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▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath
3-5 Obey Me
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sideリュウコウ
←←←←←←←←←←←←
20数年前の冬のある日
←←←←←←←←←
キュ、キュ、キュ、キュ、キュ
「フッ、フッ、フッ、フッ、フッ」
ダタタ
「兄さんっ見て見てっ」
稽古場で日課の素振りをしていると、弟が声を弾ませて走って来た。
「どうしたゲン?」
「ほら見てっ、目が開いたよ」
「ミャ~~、ミャ~~」
10日ほど前に弟が拾って来た仔猫は、当初の痩せ細っていた身体が嘘のように健康的になってきた。
「本当だな。それで、名前は決めたのか?」
「ん~、まだ迷ってる」
「おかえりなさいませ旦那様」
「おかえりなさいませ」
縁側に腰掛けて話していると、門の方からお手伝いさん達の声が聞こえてきた。
「……っ」
その途端ゲンは仔猫を抱きしめて萎縮し、さっきまであった日常の雰囲気が音も無く消え去る。
ドっドっドスっドスっドスっ…
足音だけで誰だと分かる、人を威圧するような歩き方。
ドスっドス…
「琉洸…、ん?何だそれは」
弟の様子にすぐと気が付いた父親は、如何にも気に入らないと言いたげな顔をする。
「…ぁ、猫」
「…見れば分かる捨てて来い……いや源蔵、始末を付けろ」
「し、始末って?」
「殺せと言ったのだ」
「何を言ってるのお父さん、出来るわけないよっ」
「フゥ、やはり出来んか。せめて思い切りの良さでも有ればと思ったが……琉洸、20分後書斎に来い」
そう言って父親は背を向けて去って行った。
「…ゲン、気にするな」
仔猫を抱え俯いてしまった弟に声を掛ける。
「でも僕、またお父さんに無視されるね… 」
「ミャ~~、ミャ~~ぁ」
「普通の親は子供にあんな事を言わない。世間の常識からしてうちは異常なんだ…分かるな?」
「…うん」
" 琉洸、その馬を殺せ "
弟と同じくらいの頃、父親は僕が可愛がっていた仔馬を同じように殺せと言った。
毛並みからチョコと名付けたその馬は特別懐いており、その背に乗るのを楽しみにしていた僕は弟と同じ様にそれを拒否した。
『ガキィ‼︎ 』
" キヒィィ~~~~ン "
その瞬間あの男はチョコの後ろ脚を木刀で叩き折った。
" これでこの馬はもう走れんな。走れん馬は死んだも同然だ。せめてお前の手で楽にしてやれ "
" ……ッッ "
" 優れた者の人生には役割があり、些末な情に振り回されてはならん。そして世の中には仕様の無い理不尽など幾らでも有る。切り捨てろ "
その後苦しむチョコに用意された毒を飲ませると、暫くして浅くなった呼吸は静かに止まり、それからだんだんだんだんと冷えて固くなっていった。
その時の乾きつっぱった頰の感覚と、父親への煮え滾る憎悪は今でも憶えている…
だけ。
あれだけ哀しかった筈の感情も、怒りも、二年もせずに思い出へと変じてしまった。
「ゲン、その仔猫……温かいだろ?」
「うん」
「その命はお前が守ったんだ」
「…うん」
「お前はあんな男でも父親と思えるんだな」
そう言ってベソをかく弟の頭に手を置きながらも、あの男の教えんとしている事を否定し切れない自分も居た。
強い感情の波は目の前の出来事しか映さない。
それは時に目を曇らせる。
でも、そうやって揺れるのが本来の人間の姿なんだ。
「大丈夫だ、この家はお前が継げばいい」
「…僕はダメだよ。兄さんには何一つ勝てないもん」
「ゲン、あの男の価値観だけに縛られるな。外に出ればお前も優秀なんだ」
それに俺からしてみれば、こんな家族でも大切に思えるお前こそが誰より眩しいよ
ーーーーー…
「シロ君はどうして此処と似た場所に?」
「…あ~と此処と似た所とは言いましたけど、オレが行ってたのは普通に地上です。で、どうして行く事になったのかは成り行きと言うか手伝いですね」
手伝いか、軽く言うね…
「フ…じゃあ僕の手伝いもお願い出来ないかな?本当に体調に問題が無ければだけど」
いつも二つ返事のシロ君だから、本当は頼み事なんてしたくない。
「リュウコウ君に言われれば何だってやりますよ。でも… 」
ほらね。
だけどここは帰り道も分からない暗い地の底で、更には見たことの無い人喰いの化け物まで暴れている。
「解ってるよ。でもね、僕にとっては今なんだ」
人生の役割?
