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▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath
3-31 漸進然令
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side 真黎
「ウグ……Yu~ckゥッ、……っ…~っ」
思わずカメラを伏せコクリコクリと肩を揺らしす薗女さんは、嘔吐く口元を押さえつつ、力が抜けるように腰を落とした。
「どうだ?感想は」
「…スゥーーっフゥーーーーーー~~」
言う事を聞かなかった子供に対する時の、少し叱る様なニュアンスを含めた九鬼さんの一言は、頭をもたげた薗女さんの深呼吸で流される。
でもそれは反抗とか無視ではなく、とても返せる状況に無い心情のまざまざしい顕れ。
「ーどうぞ」
そんな彼女へそっとお水を差し出すと、コップを2秒ほど見つめた薗女さんは強張った動きでそれを取る。
「っ…~~はは、……ありがと」
そして噎せるのを堪えるよう一気に喉へ流し込むと、弱々しく礼を述べながら何かから身を守るように肩を窄めた。
「個人の判別どころか原型お構いなしか。これは見せしめじゃなくただの処理だなぁ……ったく」
ヒュッと息を飲む音と、座席の軋む音が重なる。
風景でも眺めるかのような気楽な雰囲気から放たれた言葉は、雰囲気を一変させた薗女さんの様子と相まって、ヒビ割れるような緊張感と息詰まる恐怖を辺りにもたらした。
「けど、まだ増えそうだ」
「九鬼」
ただそんな空気はお構い無しと何かを期待するような九鬼さんに対し、目を伏せたままの堤さんが叱咤…
「分かってるよ大将。俺もそう願ってるしな……ハァー~~ぁ」
ではない。
"全く人使いの荒い上司だ " と、よく見る表情をした九鬼さんからも分かる様に、お二人のやり取りには別の意図が垣間見えた。
それを見た私はお2人の特殊性を感じつつ反射的に立ち上がり、薄汚れた近くの窓から暗い外を見る。
ゴシゴシ
「…………、……… 」
ゴシゴシゴシ
「……竹仲さんだっ」
同じ様に窓に張り付いた咲。
副操縦士さん、外に出てたんだ…
襲撃者らに囲まれ小さくなっている人達を見て、最初に来たのは望む人ではなかったと言う落胆で、次に来たのはそんな身勝手な自身への更なる落胆。
それらにより口の中まで苦くなった私は、跪いている女性達から目を背け、ただただ静かに目を閉じる。
「………………… 」
でもこんな自戒じみた感情に意味なんて無い。
誰が生きていようとも、私には救えないから。
『コンコンコンコンっ』
そんな折、さっきまでとは違う軽快な音が、私の視線をまた窓の外へと誘った。
「フッ、どうやらツキには見放されてなかったようだ」
そこには更に集まって来た襲撃者達に、引き摺られ連れて来られる5人の姿が。
ッ⁉︎ あれは緋芦花ちゃんのお母様。
緋芦花ちゃんは…
「あの、私も行…私にも何かお手伝いさせてもらえませんか?」
切迫感から喉を突いて出る言葉。
「ん~~~それよかよ、アンタも視えたんだよな?何か奴等を殺すヒントとか、思い付かないか?」
だけど対する九鬼さんは間の抜けたような空気。
「それは、私にも皆目… 」
「だよなぁ」
「それより早く救けないとまた… 」
「何かしらの心得があるのも分かるが、1人であん中行って帰って来れるか?」
「それは… 」
二人ですら同時には厳しいのに、二十はいる襲撃者相手ではすぐに囲まれる。
でも…
" なんとしても無事生き残りそして帰る。その一点に集中して足掻きましょう。同じ状況に置かれた1人として、一緒に "
「…難しい、と思います」
