論のこと、吹き抜ける風すら感じないこの地底において、あれだけ水浸しだった地面がこの短時間ですっかり乾いており、元々水底だったここに至っては湿り気の余韻すら感じさせない。
ザ、ザ、ザ、ザ…
「ハァーーーっやっぱサラサラが良いよね~服も地面も。ここはちょっと足埋まって歩きにくいけど~」
着替え終えた新美は今、口笛でも吹き出しそうな機嫌だが、ついさっきあの食ってかかってきた男を連れ出そうとゴネまくった。
" おーい、またお外行くみたいだからお手本頼んますよ~。あれだけ言ったんだから皆んなが助かるためにさ~っておい、何ずっと無視してるわけ? "
「はぁ… 」
こう言う起伏が激しいと言うか、コロコロと変わるヤツと行動するのは久方振りとは言え、ため息がついて出るのはいかん。
いや、手が出ないだけ成長したと思うべきか。
そしてあの爆心地に向かって慎重に歩みを進め、視界いっぱいに鎮座する目標までの距離は数メーター。
ザ、ザ、ズサ…
「……、……、爆発の痕跡はどこにもナシ…か。さて」
見上げる正体不明の存在は白い大岩…らしきモノ。
目測で高さ10m(幅15m)はある。
「岩?…珊瑚礁?あはは…、てかもう戻らない?」
そう。
表面の組成具合。
湖に沈んでいた事実。
これを何だと問えば、大概の者が珊瑚の付着した岩とでも答えるだろう。
なのに新美がらしからぬ緊張を滲ませるように
『ドクン、ドクン、ドクン、ドクン』
俺の胸も、さっきから苦しくなるほどに跳ね続ける。
これは、ここまでの閉塞感や不安感とは異。
この重圧は、ここまで煩い鼓動は、数年前の小型戦術核実験を間近で見て以来だ。
「ッお‼︎ 」「うわぁっ‼︎ 」
後ろだとっ
虚を突かれた俺達が、小動物のように同時に振り返る。
「ん~~、メレンゲぽいけど黒いと美味しそうに見えない……つか今の今まで無かったのにホラーじゃん」
ボポポ、ボポっボポポポポっ
新美の言葉通り、背後にはいつの間か、奇妙な音を立てながらモコモコと蠢く何かが在った。
あの規格外の爬虫類が居たのだから、当然他も…と予想はしていた。
がしかし、生まれてすぐに膨張し続けるそれは、あっという間に予想を超えるサイズへと成長する。
「「………っ」」
10m…近くあるか?
『ドクン、ドクン、ドクン、ドクン』
「なぁ、…やれると、思うか?」
大将のさっきのアレに、この重圧…
コイツか?本命は。
『ン、ンボォ……ンボロロロロロ~~… 』
俺の問い掛けに先に答えたのは怪物。
気味の悪さ満点。
「んォォー~っ鳥肌ヤんバっ、てか頭沸いてる?」
続いて答える新美が、抑えられない慄きに身をよじった時
「「ッ~⁉︎ 」」
突然
『『ドジャードジャッードジャンッ‼︎ 』』ー
黒いそれはネコ科の猛獣の如く弾かれるように走り出す。
ーー『『ゴッガァンッ‼︎‼︎ ギャリギャリリィィ‼︎ 』』
広大な洞内に轟くのは、けたたましくも耳障りな衝突音と擦過音。
「「「キャーーーーーーー」」」「「「「ウワァーーーーーーーー」」」」
巨獣に体当たりをブチかまされた旅客機は、ガリガリと音を立てて揺れ動く。
ダダッダッダッダッ…
「ハァハァッハァハァハァっ」
このままでは機体が破損する…と一も二もなくヤツを追った俺は
ダッザッザザァー…
「ハァッハァッ、フゥーー… 」
正直兵士ですら殺せなかったこの武器で、こんなバケモンを倒せるとは到底思えんが
『ドパンドパンドパンドパンッ』
射程に入ってすぐと巨獣の頭部を狙い撃つ。
ビシビシビシッ
『ボロァア… 』
すると銃弾を受けた巨獣は動きを止め、取り付いた旅客機を押し返すよう離れる。
「ッゥ~」「マズぅっ」
俺と少し後ろにまで来ていた新美は、互いに背を向け脱兎の如く左右にバラける。
ーー『『ドジャードジャードジャッ』』
「って俺の方かよォォぉアアーーッ」