例えそんな物があるのだとしても決めるのは神でもお前でもない。
僕自身だ。
だから今は、僕の最も信頼出来る君を頼らせて欲しい。
「ハァーーー~っ分かりましたよ。その顔が自棄じゃないって事も。…けど無茶は無しって約束して下さいね?」
「あぁ勿論。自殺願望がある訳じゃないからね。因みにシロ君はあんなのとも遭遇したのかい?」
「いえ、オレが直接遭遇したのは、大型犬を一回り大きくした狼的な猛獣だけですね。多分」
「直接って事は戦って殺したって感じ?」
「はい。ただその時はクロスボウとか大振りのタクティカルナイフとか、その他の装備をした上での話しですけどね」
「…………フ、まるで映画だね。こんな世界が現実にあるとは」
「えぇ、オレ達を守る倫理感の一切が通じないファンタジーです」
「早く進めよクソぉっ」「いいから押せっ押せっ」「ちょ、押すんじゃないっ」
「おいまた襲われてるぞっ誰か何とか… 」
「こっち見んな、お前が行けっ」
少し先では人々が逃げ惑っていると言うのに、いつもみたいなノリの僕らはどこかおかしいよね。
「なんかハイになってます?」
「かもね?でも生温さが吹き飛んだこの感覚は悪くないよ」
だから麻痺しかけていた僕にはお誂え向きかも知れない。
素面でも裸を晒されてしまう、倫理感の存在しないこの場所は。
side緋芦花
((ドクンっドクンっドクンっドクンっ、ドクンっ… ))
" 緋芦花、お母さん機内の荷物を取りに行かせてもらうから、少しだけ待っててね "
お母さん…
ザッザザ、バタバタバタっ
「おいどけぇっ」「食われちまうっ逃げろーーーっ」
「キャーーーーーーーっ」
ダタっタっタっ
「早く飛行機に入れーーーっ」
大人の人達が大声で叫び、私の目の前を次々と走り抜けて行く。
私も逃げなきゃ…
そう思い車椅子を動かし掛けた時
あっ
「ちょっ退け⁉︎ 」
『ドカッ‼︎ ガシャァー』
カラカラカラ…
視界が揺れた瞬間私は地面に投げ出された。
痛っ…
ザッダダダダダーーダタタタタッ…
両手をついて身体を起こそうとする側で、沢山の人達の足音が地面を叩いて行く。
「っんンー~ッ」
仰向けになる為に上半身に力を込め、言うことを聞かない下半身ごと回そうとすると
ーピクッ√
あれ…?
麻痺してる右膝が……曲がった。
信じられない程にスンナリと仰向けになれた自分に驚きつつ右膝に手を置くと
ダっタっタっザっタっタっ
「ハァはァはァ、ハァハァ誰か… 」
見るからに疲れ果てたお兄さんが向こうから走って来るのが見えた。
ザっタっタっタっ
「…ハぁハァっ、ハァはァ…⁉︎ 」
そしてそのお兄さんはすぐ側まで来て私に気が付くけど、そのまま目の前を走り去って行ってしまった。
あ、早く立たなくちゃ…
一瞬このまま立てるかも?と思ったけど、今は試している場合じゃないと車椅子の杖に手を伸ばす。
ガザッザザッザザッ…
…⁈⁉︎
すると背後から地面を擦るような音が近付いて来た。
ガザッズザザ…
あれ?
音が…
止まった?
