ミギイロハナレ

neonevi

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▽ 一章 ▽ いつだって思いと歩幅は吊り合わない

1-38 Buy Time〜 焦燥尚早次策自演

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sideミレイン

「うぐゥゥ… 」「チクショー…痛ぇ… 」
「……~っ、…ぁ、… 」

「おいヌミスっ大丈夫かっ」

さて、残りは後ろの煩いバカを入れて4人。


『ザッ』

「「「…っ‼︎ 」」」

「このクソアマぁ……、これでお前にやられた俺の下は9人だぞ。つーかグズグズしてんなっ、ケガ人を早く下げろやっ」

「そっちから襲って来といて被害者ヅラ?第9隊の威勢は戦えない人間相手にだけのようね」

「………言うじゃねーか凶人バスリーちゃんよぉ」

ピクッ

「あれ?その反応…もしか知らねーのかよお前?ブハっブハハハハハハっ、笑かすんじゃねーーよっブフフっマジでっ、はぁ…はぁ…腹イテ。あんなぁ、模擬戦闘で滅茶苦茶するお前ら第2隊が嫌われてんのは周知の事だろ?だがよ、そん中でも特にお前は嫌われてんだぜ?なんとあの副団長リーグスの次だっ、第2位っNo2だよっブアっハハハハハっ」

再度吹き出したバカは大仰に腹を抱える。

凶人バスリーか。


…………ふ…ふふ…

なら今スグ殺ってやろうか。

「おい落ち着けってそれだよそれ、血が登ると見境いないバスリーちゃん。ゥククっ」

クソバカが自分のこめかみを指差して嗤う。
不細工なアホヅラを歪め心底愉しそうに。

どうしてこう品性の低い奴に限って無駄に口が達者なんだろうか。
そう冷静に感じる自分とは別に、フルフルと身体を震わす自分も居る。

" 家族を助けるんだろ?なら… "
"そうそう、ミレ自身も無事じゃないとね "

だけどここで全てを台無しにするわけにはいかない。

フゥーー…

うん。
作戦通りにいこう。

「聞かせろ。お前達はなぜこんな事を?よしんば一時的に衛都フラエを押さえたとしても、すぐ隣はこの国の中心である恒都領だ。結局周囲の砦街ドーズ衛都レィレンから出される鎮圧軍に囲まれて終わりだぞ」

私は少し距離を取ったまま問う。

「……へっ、そんなことは言われなくても分かってんよ」

バカは増援までの時間稼ぎをしたいのか背後に聞き耳を立て

「だからなぁぁっ、フラエを丸ごと頂くんだよっ。こっちゃもうテメェらの想像を超えたとこまで動いてんだよブァ~~カがっ」

そしてその音に安心し得意げに言い放つ。
不細工な顔をこれでもかと歪めて。

想像を超えた?

「っ⁉︎ まさか…お前達ナルトアと組んだのか? 」

「んん~?流石のミレインさんもそこ気になっちゃう?まぁ北のお隣さんは世界最大の覇権国でぇ?今代の元帝もこの間全界統一宣言を出したもんなぁ~ぁ怖い怖い」

私の再度の問い掛けに、ニヘらと浮かべる笑みがおぞましい。

でもこの言い方だとナルトアじゃない?
けどすぐ隣、東のオーダクイムは反ナルトアで結ばれた同盟国。

どういうことだ?と思ったその時

"僕らがここへ来たのは何の為なんだッ"
"なぁミレ、お前は何しにここに来たんだ?"

私を支えてくれる仲間達の声が再度する。


「……団の皆んなは無事だろうな?」

「…チっ、もっと慌てろよ団長ナーグスの娘ぇ。けどどうだろうなぁ~、お前の家族は反抗的だったからなぁ~、どうなんだろうなぁ~?」

「第二砦街ドーズ第9衛騎士隊第四席モサイッ‼︎ 」

「「「「っッ… 」」」」

「言葉には気を付けろ。もし守るべき人が既に居ないのならば、私はただただお前達を殺し続けるぞ。指先一つでも動く限り、この身が果てるまで、1人でも多くを道連れにな」

「カァーーーーっそこだっ。正にそこなんだ」
グシャグシャグシャっ
「若くて育ちが良くて真っ直ぐで実力もありやがるお前がよ、俺は心っ底大っ嫌いなんだよクソッ」

頭髪を掻き乱すモサイは苦しそうに頭を抱え私を見下ろす。

「だって無かっただろ?生まれてこの方こんなに如何にもならなかった事は。だからだよ」

だけどそう言った時のその目…
そこには怒りとは真逆の冷たさしか感じなかった。


『ドザドザっザザっザっザズザっザっドザっ…
ザっザっザザっドザドザっ… 』

そして20人を越える衛士達が街中から門をくぐって現れる。

「ブハっブハハハは…はぁーぁアホらし……。とにかくそう言う事だからもう諦めろや、な?おいっ弓兵が1人2人隠れていやがる。盾持ちを前に出して広がれ」

人数が増えてまた気が大きくなったモサイは、面倒そうに言った。
ゴミ掃除でもする様に。


『ザザッザザッザザッザザっ』

((ミ、ミレインさんっ?)) ((敵っておい… ))
((ご無事だったんだなっ)) 
((けどどうすんだよ)) ((団長ナーグス達さえ…くそ))  

