RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ

neonevi

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▽ 二章 ▽ 明日は今日を嗤い昨日は今日を憫んだ

2-3 Phobia〜 高所良俗違反

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sideシロ

第3隊が出て二時間半後。



「ヤダヤダヤダヤダッ、絶対無理だっつーーNoォォォォーーーーーー」

ハーネスこんなモン着けさせるからまさかとは思ったけど、堰き止められた橋から1kmほど川下に移動した先は


『『『ズゴゴォォーーーォォオオオーーー~っっゴッバァッっボォォォオーーーー‼︎‼︎ 』』』

濁流渦巻く一級河川(知らんけど)。


「…………ゴクリ… 」

しかも水面までの高さは優に30m超え。

ぁ~…ぁぁ~アカンて…
こんなボォォとか唸り声上げる川なんて台風でも見たことない。

「シロ、大丈夫。ここずっと水…少ない」
「嘘付けェェいッ‼︎ 」『ぺシッ』

好い顔で言うミレのデコを思わず叩いてしまった…

「……⁈ 」

ミレはデコに手を当て不思議そうにしている。

「…悪い。でもな、これは死ぬんだよ…落ちたら確実に。解るか?な?そこには人間の力を挟む余地なんて無い。ただ死ぬんだよぉぉっ」

マンションだって絶対に四階以下にしか住まないのに。(現在四階住み)

「でもこれ、大丈夫… 」
カシっカシっ
「…ね?」

赤くなったデコのまま、ミレはハーネスの金具を掴んで見せた。
まるで優しく子供をあやすかの様に。


ぐぅぅ~ッ

こんな小娘に宥められる日が再び来ようとはっ…

オレはこの目が眩むような光景に、ある有名な吊り橋を渡った時の屈辱を思い出す。

あの時は琴吹に笑われて引けなくなり渡った。
オムツを履いた赤子のように(らしい)…

けどまたも、またもオレは同じ轍を踏むのか。
しかも今回は


スルルゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

と伸びるのは細いワイヤー1本のみ。
距離200mを超えるそれは正に地獄のジップライン。

「こ… 」

こんなのでこの激流の上を渡河するだと?


ズサっ…

膝が折れ地面に突っ伏しそうになる。


『『ゴォォーボボォォォーーーーーゾッバァァーーーッ‼︎ 』』

地面を伝わって来る自然の猛威。


あぁ…
マジで安請け合いすんじゃなかった。

さっきまでは遠目に見えるいくつもの山脈を見て "あれ丹霞山に似ているなぁ" なんて思ってたのに…


「じゃあわたし行くね」

バッ
「…っ⁉︎」

そう言ったミレはネクロマンシーを片手に階段を上がる。

地獄の十……八階段を。


ちょっ⁉︎ 
ミレさん聞いてっ

その思いは心の中から飛び出して一気に喉を通過した

「…ぐぎぎぃ…ぃ…… 」

けど舌を噛んでギリギリ耐えた。

オレの漢としてのプライドは、女に向ける泣き言を許しはしない。


「いい?シロっこれ」『カシャッ』

とミレは唇を噛み千切りそうなオレに見えるように金具をフック。
そして頷くと同時に

トンッー「シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー… 」ーーーーーーーーーーー

ミレの姿はドンドン小さくなる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…………うぁぁ……ぁ…ぁ…… 」

30m超の高さを滑り進むその様を見ているだけで、オレの琴線ならぬ琴玉きんぎょくは一気に縮み上がる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「バ、バカっ動くなっ… 」

しかも視線の先のミレは途中振り返って、空いてる方の手を振って来る始末。

ぐぅ…くくぅっ……貴様ァァっ
遊びじゃねーんだぞこれは~~~…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…スト…

しかし苛立ちと心配でどうかなりそうなオレを尻目に、ミレはあっという間に対岸まで行き無事到着。


ッゥ~…

変な汗が出てきた。

行くかっ?行くないのかオレ?

行くない?
ぁあぁぁっもうッ

パニック一歩手前のオレを他所に、向こう岸の豆粒は無邪気に手招いている。


クソックソックソックソッ

F◯ck F◯ck F◯ck F◯ck F◯ck‼︎!



スタスタスタスタ…

スタスタスタスタ…

ぉ…ぉぉ…((ドっドっドっドっドっ))


スタスタスタ…

あ、あかん…((ドっドっドっドっドっ))

そう思いながらも慎重に階段を上がっていく。


スタスタスタ…

足…が((ドっドっドっドっドっ))


スタスタ…

…ケツが((ドっドっドっドっドっ))


スタスタ…

…フワフワす…る…((ドっドっドっドっドっ))


8kgほどの車体を持ち、十八段を上り切ったその眺めは正に絶刑。


「…ハっハっハッ」((ドっドっドっドっドっ))


「…ハッハッ」((ドっドっドっドっドっ))


息、息がしにくひぃ… ((ドっドっドっドっドっ))


ヤバ、過呼吸症候群ハイベンかましそう…


フルフルフル…『カシャッ』

((ドっドっドっドっドっ))

『グイィッ、グイィッ』

ワイヤーを引っ張る感触の覚束さが、逆に…逆?とにかく更なる不安を煽ってくる。

本当に…
本当にこれで良いんだよな?