((ドクっドクっドクっドクっドクっドクっドクっ))
((はぁ、はっ、はぁ、はぁ、はぁっ、はぁ、はぁ… ))
背中を叩くくらいに揺れる心臓は呼吸まで震わせる。
その息苦しさを抑える様に胸に手を当てて、そして意を決した私は恐る恐る振り返ると
「…ヒュッ~⁉︎ 」
ジッと佇む灰色の怪物に呼吸が止まりそうになった。
ぅぁ………
((ドクっドクっドクっドクっドクっドクっドクっ))
…………
((ドクっドクっドクっドクっドクっ))
………
心臓の音以外全てが止まったみたいな数秒間は
……
『ゴロォォロロロォォ~~… 』
っ⁉︎
牛蛙みたいな低い唸り声に打ち切られた。
嫌だ…
「…っ」
怖くて堪らないのに…
「~~っ」ズ…
今すぐ逃げたいのに…
「ーー~ッ」ズズ…
身体に力が入らない。
お母さん…
私、食べられちゃう。
「ッいヤぁぁあーーーーーーーーッ」
←←←←←←←←←←←←
20数年前の冬のある日
←←←←←←←←←
キュ、キュ、キュ、キュ、キュ
「フッ、フッ、フッ、フッ、フッ」
ダタタ
「兄さんっ見て見てっ」
稽古場で日課の素振りをしていると、弟が声を弾ませて走って来た。
「どうしたゲン?」
「ほら見てっ、目が開いたよ」
「ミャ~~、ミャ~~」
10日ほど前に弟が拾って来た仔猫は、当初の痩せ細っていた身体が嘘のように健康的になってきた。
「本当だな。それで、名前は決めたのか?」
「ん~、まだ迷ってる」
「おかえりなさいませ旦那様」
「おかえりなさいませ」
縁側に腰掛けて話していると、門の方からお手伝いさん達の声が聞こえてきた。
「……っ」
その途端ゲンは仔猫を抱きしめて萎縮し、さっきまであった日常の雰囲気が音も無く消え去る。
ドっドっドスっドスっドスっ…
足音だけで誰だと分かる、人を威圧するような歩き方。
ドスっドス…
「琉洸…、ん?何だそれは」
弟の様子にすぐと気が付いた父親は、如何にも気に入らないと言いたげな顔をする。
「…ぁ、猫」
「…見れば分かる捨てて来い……いや源蔵、始末を付けろ」
「し、始末って?」
「殺せと言ったのだ」
「何を言ってるのお父さん、出来るわけないよっ」
「フゥ、やはり出来んか。せめて思い切りの良さでも有ればと思ったが……琉洸、20分後書斎に来い」
そう言って父親は背を向けて去って行った。
「…ゲン、気にするな」
仔猫を抱え俯いてしまった弟に声を掛ける。
「でも僕、またお父さんに無視されるね… 」
「ミャ~~、ミャ~~ぁ」
「普通の親は子供にあんな事を言わない。世間の常識からしてうちは異常なんだ…分かるな?」
「…うん」
" 琉洸、その馬を殺せ "
弟と同じくらいの頃、父親は僕が可愛がっていた仔馬を同じように殺せと言った。
毛並みからチョコと名付けたその馬は特別懐いており、その背に乗るのを楽しみにしていた僕は弟と同じ様にそれを拒否した。
『ガキィ‼︎ 』
" キヒィィ~~~~ン "
その瞬間あの男はチョコの後ろ脚を木刀で叩き折った。
" これでこの馬はもう走れんな。走れん馬は死んだも同然だ。せめてお前の手で楽にしてやれ "
" ……ッッ "
" 優れた者の人生には役割があり、些末な情に振り回されてはならん。そして世の中には仕様の無い理不尽など幾らでも有る。切り捨てろ "
その後苦しむチョコに用意された毒を飲ませると、暫くして浅くなった呼吸は静かに止まり、それからだんだんだんだんと冷えて固くなっていった。
その時の乾きつっぱった頰の感覚と、父親への煮え滾る憎悪は今でも憶えている…
だけ。
あれだけ哀しかった筈の感情も、怒りも、二年もせずに思い出へと変じてしまった。
「ゲン、その仔猫……温かいだろ?」
「うん」
「その命はお前が守ったんだ」
「…うん」
「お前はあんな男でも父親と思えるんだな」
そう言ってベソをかく弟の頭に手を置きながらも、あの男の教えんとしている事を否定し切れない自分も居た。
強い感情の波は目の前の出来事しか映さない。
それは時に目を曇らせる。
でも、そうやって揺れるのが本来の人間の姿なんだ。
「大丈夫だ、この家はお前が継げばいい」
「…僕はダメだよ。兄さんには何一つ勝てないもん」
「ゲン、あの男の価値観だけに縛られるな。外に出ればお前も優秀なんだ」
それに俺からしてみれば、こんな家族でも大切に思えるお前こそが誰より眩しいよ
ーーーーー…
「シロ君はどうして此処と似た場所に?」
「…あ~と此処と似た所とは言いましたけど、オレが行ってたのは普通に地上です。で、どうして行く事になったのかは成り行きと言うか手伝いですね」
手伝いか、軽く言うね…
「フ…じゃあ僕の手伝いもお願い出来ないかな?本当に体調に問題が無ければだけど」
いつも二つ返事のシロ君だから、本当は頼み事なんてしたくない。
「リュウコウ君に言われれば何だってやりますよ。でも… 」
ほらね。
だけどここは帰り道も分からない暗い地の底で、更には見たことの無い人喰いの化け物まで暴れている。
「解ってるよ。でもね、僕にとっては今なんだ」
人生の役割?