「だよな、窮する事なく答えてくれて安心したぜ。でだ、俺は今から行く第二の護衛対象の為にこの命まで懸けるつもりは無い。ヤバければ即退く。当然足手纏いを気にする余裕も無い。何を置いてでもそこの大将を護るってのが俺の使命だからだ。言ったろ?手助けは序でって」
「そう、ですね。……すみません」
そう言うと九鬼さん私の横を通り、自分の席に置いてある荷物を開き準備を始めた。
フゥ…
ダメだな、思わず動くこの癖は。
ゴメンなさいシロさん。
約束、破るところでした。
でも私はまだ生きています。
生きていますから、シロさんも無事に帰って来て下さい。
必ず。
人を見透かす様なあの瞳。
涼やかな雰囲気を纏う彼を思い出すと、逃避したくなる萎れた気持ちが少し和らいだ気がした。
「んー~、真黎チーフは抱え込む性格だね~」
「そうかも、知れませんね。でもこんな状況でなければ至って普通ですよ」
「普通?ハハ……他人の為に命張るなんてのは普通じゃないって」
斜め後ろ。
タイミングを見計らって投げ掛けられた言葉はいつもの調子を取り戻していた。
「私なんかはあの白シャツ、あの手の馬鹿が消えてくれて清々してるし、人助けをついでって言うあのオッサンも含め今時の普通はこっち」
そう言う彼女は少し露悪的な表情を浮かべる。
「人間の価値も、命も、平等なんてのは建前だけ。世の中には無価値以下の、害を撒き散らすゴミ屑が沢山いるんだから」
そこまで言って自嘲気味な笑みを忍ばせた彼女は、少し躊躇いがちに息を吸い込んだ。
「で、今回助けられた側の私が、本来こんな事を言うべきじゃないのは分かってる…けどその上で言わせてもらうよ。私は自分の所為で誰かが死ぬなんて真っ平ゴメンなんだ。真黎チーフを大切に思う人達に償えるわけないし。だから他人の十字架なんて背負うべきじゃないし背負わせるべきでもない。他人の哀しみになんて関わらない方がいいんだよ…絶対」
そう言って物憂げに言葉を詰まらせた薗女さんは、身の置き場に困るように身体の向きを変えた。
メイクや物腰からも見て取れるように、彼女はきっと普段からもドライな人柄で、言い方は違えど心配等お節介はしないタチだと思う。
「ありがとうございます。気を、付けますね」
だから私は、どこか後悔しているかの様な、何が正解に適しているのかと模索している様な彼女に対し、その気持ちがしっかりと届いたと言う意味を込め、ゆっくりと深く返事を返した。
他人の哀しみ……か。
" 本日未明、◯◯市の高架橋の一部が突如崩落いたしました。この事故で、走行中の車数台が… "
何度掛けても繋がらない電話。
思い出される幸せな時ばかりの笑顔。
いつでも会えて居て当たり前の存在が起も承も無視して噓みたいに消えたあの日、私の日常と感情は、現実非現実の結び目が解かれたみたいになった。
" 真黎ちゃんダメだ、見ない方がいい "
あれは…
最悪だった。
それから夜を迎えるたび、透き通った月明かりを眺めるたび、爛れた傷痕が凍たく哀み1人ふるえた。
時に耐えられず温もりを求めたけど、生き方の違う相手とではそれも適いはしない。
だから不安定な心を、脆く崩れようとする足下を、動いて学んで埋め固めた。
その上に盛って踏み固め、また盛ってを必死に繰り返す日々。
何もしていないと居ても立っても居られなくなるから。
でもあの日から徐々に遠去かり、起伏の乏しい日常に馴染むにつれ、そんな私を疲れたような、どこか憐れむかのように眺める自分もいる。
" 何をしたって何も変えられないよ?"って。
それでもあの幸せを忘れられない私は、それをやめられはしない。
あんなのは、あんな思いは二度としたくない。
義心、犠牲、偽善に欺瞞。
誰かと関わる上でどこが正しいバランスなのか…
それが未だに分からない今の私は、こうして気にかけられるくらいに下手クソなんだろうな…きっと。
「フゥ… 」
お父さんとお母さんが生きていたのなら、私はもっと慎重に行動しているのかな?
