49 / 101
▽ 二章 ▽ 明日は今日を嗤い昨日は今日を憫んだ
2-3 Phobia〜 高所良俗違反
しおりを挟む
sideシロ
第3隊が出て二時間半後。
「ヤダヤダヤダヤダッ、絶対無理だっつーーNoォォォォーーーーーー」
ハーネス着けさせるからまさかとは思ったけど、堰き止められた橋から1kmほど川下に移動した先は
『『『ズゴゴォォーーーォォオオオーーー~っっゴッバァッっボォォォオーーーー‼︎‼︎ 』』』
濁流渦巻く一級河川(知らんけど)。
「…………ゴクリ… 」
しかも水面までの高さは優に30m超え。
ぁ~…ぁぁ~アカンて…
こんなボォォとか唸り声上げる川なんて台風でも見たことない。
「シロ、大丈夫。ここずっと水…少ない」
「嘘付けェェいッ‼︎ 」『ぺシッ』
好い顔で言うミレのデコを思わず叩いてしまった…
「……⁈ 」
ミレはデコに手を当て不思議そうにしている。
「…悪い。でもな、これは死ぬんだよ…落ちたら確実に。解るか?な?そこには人間の力を挟む余地なんて無い。ただ死ぬんだよぉぉっ」
マンションだって絶対に四階以下にしか住まないのに。(現在四階住み)
「でもこれ、大丈夫… 」
カシっカシっ
「…ね?」
赤くなったデコのまま、ミレはハーネスの金具を掴んで見せた。
まるで優しく子供をあやすかの様に。
ぐぅぅ~ッ
こんな小娘に宥められる日が再び来ようとはっ…
オレはこの目が眩むような光景に、ある有名な吊り橋を渡った時の屈辱を思い出す。
あの時は琴吹に笑われて引けなくなり渡った。
オムツを履いた赤子のように(らしい)…
けどまたも、またもオレは同じ轍を踏むのか。
しかも今回は
スルルゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と伸びるのは細いワイヤー1本のみ。
距離200mを超えるそれは正に地獄のジップライン。
「こ… 」
こんなのでこの激流の上を渡河するだと?
ズサっ…
膝が折れ地面に突っ伏しそうになる。
『『ゴォォーボボォォォーーーーーゾッバァァーーーッ‼︎ 』』
地面を伝わって来る自然の猛威。
あぁ…
マジで安請け合いすんじゃなかった。
さっきまでは遠目に見えるいくつもの山脈を見て "あれ丹霞山に似ているなぁ" なんて思ってたのに…
「じゃあわたし行くね」
バッ
「…っ⁉︎」
そう言ったミレはネクロマンシーを片手に階段を上がる。
地獄の十……八階段を。
ちょっ⁉︎
ミレさん聞いてっ
その思いは心の中から飛び出して一気に喉を通過した
「…ぐぎぎぃ…ぃ…… 」
けど舌を噛んでギリギリ耐えた。
オレの漢としてのプライドは、女に向ける泣き言を許しはしない。
「いい?シロっこれ」『カシャッ』
とミレは唇を噛み千切りそうなオレに見えるように金具をフック。
そして頷くと同時に
トンッー「シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー… 」ーーーーーーーーーーー
ミレの姿はドンドン小さくなる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…………うぁぁ……ぁ…ぁ…… 」
30m超の高さを滑り進むその様を見ているだけで、オレの琴線ならぬ琴玉は一気に縮み上がる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「バ、バカっ動くなっ… 」
しかも視線の先のミレは途中振り返って、空いてる方の手を振って来る始末。
ぐぅ…くくぅっ……貴様ァァっ
遊びじゃねーんだぞこれは~~~…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…スト…
しかし苛立ちと心配でどうかなりそうなオレを尻目に、ミレはあっという間に対岸まで行き無事到着。
ッゥ~…
変な汗が出てきた。
行くかっ?行くないのかオレ?
行くない?
ぁあぁぁっもうッ
パニック一歩手前のオレを他所に、向こう岸の豆粒は無邪気に手招いている。
クソックソックソックソッ
F◯ck F◯ck F◯ck F◯ck F◯ck‼︎!