「ファイトぉぉー~」
猛然と迫り来る生きた大型ダンプ。
死ぬ死ぬ絶対死ぬーーーーっ
ダザダッザザッダンッーー~
「うぉぉアアおォォーーー」ー~
それを横切るよう死に物狂いでジャーーーーンプ。
ー~『ゴロッーゴロゴロゴロー~』ズサッ
地面を何度か転がってすぐ中腰になると、通り抜けた巨体の後には砂塵が荒々しく舞う。
な、なんとか避けれたっ
とホッとするのも束の間。
ーー『『ザンッードジャードジャードジャッ』』
その奥で素早く向きを変えた巨獣は、再び俺目掛け即突進。
クッソがぁっ
ザッダッダッザッザッ
「ッフハァァーーーッ」
『ドパンッドパパンッ』
機から離れるよう必死で応戦するも、追随する巨獣は顔への銃撃すら意に介さない。
ー『『ドジャー』』ー
「っ~~… 」
『ドパンッ』
ーー『『ドジャー』』ー
ダメだ
ーーー『『ドジャー』』ー
とても逃げ切れんっ
禍々しい黒色の悪魔を背に浮かぶのは、走馬灯でなくペットボトルみたく内臓破裂る死。
ーーーー『『ドジャー』』ー
終
わ
っ…ーーー
そう観念した瞬間、眠る様に全身の力が抜け落ちた。
ーーーーー『『ズザザァァァーー』』ー
「ーー~ッ… 」
ー『『ブォワァァァアーーバチバチバチッーー~』』
一拍遅れ全身を吹き付ける砂塵。
な、んだ?
「っハァハァ…~」
何で…
まだ生きている?
「~ハァハァ………ぁ… 」
『ンボロロロ~~~~~… 』
そこで恐る恐る顔を上げると、間近で見合うヤツの目は瞳どころか色自体が皆無で、気味悪く唸るその口は嘴の様に尖っていた。
全身を走る未体験の恐怖。
しかし身体に染み付いた反射はそれを跳ね除けて、射撃の体勢を取らせた。
が、俺はその銃口を自分の顎下へと持っていく。
嬲り喰われるくらいなら、幕は自分で…
そうして終焉に指先を掛けたこの瀬戸際は…
「っハァハァ、~ハァハァ… 」
5秒…
10秒…
と巨獣と対峙したまま経過。
極限の緊張は呼吸や視界に変調をもたらす。
「ハァハぁ…~ハぁ、は、ハぁ… 」
何故だ。
何故襲って来ない?
ポタ…
こっちは眩暈すら起こしそうだってのに、テメェはご馳走前に涎かよ…
しかし、この悪魔の気紛れによる数十秒が、少しだけ俺の精神を落ち着かせる。
ポタ、ポタ…
そして巨獣と相対し改めて、その口元に目を凝らしてみると、その液体は嘴の上、額や眼の周りから垂れ落ちて来ていた。
これは…
銃弾による出血。
フっ、ハハ…
「スゥーーーーーーー~っ」
ならその無機質な
「新美ィィーーーーーーーーーっ‼︎ コイツは、コイツには銃が効いてるぞォっ」
『ドパパンッドパパンッ』
鬱陶しい目くらい土産にくれよ。
「殺せるっ、殺せるから諦めるなァァーーーーーーーーーッ」
『ドパパンッドパパパンッガチッガチッ』
『『ンボロオァァーーーーッ』』
左目を撃たれ怒ったヤツは、真っ黒い巨体を反らす様に立てる。
まぁ、これでも死なないバケモンだがな…
頑張れよ。
「ーーー~ッツ~~っ~」
俺は今度こそはと目を閉じ歯を食いしばる。
『『ザンッードジャッー』』
『『ドジャードジャッードジャッ』』
がしかし、死の瞬間は訪れず、目の前の気配は離れて行く。
ズサ…
崩れる両膝。
肩から零れ落ちそうになる腕。
「………、……っはーーっ~ハァっはァ、ハァハァっ」
巨獣の背中を茫然と捉える俺の顔面からは、強烈な重力に引かれるみたくボタボタと汗が流れ落ちる。
~ブルっ、ブルブルブルっ~
だがそれとは反対に、絶対的な死からの解放は、全身の血流を、生命の脈動を震えるほどに感じさせる。
助……かた…
とりあえ…
『『ボグロォァァアアーーーーーーーー‼︎ 』』
っ‼︎
さっきまでとは異なる咆哮。
いや、狂ったような怒号を轟かせる巨獣はあの岩へ一直線。
どうした事だ?
アレはやはり危険なモノなのか?
いやそれよりもどうする?