「ー迷っている、かね?」
滑舌の良い声。
「…ぇぇ、そう、ですね。……少し」
「そうか、そうだろうね」
落ち着いたそれはスルリと耳に入ってくる。
「しかしこの未曾有の状況で、貴女はとても良くやっているよ。その挺身献身振りが、私が幼い頃よく聴かされた学徒隊の話しを思い起こさせるほどに」
学徒…
「それは、あのひめゆり…ですか?」
「有名なのはそうだがね…しかし、同じように命を賭して兵士を支えた学徒隊は他にもあったのだよ。悲しいことに余り知られてはいないが」
変わらず穏やかな表情の堤さんだけど、その目は僅かながらに遠くを差す。
「そう、なのですね。失礼致しました」
「いや、恣意的な教育や、偏向された情報統制ではそれが普通だ。ただ我々が今ここに在られるのはね、そう言った尊き先人達、一人一人のお陰なのだ。そして瀕する人の為に、何の利害無く手を差し伸べられる者が居るからこそ、我々が会うことのない先々の同胞にまで明日が繋がっていく。貴女が今しているのはそう言う事。だから自信をお持ちなさい」
「…はい、ありがとう、ございます」
スタ、スタ、スタ…
「よぉ、そろそろ会議は纏まったか?」
私達の沈み掛けた気まずさを、堤さんがおおらかに包み込み、続いてそれを指先で軽く弾くように片付ける九鬼さんは
「俺はぼちぼち出るから扉、開けられる準備は抜かりなく頼むぜ?右手を回したらそれが合図だ」
ギョロリとした目で扉を睨むと
「分かりました、お気を付けて」
「あれだけ言ったんだからさ、無事、戻りなよ」
こっちを向かずそのまま歩を進め、迷う事なく扉へと手を掛けた。
「なぁおい、それは誰に言ってる?らしくない心配より良い所撮り逃すなよカメラ小僧」
「「…っ‼︎ 」」
それは文字にすれば軽口で、こっちには背さえ向けている。
なのに脅された?と、誤認してしまう程の彼の怒気と、剥き出しの剣呑さに私達は同時に息を飲んだ。
「ウグ……Yu~ckゥッ、……っ…~っ」
思わずカメラを伏せコクリコクリと肩を揺らしす薗女さんは、嘔吐く口元を押さえつつ、力が抜けるように腰を落とした。
「どうだ?感想は」
「…スゥーーっフゥーーーーーー~~」
言う事を聞かなかった子供に対する時の、少し叱る様なニュアンスを含めた九鬼さんの一言は、頭をもたげた薗女さんの深呼吸で流される。
でもそれは反抗とか無視ではなく、とても返せる状況に無い心情のまざまざしい顕れ。
「ーどうぞ」
そんな彼女へそっとお水を差し出すと、コップを2秒ほど見つめた薗女さんは強張った動きでそれを取る。
「っ…~~はは、……ありがと」
そして噎せるのを堪えるよう一気に喉へ流し込むと、弱々しく礼を述べながら何かから身を守るように肩を窄めた。
「個人の判別どころか原型お構いなしか。これは見せしめじゃなくただの処理だなぁ……ったく」
ヒュッと息を飲む音と、座席の軋む音が重なる。
風景でも眺めるかのような気楽な雰囲気から放たれた言葉は、雰囲気を一変させた薗女さんの様子と相まって、ヒビ割れるような緊張感と息詰まる恐怖を辺りにもたらした。
「けど、まだ増えそうだ」
「九鬼」
ただそんな空気はお構い無しと何かを期待するような九鬼さんに対し、目を伏せたままの堤さんが叱咤…
「分かってるよ大将。俺もそう願ってるしな……ハァー~~ぁ」
ではない。
"全く人使いの荒い上司だ " と、よく見る表情をした九鬼さんからも分かる様に、お二人のやり取りには別の意図が垣間見えた。
それを見た私はお2人の特殊性を感じつつ反射的に立ち上がり、薄汚れた近くの窓から暗い外を見る。
ゴシゴシ
「…………、……… 」
ゴシゴシゴシ
「……竹仲さんだっ」
同じ様に窓に張り付いた咲。
副操縦士さん、外に出てたんだ…