例えそんな物があるのだとしても決めるのは神でもお前でもない。
僕自身だ。
だから今は、僕の最も信頼出来る君を頼らせて欲しい。
「ハァーーー~っ分かりましたよ。その顔が自棄じゃないって事も。…けど無茶は無しって約束して下さいね?」
「あぁ勿論。自殺願望がある訳じゃないからね。因みにシロ君はあんなのとも遭遇したのかい?」
「いえ、オレが直接遭遇したのは、大型犬を一回り大きくした狼的な猛獣だけですね。多分」
「直接って事は戦って殺したって感じ?」
「はい。ただその時はクロスボウとか大振りのタクティカルナイフとか、その他の装備をした上での話しですけどね」
「…………フ、まるで映画だね。こんな世界が現実にあるとは」
「えぇ、オレ達を守る倫理感の一切が通じないファンタジーです」
「早く進めよクソぉっ」「いいから押せっ押せっ」「ちょ、押すんじゃないっ」
「おいまた襲われてるぞっ誰か何とか… 」
「こっち見んな、お前が行けっ」
少し先では人々が逃げ惑っていると言うのに、いつもみたいなノリの僕らはどこかおかしいよね。
「なんかハイになってます?」
「かもね?でも生温さが吹き飛んだこの感覚は悪くないよ」
だから麻痺しかけていた僕にはお誂え向きかも知れない。
素面でも裸を晒されてしまう、倫理感の存在しないこの場所は。
side緋芦花
((ドクンっドクンっドクンっドクンっ、ドクンっ… ))
" 緋芦花、お母さん機内の荷物を取りに行かせてもらうから、少しだけ待っててね "
お母さん…
ザッザザ、バタバタバタっ
「おいどけぇっ」「食われちまうっ逃げろーーーっ」
「キャーーーーーーーっ」
ダタっタっタっ
「早く飛行機に入れーーーっ」
大人の人達が大声で叫び、私の目の前を次々と走り抜けて行く。
私も逃げなきゃ…
そう思い車椅子を動かし掛けた時
あっ
「ちょっ退け⁉︎ 」
『ドカッ‼︎ ガシャァー』
カラカラカラ…
視界が揺れた瞬間私は地面に投げ出された。
痛っ…
ザッダダダダダーーダタタタタッ…
両手をついて身体を起こそうとする側で、沢山の人達の足音が地面を叩いて行く。
「っんンー~ッ」
仰向けになる為に上半身に力を込め、言うことを聞かない下半身ごと回そうとすると
ーピクッ√
あれ…?
麻痺してる右膝が……曲がった。
信じられない程にスンナリと仰向けになれた自分に驚きつつ右膝に手を置くと
ダっタっタっザっタっタっ
「ハァはァはァ、ハァハァ誰か… 」
見るからに疲れ果てたお兄さんが向こうから走って来るのが見えた。
ザっタっタっタっ
「…ハぁハァっ、ハァはァ…⁉︎ 」
そしてそのお兄さんはすぐ側まで来て私に気が付くけど、そのまま目の前を走り去って行ってしまった。
あ、早く立たなくちゃ…
一瞬このまま立てるかも?と思ったけど、今は試している場合じゃないと車椅子の杖に手を伸ばす。
ガザッザザッザザッ…
…⁈⁉︎
すると背後から地面を擦るような音が近付いて来た。
ガザッズザザ…
あれ?
音が…
止まった?
((ドクっドクっドクっドクっドクっドクっドクっ))
((はぁ、はっ、はぁ、はぁ、はぁっ、はぁ、はぁ… ))
背中を叩くくらいに揺れる心臓は呼吸まで震わせる。
その息苦しさを抑える様に胸に手を当てて、そして意を決した私は恐る恐る振り返ると
「…ヒュッ~⁉︎ 」
ジッと佇む灰色の怪物に呼吸が止まりそうになった。
ぅぁ………
((ドクっドクっドクっドクっドクっドクっドクっ))
…………
((ドクっドクっドクっドクっドクっ))
………
心臓の音以外全てが止まったみたいな数秒間は
……
『ゴロォォロロロォォ~~… 』
っ⁉︎
牛蛙みたいな低い唸り声に打ち切られた。
嫌だ…
「…っ」
怖くて堪らないのに…
「~~っ」ズ…
今すぐ逃げたいのに…
「ーー~ッ」ズズ…
身体に力が入らない。
お母さん…
私、食べられちゃう。
「ッいヤぁぁあーーーーーーーーッ」
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