「……っ… 」
幾度となく死線を共にした愛銃を握り直すも、その余りの頼り無さに力が湧いて来ない。
近接で抉るか?
いや20cm程度のこの刃では、あの巨体の内臓まではとても…
なら今の俺に出来るのは退避…だが、あれだけの怪物相手では、旅客機の中と言えど安全ではない。
しかももしあの岩が爆発物や劇物の類、まして俺達を消し去る何かだとしたら、この空間自体が危うい。
となると奥の洞穴に移るべきか?
だがあの兵士の仲間とはち合ったら…
あー~ックソっ
「おいあの洞穴の先に… 」
ザ…ザザ…
「避、難… 」
ズザっズザザッドザッ
探索した新美の方へ向こうとした矢先、100メーターはある岩壁の中程に見えたのは、溢れ出るように駆け下りて来る新たな黒い群れ。
「イエっサバイバーーーーっ。死を覚悟の足掻き、カッコ良かったよ九鬼ちゃん。で?何なに?」
「………………… 」
大将、悪い。
この上あんなモンまで出て来られたら避難もクソもない。
流石にもう完璧お手上げだ。
シュ、カシャ、ガチッ
全くここは次から次へと、最後の最後まで本当にクソのクソ。
そんな諦観に包まれつつも最低限落ち着いた俺は、毎日の歯磨きくらいに淀みなく弾倉を入れ替える。
さぁ、来いよ。
ドザッドザッドザァドザドザッドザッドザッ
「…もう一度最後まで、最期までらしく足掻いてやるぜ」
「あれは、…まだ、か」
まだ?
コイツ、何を言ってる。
ドザドザッドザドザドザッ
ドザッドザッドザッドザッドザッ
「っヒョーーーーーー楽勝だろぉこりゃーってオイもしかアレなんかぁ?ブハハッ無っ茶苦茶だなぁっ」
ドザッドザッドザッドザッドザッ
「……ー~、オイっ本気か?本気でアレと戦うってのかーーっ?」
ドザッドザッドザッドザッドザッ
「八参っ、アイツの気を引いて引き剥がすぞ。芝木さんは様子見しつつタイミングを見て援護をっ」
。。。干上がった湖あと。
ザ、ザ、ザ…
「………、…… 」
こんなもの、水捌けが良いとかのレベルじゃないぞ。
陽光が望めないのは勿論のこと、吹き抜ける風すら感じないこの地底において、あれだけ水浸しだった地面がこの短時間ですっかり乾いており、元々水底だったここに至っては湿り気の余韻すら感じさせない。
ザ、ザ、ザ、ザ…
「ハァーーーっやっぱサラサラが良いよね~服も地面も。ここはちょっと足埋まって歩きにくいけど~」
着替え終えた新美は今、口笛でも吹き出しそうな機嫌だが、ついさっきあの食ってかかってきた男を連れ出そうとゴネまくった。
" おーい、またお外行くみたいだからお手本頼んますよ~。あれだけ言ったんだから皆んなが助かるためにさ~っておい、何ずっと無視してるわけ? "
「はぁ… 」
こう言う起伏が激しいと言うか、コロコロと変わるヤツと行動するのは久方振りとは言え、ため息がついて出るのはいかん。
いや、手が出ないだけ成長したと思うべきか。
そしてあの爆心地に向かって慎重に歩みを進め、視界いっぱいに鎮座する目標までの距離は数メーター。
ザ、ザ、ズサ…
「……、……、爆発の痕跡はどこにもナシ…か。さて」
見上げる正体不明の存在は白い大岩…らしきモノ。
目測で高さ10m(幅15m)はある。
「岩?…珊瑚礁?あはは…、てかもう戻らない?」
そう。
表面の組成具合。
湖に沈んでいた事実。
これを何だと問えば、大概の者が珊瑚の付着した岩とでも答えるだろう。
なのに新美がらしからぬ緊張を滲ませるように
『ドクン、ドクン、ドクン、ドクン』
俺の胸も、さっきから苦しくなるほどに跳ね続ける。
これは、ここまでの閉塞感や不安感とは異。
この重圧は、ここまで煩い鼓動は、数年前の小型戦術核実験を間近で見て以来だ。
「ッお‼︎ 」「うわぁっ‼︎ 」
後ろだとっ
虚を突かれた俺達が、小動物のように同時に振り返る。
「ん~~、メレンゲぽいけど黒いと美味しそうに見えない……つか今の今まで無かったのにホラーじゃん」
ボポポ、ボポっボポポポポっ
新美の言葉通り、背後にはいつの間か、奇妙な音を立てながらモコモコと蠢く何かが在った。
あの規格外の爬虫類が居たのだから、当然他も…と予想はしていた。
がしかし、生まれてすぐに膨張し続けるそれは、あっという間に予想を超えるサイズへと成長する。
「「………っ」」
10m…近くあるか?