しかし言われて前に出た大盾の衛士レィヴの半数ほどが、私の姿を見て明らかな動揺を見せる。

「おぉおぉ大人気だなぁ…あぁ待て待てバスリーちゃん。お前も何か迷ってるみてぇだけど止めておいた方がいいぜ?何でかって言うとそのうちお前のお母様がお越しになるからだ。ここにな?だから大人し~く待ってなさい」

「「「「「「「「…………… 」」」」」」」」

『ザザザっドダっドザザザズザッザザっドド…
ザザっザザっドザっ』

その時タイミングを見計ったかの様に、20人程の衛士らが門から出て来る。

コイツらは第9隊…

「やっと来たか。…けどアララ、どうやら母親ゲストはまだだなぁザーンネン」

塀の上の柵に肘を掛けるモサイは、すっかりと観覧者気取り。

フゥ…、お母さんが居なくて良かった。
留置施設に入れられてるとしたらまだ時間的に有り得ないけど、でもお母さんがそこに居るとは限らない。

けどそろそろ入れておくか…

「モサイっ」
「あん?」
「もし今、私が諦めて投降するとしたら……、命の保証はあるの?」

「「「「「「「「…………… 」」」」」」」」

私が悔しさを滲ませた掠れ声でそう言うと、周囲の視線が集中した。

「おっと漸くか?マミーマミーってやっぱ母親効果ってのは絶大だなぁ」

バカは勝ち誇った顔をする。

「けどへへ、そう言う交渉ことならまず先に剣を置けよ。それと……、オイっ草むらに隠れてる奴っ、ミレインが投降するからお前も出て来いやぁっ」

息を吸い込んだモサイは暗闇の平原に叫んだ。

「……………ん~~?出て来ねーな。金で雇った兵隊か?まぁ有象無象は後から殺るとしてミレイン、投降するんなら早く剣を置け」



ジリ…

どうする?
剣を手放してすぐ拘束しようとしてきたら?

「なぁ、俺の気は長くないぜ?」

「………分かっ…た… 」カシ…

私は怒りに震える声を出来るだけ落としてから、そう言ってゆっくりと愛剣を地面に置く。

「モサイ、私と家族の…人質全員の命の保証をしろ。その約束がされないのならば意味は無い。このまま死ぬまで戦うのみッ」
ガシっ

そう言って屈んだまま再度愛剣を握りしめ、ヤツラを睨み付ける。

「「「「「「「…ぅっ⁉︎ 」」」」」」」

けれどこれは本心。
もしシロが失敗した場合、私にはそれしか出来なくなってしまう。

「まぁ隊長からは "ミレインオマエ以外には極力手を出すな" って言われてるからそれは良いんだけどよ、お前は違ぇんだよ立場が」

そう言ったモサイは辺りを見ると

「んじゃぁ~そこのぉ~~お前っ」

そう言ってその中の1人を指差す。

「っ… 」

指されたのは大盾持ちの衛士。

「そうだ、お前だお前。なぁ…お前はそんなにこの小娘が大事なのか?」

「……当たり前だっ」

何となく顔を覚えているその衛士は、周りと頷き合ってから強く答えた。

「なんでだ?」
「ッ…巫山戯るなっ。この第二砦街ドーズと管轄下の街々を束ねる団長ナーグスの娘さんだぞっ」

「……ふ~ん、らしいですよミレインさん。良かったですねぇ。んなら、ホイっ」

ーーー『カラっカラン… 』

モサイはその衛士の足下に短剣を放り投げた。


「「「「「「「「…………… 」」」」」」」」

「じゃお前とその横とそっちのお前。お前ら2人も揃って頷いてたもんな?だから大事なミレインの代わりにしてやるよ。死ね」

「「「「「「ッんなっ⁉︎⁉︎ 」」」」」」

「そしたらミレインの安全は保証する。俺の命に誓ってな。ホラホラ大事な大事なナーグチュの娘さんの為に身体を張るチャンスだぜ?嬉しいだろ?」

「「「…………… 」」」

固まる3人。


コイツ…

前々から人格に問題があるとは思ってだけど、本当に腐ってる。


時間はどれだけ経った?

いえ、どこまで時間を稼げば良いの?

覚悟を決めて臨んだ私だったけれど、自分のせいで無駄に命を散らせられる訳がない。


「……~~っ」

私の中に迷いと焦燥感が燻ってくる。

シロ…







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