襲撃者らに囲まれ小さくなっている人達を見て、最初に来たのは望む人ではなかったと言う落胆で、次に来たのはそんな身勝手な自身への更なる落胆。
それらにより口の中まで苦くなった私は、跪いている女性達から目を背け、ただただ静かに目を閉じる。
「………………… 」
でもこんな自戒じみた感情に意味なんて無い。
誰が生きていようとも、私には救えないから。
『コンコンコンコンっ』
そんな折、さっきまでとは違う軽快な音が、私の視線をまた窓の外へと誘った。
「フッ、どうやらツキには見放されてなかったようだ」
そこには更に集まって来た襲撃者達に、引き摺られ連れて来られる5人の姿が。
ッ⁉︎ あれは緋芦花ちゃんのお母様。
緋芦花ちゃんは…
「あの、私も行…私にも何かお手伝いさせてもらえませんか?」
切迫感から喉を突いて出る言葉。
「ん~~~それよかよ、アンタも視えたんだよな?何か奴等を殺すヒントとか、思い付かないか?」
だけど対する九鬼さんは間の抜けたような空気。
「それは、私にも皆目… 」
「だよなぁ」
「それより早く救けないとまた… 」
「何かしらの心得があるのも分かるが、1人であん中行って帰って来れるか?」
「それは… 」
二人ですら同時には厳しいのに、二十はいる襲撃者相手ではすぐに囲まれる。
でも…
" なんとしても無事生き残りそして帰る。その一点に集中して足掻きましょう。同じ状況に置かれた1人として、一緒に "
「…難しい、と思います」
「だよな、窮する事なく答えてくれて安心したぜ。でだ、俺は今から行く第二の護衛対象の為にこの命まで懸けるつもりは無い。ヤバければ即退く。当然足手纏いを気にする余裕も無い。何を置いてでもそこの大将を護るってのが俺の使命だからだ。言ったろ?手助けは序でって」
「そう、ですね。……すみません」
そう言うと九鬼さん私の横を通り、自分の席に置いてある荷物を開き準備を始めた。
フゥ…
ダメだな、思わず動くこの癖は。
ゴメンなさいシロさん。
約束、破るところでした。
でも私はまだ生きています。
生きていますから、シロさんも無事に帰って来て下さい。
必ず。
人を見透かす様なあの瞳。
涼やかな雰囲気を纏う彼を思い出すと、逃避したくなる萎れた気持ちが少し和らいだ気がした。
「んー~、真黎チーフは抱え込む性格だね~」
「そうかも、知れませんね。でもこんな状況でなければ至って普通ですよ」
「普通?ハハ……他人の為に命張るなんてのは普通じゃないって」
斜め後ろ。
タイミングを見計らって投げ掛けられた言葉はいつもの調子を取り戻していた。
「私なんかはあの白シャツ、あの手の馬鹿が消えてくれて清々してるし、人助けをついでって言うあのオッサンも含め今時の普通はこっち」
そう言う彼女は少し露悪的な表情を浮かべる。
「人間の価値も、命も、平等なんてのは建前だけ。世の中には無価値以下の、害を撒き散らすゴミ屑が沢山いるんだから」
そこまで言って自嘲気味な笑みを忍ばせた彼女は、少し躊躇いがちに息を吸い込んだ。
「で、今回助けられた側の私が、本来こんな事を言うべきじゃないのは分かってる…けどその上で言わせてもらうよ。私は自分の所為で誰かが死ぬなんて真っ平ゴメンなんだ。真黎チーフを大切に思う人達に償えるわけないし。だから他人の十字架なんて背負うべきじゃないし背負わせるべきでもない。他人の哀しみになんて関わらない方がいいんだよ…絶対」
そう言って物憂げに言葉を詰まらせた薗女さんは、身の置き場に困るように身体の向きを変えた。
メイクや物腰からも見て取れるように、彼女はきっと普段からもドライな人柄で、言い方は違えど心配等お節介はしないタチだと思う。
「ありがとうございます。気を、付けますね」