『ドクン、ドクン、ドクン、ドクン』
「なぁ、…やれると、思うか?」
大将のさっきのアレに、この重圧…
コイツか?本命は。
『ン、ンボォ……ンボロロロロロ~~… 』
俺の問い掛けに先に答えたのは怪物。
気味の悪さ満点。
「んォォー~っ鳥肌ヤんバっ、てか頭沸いてる?」
続いて答える新美が、抑えられない慄きに身をよじった時
「「ッ~⁉︎ 」」
突然
『『ドジャードジャッードジャンッ‼︎ 』』ー
黒いそれはネコ科の猛獣の如く弾かれるように走り出す。
ーー『『ゴッガァンッ‼︎‼︎ ギャリギャリリィィ‼︎ 』』
広大な洞内に轟くのは、けたたましくも耳障りな衝突音と擦過音。
「「「キャーーーーーーー」」」「「「「ウワァーーーーーーーー」」」」
巨獣に体当たりをブチかまされた旅客機は、ガリガリと音を立てて揺れ動く。
ダダッダッダッダッ…
「ハァハァッハァハァハァっ」
このままでは機体が破損する…と一も二もなくヤツを追った俺は
ダッザッザザァー…
「ハァッハァッ、フゥーー… 」
正直兵士ですら殺せなかったこの武器で、こんなバケモンを倒せるとは到底思えんが
『ドパンドパンドパンドパンッ』
射程に入ってすぐと巨獣の頭部を狙い撃つ。
ビシビシビシッ
『ボロァア… 』
すると銃弾を受けた巨獣は動きを止め、取り付いた旅客機を押し返すよう離れる。
「ッゥ~」「マズぅっ」
俺と少し後ろにまで来ていた新美は、互いに背を向け脱兎の如く左右にバラける。
ーー『『ドジャードジャードジャッ』』
「って俺の方かよォォぉアアーーッ」
「ファイトぉぉー~」
猛然と迫り来る生きた大型ダンプ。
死ぬ死ぬ絶対死ぬーーーーっ
ダザダッザザッダンッーー~
「うぉぉアアおォォーーー」ー~
それを横切るよう死に物狂いでジャーーーーンプ。
ー~『ゴロッーゴロゴロゴロー~』ズサッ
地面を何度か転がってすぐ中腰になると、通り抜けた巨体の後には砂塵が荒々しく舞う。
な、なんとか避けれたっ
とホッとするのも束の間。
ーー『『ザンッードジャードジャードジャッ』』
その奥で素早く向きを変えた巨獣は、再び俺目掛け即突進。
クッソがぁっ
ザッダッダッザッザッ
「ッフハァァーーーッ」
『ドパンッドパパンッ』
機から離れるよう必死で応戦するも、追随する巨獣は顔への銃撃すら意に介さない。
ー『『ドジャー』』ー
「っ~~… 」
『ドパンッ』
ーー『『ドジャー』』ー
ダメだ
ーーー『『ドジャー』』ー
とても逃げ切れんっ
禍々しい黒色の悪魔を背に浮かぶのは、走馬灯でなくペットボトルみたく内臓破裂る死。
ーーーー『『ドジャー』』ー
終
わ
っ…ーーー
そう観念した瞬間、眠る様に全身の力が抜け落ちた。
ーーーーー『『ズザザァァァーー』』ー
「ーー~ッ… 」
ー『『ブォワァァァアーーバチバチバチッーー~』』
一拍遅れ全身を吹き付ける砂塵。
な、んだ?
「っハァハァ…~」
何で…
まだ生きている?
「~ハァハァ………ぁ… 」
『ンボロロロ~~~~~… 』
そこで恐る恐る顔を上げると、間近で見合うヤツの目は瞳どころか色自体が皆無で、気味悪く唸るその口は嘴の様に尖っていた。
全身を走る未体験の恐怖。
しかし身体に染み付いた反射はそれを跳ね除けて、射撃の体勢を取らせた。
が、俺はその銃口を自分の顎下へと持っていく。
嬲り喰われるくらいなら、幕は自分で…
そうして終焉に指先を掛けたこの瀬戸際は…
「っハァハァ、~ハァハァ… 」
5秒…
10秒…
と巨獣と対峙したまま経過。
極限の緊張は呼吸や視界に変調をもたらす。
「ハァハぁ…~ハぁ、は、ハぁ… 」
何故だ。
何故襲って来ない?
