ミギイロハナレ

neonevi

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▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath

3-14 Maybe True

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side薗女

←ー←ー←ー
悲鳴の少し前
←ー←


・・・機内エコノミークラス。



「ねぇ、もう朝だよね?まだ救助来ないのかな… 」

携帯を確認しつつ尋ねる女。

「大丈夫だって、今頃本格的に動いてるだろうからもう来る来る」

「…うん、そうだよね」

声をひそめるそんなやり取りも、静かな機内では丸聞こえ。


「…、…、…、…、…、… 」

髪が逆立ち慌てふためく機内の人達。

「…、…、…、… 」

青白く光る幻想的な湖と、地面に横たわる旅客機。

「…、…、…、…、… 」

それに周囲を覆い尽くす土と岩。

デジカメに映し出される画像のほとんどは、朝か夜かも分からない未知の地底世界。

こんだけのトラブルの渦中とか、普通なら最高に美味しいんだけど…

「…、……………… 」

と、画像を切り替えてく途中で止まる手。


ってかこんな動物…いや生物居ないでしょ。

そして少女を背に、その巨大生物と対峙する女性。
戦う男達。

その中心にいるのはあの男。


伊佐木…白。






←←ーー←←ーー←←
二ヶ月程前のある夜
←←ーー←



本日も定位置であるコンビニ駐車場の端っこに原付を停め、そこに跨ったまま冷めたカフェオレに口を付ける。

ゴクン。

この味にもいい加減飽きてきたな~

" いいか薗女そのめ。仕事ってはなぁ、忍耐と運だ "
" 運なの?"
" そうだ。お父さんはこの世の中のな?無限に繋がっている糸を繰り返し繰り返し手繰り続ける仕事をしてるんだ。けどその糸が繋がる先は誰にも分からない。まぁ神様の気分次第ってところだ "
" じゃあ私神さまにお祈りするよ。少しでもお父さんに運が向くように "
" ははは、そうそうか。それなら今回は上手くいきそうだな "

折れそうになると思い出す父との記憶は、神頼みがいかに無意味かを教えてくれる。


はぁーー~…そろそろなんかしろよ。
動けよ。

とグチを繰り返しつつ携帯で面白い情報でも無いかと漁る。

「……、…………、……… 」

『ブッブッブッブッブッ』

すると切り替わった着信表示は知合いの記者。

「はい」
「お~薗女ちゃん、今いいか?」
「いっすよ~」
「どうだい?例の件…と言いたい所だがその様子じゃ進展は無さそうだな」
「そ、今のところ動き無し」
「そっか。まぁ張込みは勿論基本だけどさ、根の詰め過ぎは機を逃すからな?期待はしてるけどほどほどに。無理はするなよ」
「はいはーい、じゃまた連絡しまーす」
「おう、じゃあまたな」


はぁ…

一ヶ月半前東小坂で起きた凄惨な通り魔殺人事件。
未だ犯人の捕まらないその事件に興味をそそられた私は、これを今回のターゲットとして情報を収集し、その中で事件後に転居した6世帯(現場から5km圏内)が任意の事情聴取を受けていた事を知った。
ただ当然その人達から犯人に繋がる証拠も情報も発見されず、とうとうこの間警察の人員も大幅な縮小が決定されてしまった。
けどフリーの私はその後も地道な捜査を続けた結果、その6世帯の内で消息が掴めない人が居る事を突きとめた。
これが事件の解決に直接繋がるとは考えていないけど、他に糸口が見つからない以上はとその関係先に取材を敢行。