だから私は、どこか後悔しているかの様な、何が正解に適しているのかと模索している様な彼女に対し、その気持ちがしっかりと届いたと言う意味を込め、ゆっくりと深く返事を返した。
他人の哀しみ……か。
" 本日未明、◯◯市の高架橋の一部が突如崩落いたしました。この事故で、走行中の車数台が… "
何度掛けても繋がらない電話。
思い出される幸せな時ばかりの笑顔。
いつでも会えて居て当たり前の存在が起も承も無視して噓みたいに消えたあの日、私の日常と感情は、現実非現実の結び目が解かれたみたいになった。
" 真黎ちゃんダメだ、見ない方がいい "
あれは…
最悪だった。
それから夜を迎えるたび、透き通った月明かりを眺めるたび、爛れた傷痕が凍たく哀み1人ふるえた。
時に耐えられず温もりを求めたけど、生き方の違う相手とではそれも適いはしない。
だから不安定な心を、脆く崩れようとする足下を、動いて学んで埋め固めた。
その上に盛って踏み固め、また盛ってを必死に繰り返す日々。
何もしていないと居ても立っても居られなくなるから。
でもあの日から徐々に遠去かり、起伏の乏しい日常に馴染むにつれ、そんな私を疲れたような、どこか憐れむかのように眺める自分もいる。
" 何をしたって何も変えられないよ?"って。
それでもあの幸せを忘れられない私は、それをやめられはしない。
あんなのは、あんな思いは二度としたくない。
義心、犠牲、偽善に欺瞞。
誰かと関わる上でどこが正しいバランスなのか…
それが未だに分からない今の私は、こうして気にかけられるくらいに下手クソなんだろうな…きっと。
「フゥ… 」
お父さんとお母さんが生きていたのなら、私はもっと慎重に行動しているのかな?
「ー迷っている、かね?」
滑舌の良い声。
「…ぇぇ、そう、ですね。……少し」
「そうか、そうだろうね」
落ち着いたそれはスルリと耳に入ってくる。
「しかしこの未曾有の状況で、貴女はとても良くやっているよ。その挺身献身振りが、私が幼い頃よく聴かされた学徒隊の話しを思い起こさせるほどに」
学徒…
「それは、あのひめゆり…ですか?」
「有名なのはそうだがね…しかし、同じように命を賭して兵士を支えた学徒隊は他にもあったのだよ。悲しいことに余り知られてはいないが」
変わらず穏やかな表情の堤さんだけど、その目は僅かながらに遠くを差す。
「そう、なのですね。失礼致しました」
「いや、恣意的な教育や、偏向された情報統制ではそれが普通だ。ただ我々が今ここに在られるのはね、そう言った尊き先人達、一人一人のお陰なのだ。そして瀕する人の為に、何の利害無く手を差し伸べられる者が居るからこそ、我々が会うことのない先々の同胞にまで明日が繋がっていく。貴女が今しているのはそう言う事。だから自信をお持ちなさい」
「…はい、ありがとう、ございます」
スタ、スタ、スタ…
「よぉ、そろそろ会議は纏まったか?」
私達の沈み掛けた気まずさを、堤さんがおおらかに包み込み、続いてそれを指先で軽く弾くように片付ける九鬼さんは
「俺はぼちぼち出るから扉、開けられる準備は抜かりなく頼むぜ?右手を回したらそれが合図だ」
ギョロリとした目で扉を睨むと
「分かりました、お気を付けて」
「あれだけ言ったんだからさ、無事、戻りなよ」
こっちを向かずそのまま歩を進め、迷う事なく扉へと手を掛けた。
「なぁおい、それは誰に言ってる?らしくない心配より良い所撮り逃すなよカメラ小僧」
「「…っ‼︎ 」」
それは文字にすれば軽口で、こっちには背さえ向けている。
なのに脅された?と、誤認してしまう程の彼の怒気と、剥き出しの剣呑さに私達は同時に息を飲んだ。
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