スタスタスタスタ…
スタスタスタスタ…
ぉ…ぉぉ…((ドっドっドっドっドっ))
スタスタスタ…
あ、あかん…((ドっドっドっドっドっ))
そう思いながらも慎重に階段を上がっていく。
スタスタスタ…
足…が((ドっドっドっドっドっ))
スタスタ…
…ケツが((ドっドっドっドっドっ))
スタスタ…
…フワフワす…る…((ドっドっドっドっドっ))
8kgほどの車体を持ち、十八段を上り切ったその眺めは正に絶刑。
「…ハっハっハッ」((ドっドっドっドっドっ))
「…ハッハッ」((ドっドっドっドっドっ))
息、息がしにくひぃ… ((ドっドっドっドっドっ))
ヤバ、過呼吸症候群かましそう…
フルフルフル…『カシャッ』
((ドっドっドっドっドっ))
『グイィッ、グイィッ』
ワイヤーを引っ張る感触の覚束さが、逆に…逆?とにかく更なる不安を煽ってくる。
本当に…
本当にこれで良いんだよな?
((ドっドっドっドっドっ))
と…
と…
とととっ
「とうりゃーーーーーーーッ……ー~ッっ… 」
……
…
オンっ「ドリャーーーーーーーッ」
『ドフッ‼︎ 』ーーー「うっワァァぁーーー~あぁ~ぁ~… 」
ズサァッ
「多分死なないんだろっ?」
渾身の飛び蹴りをガラ空きの脇腹にお見舞いしてやったけど、この高さと川の流れからは本当に多分死なない。
ー~~~~…『バシャンっ』
死ねやぁッ
とは言え15mって相当だぞクソダボっ
3~40m見た後だから多少は麻痺してるけど、飛び込み競技でも9mなんだからなっ
そこに人を…しかもいきなり突き落とそうなんざぁ鬼畜の所業だっ
「ジリジリナイフを出してんのもオレには丸見えなんだよっ」
通り魔野郎赦すまじ…
悪
即
ドンッ
例え死んでも心はへっちゃらよ。
借りのある人間への緊急避難だしな。
つーか死ね。
sideスオル
ー~~~~…『バシャンっ』
突進して来たソークは目の前で蹴り飛ばされ、真っ暗な崖下へと消えていった。
「×××××××××××××××××××××× (ジリジリナイフを出してんのもオレには丸見えなんだよっ) 」
そしてソークに向かって何やら言っている男の装備は見たこともない。
「…ぇ?ぁ、アンタあの人か?」
「朝は、お早う」カシャ
朝はお早う?
いい笑顔で何言ってんだ?
けど頭部の装備を上げたその顔は間違いなくあの人。
「あなた、護衛を、頼まれた」
護衛?
となるとこの俺が全っ然気付かなかった…のか?
でも…
「誰に?」
ザ、ザ、ザ…
ザ…
「俺だよ」
「隊長っ‼︎ てかどうなってるんすか?ソークは一体… 」
「…あ~うるせ~~よ落ち着け。今から説明するからこっち来い」
「あ、はいっ」
そう言われ隣に居る例の男を見ると、お先にと手を翳してきた。
混乱してる俺は離れて行く隊長の背中を追った。
「……こ、これは」
そこには副隊長以下今回の伝令班の半数近くが縛られていた。
「ハァ…、二重スパイとはね。恐れ入ったよベルキーさん」
「…はぁはこっちだぜ、先に裏切りやがってよ」
「へっ、そう言えばガラの兄貴は今片目なんだぜ?」
「…アイツの事だからどうせバカやったんだろ。今更都合の良い情を引き出そうとすんじゃねぇよ見苦しい」
「…フン、まぁ良いさ」ゴロ…
縛られた副隊長はそう言って地面に寝転んだ。
けどまだこんなにも裏切り者が…
「…隊長、ウチの隊にも居ますかね…まだ」
「ウチには多分居ないだろ」
ベルキー隊長はサラリと言う。
「思い出せよ、今回の班の人選は副隊長がやっただろ?」
「…えぇはい」
「それを逆に考えてみろ?この場合出来れば半数以上は味方を入れたいんじゃないか?」
そうか…確かに。
「とまぁお前が狙われたのはこんな理由だ。納得したか?」
「…つまり副隊長はビダンの仲間で、隊長も同じく誘われたけど乗った振りをしてた?」
「正確にはコイツらはビダンの仲間の部下だな」
ガラって奴か…