((ドっドっドっドっドっ))


と…

と…                

とととっ                  


「とうりゃーーーーーーーッ……ー~ッっ… 」




……





オンっ「ドリャーーーーーーーッ」

『ドフッ‼︎ 』ーーー「うっワァァぁーーー~あぁ~ぁ~… 」


ズサァッ
「多分死なないんだろっ?」

渾身の飛び蹴りをガラ空きの脇腹にお見舞いしてやったけど、この高さと川の流れからは本当に多分死なない。


ー~~~~…『バシャンっ』


死ねやぁッ

とは言え15mって相当だぞクソダボっ
3~40m見た後だから多少は麻痺してるけど、飛び込み競技でも9mなんだからなっ

そこに人を…しかもいきなり突き落とそうなんざぁ鬼畜の所業だっ

「ジリジリナイフを出してんのもオレには丸見えなんだよっ」

通り魔野郎赦すまじ…





ドンッ

例え死んでも心はへっちゃらよ。
借りのある人間への緊急避難だしな。

つーか死ね。





sideスオル


ー~~~~…『バシャンっ』


突進して来たソークは目の前で蹴り飛ばされ、真っ暗な崖下へと消えていった。


「×××××××××××××××××××××× (ジリジリナイフを出してんのもオレには丸見えなんだよっ) 」

そしてソークに向かって何やら言っている男の装備は見たこともない。


「…ぇ?ぁ、アンタあの人か?」

「朝は、お早う」カシャ

朝はお早う?
いい笑顔で何言ってんだ?

けど頭部の装備を上げたその顔は間違いなくあの人。

「あなた、護衛を、頼まれた」

護衛?
となるとこの俺が全っ然気付かなかった…のか?

でも…

「誰に?」


ザ、ザ、ザ…

ザ…
「俺だよ」

「隊長っ‼︎ てかどうなってるんすか?ソークは一体… 」

「…あ~うるせ~~よ落ち着け。今から説明するからこっち来い」
「あ、はいっ」

そう言われ隣に居る例の男を見ると、お先にと手を翳してきた。

混乱してる俺は離れて行く隊長の背中を追った。




「……こ、これは」

そこには副隊長以下今回の伝令班の半数近くが縛られていた。

「ハァ…、二重スパイとはね。恐れ入ったよベルキーさん」

「…はぁはこっちだぜ、先に裏切りやがってよ」
「へっ、そう言えばガラの兄貴は今片目なんだぜ?」

「…アイツの事だからどうせバカやったんだろ。今更都合の良い情を引き出そうとすんじゃねぇよ見苦しい」

「…フン、まぁ良いさ」ゴロ…

縛られた副隊長はそう言って地面に寝転んだ。

けどまだこんなにも裏切り者が…

「…隊長、ウチの隊にも居ますかね…まだ」
「ウチには多分居ないだろ」

ベルキー隊長はサラリと言う。

「思い出せよ、今回の班の人選は副隊長コイツがやっただろ?」

「…えぇはい」
「それを逆に考えてみろ?この場合出来れば半数以上は味方を入れたいんじゃないか?」

そうか…確かに。

「とまぁお前が狙われたのはこんな理由だ。納得したか?」

「…つまり副隊長はビダンの仲間で、隊長も同じく誘われたけど乗った振りをしてた?」
「正確にはコイツらはビダンの仲間の部下だな」

ガラって奴か…

「けどだったら何で今頃?」

もっと早く団長ナーグス達に報せていれば…

「お前も知っての通り俺も最初は普通に捕まったんだよ。副隊長コイツらが俺の昔の知り合いの部下なんて知らなくてな。で、その後ビダンに言われた。" 後から協力してもらうかも知れないから気が向いたら乗ると良い。お前の昔のお仲間達も居るからな " ってな」

そうだったのか。

「けど団長ナーグス達はもう知ってるんですよね?何で今朝も捕まえなかったんです?」

「…おかしいと思わなかったか?」
「何がです?」
「俺達第3隊は性質上非番でもなんでも一箇所には固まらない。なのに全員が一気に捕まった」

言われてみれば…

「って事はだ。まだビダンアイツの駒が潜んでるんじゃ無いかと思っていた。多分守兵エィカー辺りにもな」
「そんな… 」
「それに今朝、連行されていたモサイがミレイン副隊長を襲ったろ?」

そう言うベルキー隊長の視線の先を見ると…

あ、ミレイン副隊長…

ミレイン副隊長は何かを話している。
その先に目を凝らすと何となく…本当に何とな~く人影?が。

" ハーネスあと二個持って来てくれー "

あれはあの2人の分だったのか…

「それで確信した。余りにもこっちの不都合が続くからな。だから街中で気付いてると反乱分子に悟られないよう街を出た。これ以上後手に回らないように。まぁ今頃あっちは第2隊が総浚いしてるさ」

そっか、流石ベルキー隊長だな。
けど第2隊の一斉掃除?2、3人死ぬんじゃないか…

…ご愁傷様。

じゃあ取り敢えずは安心か…って

「…いや、そう言う事なら教えておいて下さいよ。そしたら俺は護衛なんかなくたってソークくらい… 」
「お前がソークより強いことなんて皆んな知ってるさ。けど顔に出るだろ?お前」

ぅ… 


「そう言うことだ」

隊長と仲間達は痛い奴を見る目をした。




スオル(22) 184cm

第2砦街ドーズ第3衛騎士隊5席。
*容貌
やや褐色の肌にスポーツ刈りで右の眉が半分くらい無いが、優しい犬顔をしている為厳つくは見えない。
*性格
生真面目で前向きだが少し抜けている。
情に厚い。






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