1ーー以前の職場。
勤務態度は真面目。
人間関係は可もなく不可もないが、個人的な事は話さないタイプらしく余り深い話は聞けなかった。
2ーー家族。
構成は両親と本人の三人。
運良く話しの聞けた母親は人当たりの良い優しそうな印象だったけど、今現在連絡の付かないと言う息子に関してはそれ程心配していない様子。
3ーー友人。
職場では懇意にしている友人についての情報はなかった為母親に探りを入れると、私達よりも息子に詳しいと言う唯一の友人を教えてくれた……が、当人にコンタクトを試みるも素気無くあしらわれるばかりで全く話しにならず、今のままじゃ話しのテーブルには着けそうもない。

けどあの態度は何かしら知ってっからだよな~と言う直感を信じ、何か弱味の1つでも見つけられればと奴の行動を追跡するここ何日か……なんだけどルームメイトも同僚の男のみ。


「………… 」

その時目の前の道路の向こうから、赤色灯を回したパトカーがこっちへと走ってきた。

まぁこの辺りは市内でも閑静な住宅街だから見回りも多いよな。

と思っていたらパトカーはこの駐車場に入り停まる。


『バタンっ』

夜食の買出しですかねぇ~ご苦労さ~ん。


ザっザっ
「…すみませんちょっといいですか?」

「……、……、…はぁ、私?」

左右後ろと私しか居ないこと確認し答えると、近付いて来た警官は無表情で頷く。

「良いけど何ですか?」
「ここで何を?誰かと待ち合わせですか?」

「…別に、普通にブラブラしてる途中コンビニそこに寄っただけ」

「一応免許証の確認をさせてもらえますか?」
「はぁ、良いですよ。……と、はい」

「……自宅、少し離れてますね。ここにはどうして?」

((ッ… ))

関係ねーだろボケっと出掛けた舌打ちを止める。

どうもマークされてるっぽいなこれ。

という事で恒例の荷物のチェックをされた後署までご招待。



そしてドラマよろしく取調べ室へ。

「スンスンっ」

ここも古い文具みたいなニオイがするな~
なんでだろ。

「ここに連れて来られた心当たり…はあるよね?」

さっきまでと話し方から変わる警官は、あからさまに何かを握ってそうな誘導尋問さんもんしばいを打ってくる。

「心当たり?ないですね~」

こんな状況も2回目となると多少は慣れる。


「……いやねぇ、ここ二週間程あの近辺でウロついているって通報があったけど?」

種明かしでもするみたいなオッサンは、すっトボけた表情をしつつもどこか得意気。

なら端からそう言え。

「確かにここん所はあの辺りがブラブラするコースでしたね~」

で?

「芳川さん、仕事の方は何されてるの?」

ハイハイ。

「派遣で色々と」

「派遣ねぇ。で、今の勤務先は?」

メンド…

「今は良い仕事が無くてブラブラ?」

適当な答えを返す私に対し警官は目を細める。

「あんな時間だしその格好、いかがわしい仕事とかじゃないよね?」

「ハァ?」

ッだよコイツ、チラチラ胸元見やがって。


『ガチャ』

その時突然扉が開く。

そしてそこから少し顔を出した警官は、こちらを向かずほんの一瞬だけ僅かに首を横に動かすと、直ぐと首を引っ込めて扉を閉めた。

疑いが晴れたんならちゃっちゃと帰らせてくれってーの。
こちとら後ろ暗いこともマエも無い優良な一般市民だから。

「あ~~まだ終わってないからね」

お尻を上げ掛けた私を見て止める警官。

「実はね、通報された方の弁護士さんが今向かってるんだよここに。オタクがストーカーをしていたって証拠を持ってさ」

「っ……そですか」

思わず出そうになった声を飲み込み返答。

ストーカー?
私が?
PIECE OF SHITッ

『ギシっ』
「こういう事するのは初めて?今の内に改めた方が良いと思うよ。今はそう言う被害も性別問わないからねぇ」

座りが悪いのか、警官は腰を気にしたように姿勢を直した。

「と言うことでそれ、今の内に記入しておいて下さいね」


完全油断してたわ情けな。

証拠とか終わってんな…

「はぁ~~ぁ」


厄日確定~








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