「けどだったら何で今頃?」
もっと早く団長達に報せていれば…
「お前も知っての通り俺も最初は普通に捕まったんだよ。副隊長らが俺の昔の知り合いの部下なんて知らなくてな。で、その後ビダンに言われた。" 後から協力してもらうかも知れないから気が向いたら乗ると良い。お前の昔のお仲間達も居るからな " ってな」
そうだったのか。
「けど団長達はもう知ってるんですよね?何で今朝も捕まえなかったんです?」
「…おかしいと思わなかったか?」
「何がです?」
「俺達第3隊は性質上非番でもなんでも一箇所には固まらない。なのに全員が一気に捕まった」
言われてみれば…
「って事はだ。まだビダンの駒が潜んでるんじゃ無いかと思っていた。多分守兵辺りにもな」
「そんな… 」
「それに今朝、連行されていたモサイがミレイン副隊長を襲ったろ?」
そう言うベルキー隊長の視線の先を見ると…
あ、ミレイン副隊長…
ミレイン副隊長は何かを話している。
その先に目を凝らすと何となく…本当に何とな~く人影?が。
" ハーネスあと二個持って来てくれー "
あれはあの2人の分だったのか…
「それで確信した。余りにもこっちの不都合が続くからな。だから街中で気付いてると反乱分子に悟られないよう街を出た。これ以上後手に回らないように。まぁ今頃あっちは第2隊が総浚いしてるさ」
そっか、流石ベルキー隊長だな。
けど第2隊の一斉掃除?2、3人死ぬんじゃないか…
…ご愁傷様。
じゃあ取り敢えずは安心か…って
「…いや、そう言う事なら教えておいて下さいよ。そしたら俺は護衛なんかなくたってソークくらい… 」
「お前がソークより強いことなんて皆んな知ってるさ。けど顔に出るだろ?お前」
ぅ…
「そう言うことだ」
隊長と仲間達は痛い奴を見る目をした。
スオル(22) 184cm
*
第2砦街第3衛騎士隊5席。
*容貌
やや褐色の肌にスポーツ刈りで右の眉が半分くらい無いが、優しい犬顔をしている為厳つくは見えない。
*性格
生真面目で前向きだが少し抜けている。
情に厚い。
第3隊が出て二時間半後。
「ヤダヤダヤダヤダッ、絶対無理だっつーーNoォォォォーーーーーー」
ハーネス着けさせるからまさかとは思ったけど、堰き止められた橋から1kmほど川下に移動した先は
『『『ズゴゴォォーーーォォオオオーーー~っっゴッバァッっボォォォオーーーー‼︎‼︎ 』』』
濁流渦巻く一級河川(知らんけど)。
「…………ゴクリ… 」
しかも水面までの高さは優に30m超え。
ぁ~…ぁぁ~アカンて…
こんなボォォとか唸り声上げる川なんて台風でも見たことない。
「シロ、大丈夫。ここずっと水…少ない」
「嘘付けェェいッ‼︎ 」『ぺシッ』
好い顔で言うミレのデコを思わず叩いてしまった…
「……⁈ 」
ミレはデコに手を当て不思議そうにしている。
「…悪い。でもな、これは死ぬんだよ…落ちたら確実に。解るか?な?そこには人間の力を挟む余地なんて無い。ただ死ぬんだよぉぉっ」
マンションだって絶対に四階以下にしか住まないのに。(現在四階住み)
「でもこれ、大丈夫… 」
カシっカシっ
「…ね?」
赤くなったデコのまま、ミレはハーネスの金具を掴んで見せた。
まるで優しく子供をあやすかの様に。
ぐぅぅ~ッ
こんな小娘に宥められる日が再び来ようとはっ…
オレはこの目が眩むような光景に、ある有名な吊り橋を渡った時の屈辱を思い出す。
あの時は琴吹に笑われて引けなくなり渡った。
オムツを履いた赤子のように(らしい)…
けどまたも、またもオレは同じ轍を踏むのか。
しかも今回は
スルルゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と伸びるのは細いワイヤー1本のみ。
距離200mを超えるそれは正に地獄のジップライン。
「こ… 」
こんなのでこの激流の上を渡河するだと?