ポタ…
こっちは眩暈すら起こしそうだってのに、テメェはご馳走前に涎かよ…
しかし、この悪魔の気紛れによる数十秒が、少しだけ俺の精神を落ち着かせる。
ポタ、ポタ…
そして巨獣と相対し改めて、その口元に目を凝らしてみると、その液体は嘴の上、額や眼の周りから垂れ落ちて来ていた。
これは…
銃弾による出血。
フっ、ハハ…
「スゥーーーーーーー~っ」
ならその無機質な
「新美ィィーーーーーーーーーっ‼︎ コイツは、コイツには銃が効いてるぞォっ」
『ドパパンッドパパンッ』
鬱陶しい目くらい土産にくれよ。
「殺せるっ、殺せるから諦めるなァァーーーーーーーーーッ」
『ドパパンッドパパパンッガチッガチッ』
『『ンボロオァァーーーーッ』』
左目を撃たれ怒ったヤツは、真っ黒い巨体を反らす様に立てる。
まぁ、これでも死なないバケモンだがな…
頑張れよ。
「ーーー~ッツ~~っ~」
俺は今度こそはと目を閉じ歯を食いしばる。
『『ザンッードジャッー』』
『『ドジャードジャッードジャッ』』
がしかし、死の瞬間は訪れず、目の前の気配は離れて行く。
ズサ…
崩れる両膝。
肩から零れ落ちそうになる腕。
「………、……っはーーっ~ハァっはァ、ハァハァっ」
巨獣の背中を茫然と捉える俺の顔面からは、強烈な重力に引かれるみたくボタボタと汗が流れ落ちる。
~ブルっ、ブルブルブルっ~
だがそれとは反対に、絶対的な死からの解放は、全身の血流を、生命の脈動を震えるほどに感じさせる。
助……かた…
とりあえ…
『『ボグロォァァアアーーーーーーーー‼︎ 』』
っ‼︎
さっきまでとは異なる咆哮。
いや、狂ったような怒号を轟かせる巨獣はあの岩へ一直線。
どうした事だ?
アレはやはり危険なモノなのか?
いやそれよりもどうする?
「……っ… 」
幾度となく死線を共にした愛銃を握り直すも、その余りの頼り無さに力が湧いて来ない。
近接で抉るか?
いや20cm程度のこの刃では、あの巨体の内臓まではとても…
なら今の俺に出来るのは退避…だが、あれだけの怪物相手では、旅客機の中と言えど安全ではない。
しかももしあの岩が爆発物や劇物の類、まして俺達を消し去る何かだとしたら、この空間自体が危うい。
となると奥の洞穴に移るべきか?
だがあの兵士の仲間とはち合ったら…
あー~ックソっ
「おいあの洞穴の先に… 」
ザ…ザザ…
「避、難… 」
ズザっズザザッドザッ
探索した新美の方へ向こうとした矢先、100メーターはある岩壁の中程に見えたのは、溢れ出るように駆け下りて来る新たな黒い群れ。
「イエっサバイバーーーーっ。死を覚悟の足掻き、カッコ良かったよ九鬼ちゃん。で?何なに?」
「………………… 」
大将、悪い。
この上あんなモンまで出て来られたら避難もクソもない。
流石にもう完璧お手上げだ。
シュ、カシャ、ガチッ
全くここは次から次へと、最後の最後まで本当にクソのクソ。
そんな諦観に包まれつつも最低限落ち着いた俺は、毎日の歯磨きくらいに淀みなく弾倉を入れ替える。
さぁ、来いよ。
ドザッドザッドザァドザドザッドザッドザッ
「…もう一度最後まで、最期までらしく足掻いてやるぜ」
「あれは、…まだ、か」
まだ?
コイツ、何を言ってる。
ドザドザッドザドザドザッ
ドザッドザッドザッドザッドザッ
「っヒョーーーーーー楽勝だろぉこりゃーってオイもしかアレなんかぁ?ブハハッ無っ茶苦茶だなぁっ」
ドザッドザッドザッドザッドザッ
「……ー~、オイっ本気か?本気でアレと戦うってのかーーっ?」
ドザッドザッドザッドザッドザッ
「八参っ、アイツの気を引いて引き剥がすぞ。芝木さんは様子見しつつタイミングを見て援護をっ」
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