ズサっ…
膝が折れ地面に突っ伏しそうになる。
『『ゴォォーボボォォォーーーーーゾッバァァーーーッ‼︎ 』』
地面を伝わって来る自然の猛威。
あぁ…
マジで安請け合いすんじゃなかった。
さっきまでは遠目に見えるいくつもの山脈を見て "あれ丹霞山に似ているなぁ" なんて思ってたのに…
「じゃあわたし行くね」
バッ
「…っ⁉︎」
そう言ったミレはネクロマンシーを片手に階段を上がる。
地獄の十……八階段を。
ちょっ⁉︎
ミレさん聞いてっ
その思いは心の中から飛び出して一気に喉を通過した
「…ぐぎぎぃ…ぃ…… 」
けど舌を噛んでギリギリ耐えた。
オレの漢としてのプライドは、女に向ける泣き言を許しはしない。
「いい?シロっこれ」『カシャッ』
とミレは唇を噛み千切りそうなオレに見えるように金具をフック。
そして頷くと同時に
トンッー「シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー… 」ーーーーーーーーーーー
ミレの姿はドンドン小さくなる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…………うぁぁ……ぁ…ぁ…… 」
30m超の高さを滑り進むその様を見ているだけで、オレの琴線ならぬ琴玉は一気に縮み上がる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「バ、バカっ動くなっ… 」
しかも視線の先のミレは途中振り返って、空いてる方の手を振って来る始末。
ぐぅ…くくぅっ……貴様ァァっ
遊びじゃねーんだぞこれは~~~…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…スト…
しかし苛立ちと心配でどうかなりそうなオレを尻目に、ミレはあっという間に対岸まで行き無事到着。
ッゥ~…
変な汗が出てきた。
行くかっ?行くないのかオレ?
行くない?
ぁあぁぁっもうッ
パニック一歩手前のオレを他所に、向こう岸の豆粒は無邪気に手招いている。
クソックソックソックソッ
F◯ck F◯ck F◯ck F◯ck F◯ck‼︎!
スタスタスタスタ…
スタスタスタスタ…
ぉ…ぉぉ…((ドっドっドっドっドっ))
スタスタスタ…
あ、あかん…((ドっドっドっドっドっ))
そう思いながらも慎重に階段を上がっていく。
スタスタスタ…
足…が((ドっドっドっドっドっ))
スタスタ…
…ケツが((ドっドっドっドっドっ))
スタスタ…
…フワフワす…る…((ドっドっドっドっドっ))
8kgほどの車体を持ち、十八段を上り切ったその眺めは正に絶刑。
「…ハっハっハッ」((ドっドっドっドっドっ))
「…ハッハッ」((ドっドっドっドっドっ))
息、息がしにくひぃ… ((ドっドっドっドっドっ))
ヤバ、過呼吸症候群かましそう…
フルフルフル…『カシャッ』
((ドっドっドっドっドっ))
『グイィッ、グイィッ』
ワイヤーを引っ張る感触の覚束さが、逆に…逆?とにかく更なる不安を煽ってくる。
本当に…
本当にこれで良いんだよな?
((ドっドっドっドっドっ))
と…
と…
とととっ
「とうりゃーーーーーーーッ……ー~ッっ… 」
……
…
オンっ「ドリャーーーーーーーッ」
『ドフッ‼︎ 』ーーー「うっワァァぁーーー~あぁ~ぁ~… 」
ズサァッ
「多分死なないんだろっ?」
渾身の飛び蹴りをガラ空きの脇腹にお見舞いしてやったけど、この高さと川の流れからは本当に多分死なない。
ー~~~~…『バシャンっ』
死ねやぁッ
とは言え15mって相当だぞクソダボっ
3~40m見た後だから多少は麻痺してるけど、飛び込み競技でも9mなんだからなっ
そこに人を…しかもいきなり突き落とそうなんざぁ鬼畜の所業だっ
「ジリジリナイフを出してんのもオレには丸見えなんだよっ」
通り魔野郎赦すまじ…
悪
即
ドンッ
例え死んでも心はへっちゃらよ。
借りのある人間への緊急避難だしな。
つーか死ね。
sideスオル
ー~~~~…『バシャンっ』
突進して来たソークは目の前で蹴り飛ばされ、真っ暗な崖下へと消えていった。
「×××××××××××××××××××××× (ジリジリナイフを出してんのもオレには丸見えなんだよっ) 」
そしてソークに向かって何やら言っている男の装備は見たこともない。
「…ぇ?ぁ、アンタあの人か?」
「朝は、お早う」カシャ
朝はお早う?
いい笑顔で何言ってんだ?
けど頭部の装備を上げたその顔は間違いなくあの人。
「あなた、護衛を、頼まれた」
護衛?
となるとこの俺が全っ然気付かなかった…のか?
でも…
「誰に?」
ザ、ザ、ザ…
ザ…
「俺だよ」
「隊長っ‼︎ てかどうなってるんすか?ソークは一体… 」
「…あ~うるせ~~よ落ち着け。今から説明するからこっち来い」
「あ、はいっ」
そう言われ隣に居る例の男を見ると、お先にと手を翳してきた。
混乱してる俺は離れて行く隊長の背中を追った。
「……こ、これは」
そこには副隊長以下今回の伝令班の半数近くが縛られていた。
「ハァ…、二重スパイとはね。恐れ入ったよベルキーさん」
「…はぁはこっちだぜ、先に裏切りやがってよ」
「へっ、そう言えばガラの兄貴は今片目なんだぜ?」
「…アイツの事だからどうせバカやったんだろ。今更都合の良い情を引き出そうとすんじゃねぇよ見苦しい」
「…フン、まぁ良いさ」ゴロ…
縛られた副隊長はそう言って地面に寝転んだ。
けどまだこんなにも裏切り者が…
「…隊長、ウチの隊にも居ますかね…まだ」
「ウチには多分居ないだろ」
ベルキー隊長はサラリと言う。
「思い出せよ、今回の班の人選は副隊長がやっただろ?」
「…えぇはい」
「それを逆に考えてみろ?この場合出来れば半数以上は味方を入れたいんじゃないか?」
そうか…確かに。
「とまぁお前が狙われたのはこんな理由だ。納得したか?」
「…つまり副隊長はビダンの仲間で、隊長も同じく誘われたけど乗った振りをしてた?」
「正確にはコイツらはビダンの仲間の部下だな」
ガラって奴か…
「けどだったら何で今頃?」
もっと早く団長達に報せていれば…
「お前も知っての通り俺も最初は普通に捕まったんだよ。副隊長らが俺の昔の知り合いの部下なんて知らなくてな。で、その後ビダンに言われた。" 後から協力してもらうかも知れないから気が向いたら乗ると良い。お前の昔のお仲間達も居るからな " ってな」
そうだったのか。
「けど団長達はもう知ってるんですよね?何で今朝も捕まえなかったんです?」
「…おかしいと思わなかったか?」
「何がです?」
「俺達第3隊は性質上非番でもなんでも一箇所には固まらない。なのに全員が一気に捕まった」
言われてみれば…
「って事はだ。まだビダンの駒が潜んでるんじゃ無いかと思っていた。多分守兵辺りにもな」
「そんな… 」
「それに今朝、連行されていたモサイがミレイン副隊長を襲ったろ?」
そう言うベルキー隊長の視線の先を見ると…
あ、ミレイン副隊長…
ミレイン副隊長は何かを話している。
その先に目を凝らすと何となく…本当に何とな~く人影?が。
" ハーネスあと二個持って来てくれー "
あれはあの2人の分だったのか…
「それで確信した。余りにもこっちの不都合が続くからな。だから街中で気付いてると反乱分子に悟られないよう街を出た。これ以上後手に回らないように。まぁ今頃あっちは第2隊が総浚いしてるさ」
そっか、流石ベルキー隊長だな。
けど第2隊の一斉掃除?2、3人死ぬんじゃないか…
…ご愁傷様。
じゃあ取り敢えずは安心か…って
「…いや、そう言う事なら教えておいて下さいよ。そしたら俺は護衛なんかなくたってソークくらい… 」
「お前がソークより強いことなんて皆んな知ってるさ。けど顔に出るだろ?お前」
ぅ…
「そう言うことだ」
隊長と仲間達は痛い奴を見る目をした。
スオル(22) 184cm
*
第2砦街第3衛騎士隊5席。
*容貌
やや褐色の肌にスポーツ刈りで右の眉が半分くらい無いが、優しい犬顔をしている為厳つくは見えない。
*性格
生真面目で前向きだが少し抜けている。
情に厚い。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!
クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』
自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。
最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる