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▽ 一章 ▽ いつだって思いと歩幅は吊り合わない
1-36 Rabies〜 MEN黙躍女
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sideマハト
「ホァーーーーーーー~~~アァ~~ー~~ンゥ… 」
コキコキっボキっ
「おいっどんけ長い欠伸だよそれっ」
「…いやよぉ何回やっても夜番の見張りのは眠くなるだろ?だからぐぐっと気合いを込めたんだよ」
「いや抜けまくりだよアホ」
辛辣な相棒。
だが顔は笑っている。
「おいっ、お前ら喋るのは良いけど気を抜き過ぎんなよっ」
「へぇへぇ」
門の上から聞こえる小ウルセェのには振り返る気も起きねぇ。
けどそうだな、一層のこと獣でも集まって来ればもしかして…
((なぁアロン… ))
((獣か?それは厳しいぞマハト))
瞬時に察した相棒は前を向いたまま答えた。
普段から俺達が狩って回っているこの街周辺に、いくら夜と言えど都合良く獣が寄って来るはずがないか…
((けど、このまま待ってて良いのか?))
((良くはない。良くはないが、……… ))
そう言ってアロンは目を瞑った。
まったく以ってクソったれな状況だ。
と言っても団長以下幹部を押さえられた今は従う他ない。
「バハハっ、また俺の勝ちだぁ~」
「ウゲェっ、イカサマじゃないよな?」
チッ…
人質さえ居なきゃすぐにでも叩き潰してやるのによ…このクソ雑魚共。
" 団員諸君には10日間指示に従ってもらいたい。大人しくしていれば人質に危害を加えない事も約束する "
にしても何故10日なんだ?
それに…
((なぁアロン。あんな若いのばっか引き連れてって、アイツら何をするつもりだと思う?))
先日団の半数近くを従え衛都へと出立した反乱兵だが、その中身は新兵も含めた若い衛士が中心。
その衛都と言えば現在約半数の衛士が恒都の定期招集に出ており手薄っちゃ手薄。
と言ってもまだ第二砦街の倍以上の衛士が残っていて、しかもそんな所に若い衛士を無理矢理連れて行ったって何が出来るワケもない。
((…今の所想像もつかないな。だが蜂起したのはあの第9隊隊長ビダンだ。何かしらの目的が必ずあるだろうな))
頭の良い相棒にも分からないか。
けど確かに厄介だ。
外敵との戦闘では俺たち衛士各隊の中継と補助を担い、砦街防衛では守兵を束ねまとめて動く隊長の中でもキレ者と名高い男。
たった一隊でここまで手際良くこの第二砦街を制圧した手腕からも、聞き及んでいた評価に偽りはなかった。
周到なアイツがここまでの事を起こしたってことはアロンの言う通りロクでもないことが絶対にある。
例えば他国と手を結んでいる…とか。
それにあの人は無事なのか?
いや第9隊の兵隊程度に捕まる人じゃない。
けど1人きりじゃ…
『ザリっザリっ』
当たり所がない俺は地面を踏みしだく。
(……心配だよな。今頃何処に居るんだろうな?))
((…あの人のことだ。どうやってか衛都を目指してんだろ))
((けど衛都を始め街道は全て塞がれているぞ?この前森で殺られたヤツらも偶々出て来た中層の獣のせいだったみた…… ))
((だなぁ…ってどうした?獣か?))
突如ピリついたアロンは構えを取り
((…分からん…が、何かが近付いて来てる))
そして異変の先へ向け槍を動かした。
…
…
視線を凝らす平原は真っ暗な闇に浸されて見通せない。
が…
確かに動く生物らしき気配が近付いて来ている。
ゆっくり。
ゆっくりと。
けどあれは……
((人、だよな… ))
((…おそらくな))
とりあえず獣でないことには安堵するも、こんな真夜中に訪れるのは只事の訳がないと警戒する。
((ケガ人か何かか?どうする?報せるか?))
((………… ))
何も答えないままに目を眇める相棒見て、俺も目標の方へと集中する。
そして近付いて来るにつれて人影がだんだんと鮮明になり、シルエットから女か子供だと判る距離になった時…
((サっサっ…カサっ、カサっ、サっ、サっ))
夜風も無い静かな闇の中を、それが近付く足音だけが僅かに響いた。
「「…………… 」」
「おい、どうした?」
俺達が漂わせる張り詰めた緊張感は、遊戯に興じる上のヤツらにまで伝わった。
「なんだ?どうかしたのか?」
「いや、アイツらが… 」
そんな声を聞きつつも俺達は目標から目を離さない。
それは暗闇の中を変わらずにユラユラと進み続けているから。
サ…カサ…、ズサ…サ…
徐々に鮮明になって来る足音と
ズザ、ザ、ズザ、ザ…
浮かび上がるシルエット。
…
…
何者だ?
その時空に敷かれた雲間からふいに微光が漏れ落ちて、辺りを疎らながらに照らし出した。
その一つは目標のすぐ先。
「「「「「「……………」」」」」」
限界まで引き絞られる緊張の糸。
ズザ、ズザ…
ズザ…
っ⁉︎ …あれはまさか…
「ミレイン、…さんっ?」
「……ー~… 」
思わず声が出た俺と呆然とする相棒。
「…っ、おいっあの女を捕らえろっ。殺しても構わねぇっ」スゥゥーーっ
『ピィーーーーッピィーーーーーッ』
そんな中いち早く動き出したのは見張り台のバカ。
「「…ッ」」ザザッ
俺は相棒と目を合わせてすぐミレインさんへと走り寄る。
ザザっザザっ…
「ミレインさんご無事で何よりですっ。もしかして救援…が…… 」
淡い期待に視線を動かすが誰も居ない。
「父…団長達は?」
「団長ら幹部は未だ捕らえられたままです。…抵抗しなければ安全は保証するってことで」
「ッっ……つまり皆んな無事…なのね。良かったぁぁ」
「いヨォっミレイン、お帰りぃ~~って今頃どうしたぁ?」
心底ホッとしたミレインさんを煽るバカ。
「チックソがぁ」
「待てマハト」
「おいおいお前ぇら俺様をイラつかせんじゃねぇよ。もう忘れたのか?人質…どうなっても知らねぇぞォお?」
((……ド…ド…ザドザっザザっドザドザっ))
「…っと、やっとこさ来やがったか。オラ、早くそいつを取り押さえろ。抵抗は無駄なんだからよ」
街の方から向かって来る複数の足音に、バカがニヤついて手首を振る。
ンの野郎ぉッ
ギュゥゥ…
けどっ…
「っ…ミレイン、さんっ、今は… 」
「今はおとなしく従って下さい。俺達がミレインさんに手出しはさせ…⁉︎ 」
冷静を欠きかけた俺を引き継ぎアロンがそう言って近づこうとした瞬間、ミレインさんの雰囲気が一気に険しいものとなる。
「あなた達とは戦いたくない。でも私は捕まる為に戻って来たわけじゃないの。だから邪魔をするのならッ」
「「~ーッ」」
ミレインさんの目付きは本気だ。
どうする?
困った俺が隣を伺うと、相棒もどうしていいか分からないよう。
「チィっお前らくっそ使えねぇ退いてろッ。おーーーーいテメェらーーー早く来いやーーーっ、懸賞金は早いもの勝ちだぞぉーーっ」
ドザっザザっザザザっザっザっ…
近場で警戒中だっただろう10人近くがドタドタと急ぎ足でやって来た。
敵はまだまだ集まって来るこの状況。
一体どうしたらいいんだっ
俺は…
sideミレイン
3、5…7…
…9人か。
「ホラホラ団長様のご息女のお帰りだ。皆んなでしっかりお出迎えしてやんだぞ」
門の中からぞろぞろと出て来た男達は、そのまま取り囲む様にジリジリと前に出て来た。
『ザッーーズザ… 」
私は分かりやすく大きく距離を取る。
「へっ」「…あぁ」
すると私が臆したと感じたのか、左の2人が表情を緩め手を伸ばしながら寄って来た。
ーー『スドッ‼︎ 』
瞬間片方の男の胸に矢が突き立つ。
「…は? …っ、ゥぅ…」
ドサ…
刺さった男は何も言わず崩れる。
「「「「「「っんなっ⁉︎ 」」」」」」
「おいっ茂みに仲間がいるぞっ、矢に警戒しろぉっ」
指揮官ぶったバカは慌てふためいて喚き、驚愕した男達が揃って矢の飛んできた方を向いた。
バカがッ『ズザッ』
と同時に地面を蹴り
ーーシュパッ
寄って来てたもう1人の首をすれ違い様に撫で斬り、更に
『ザッダダッ』
ーザシュッ、ーージュバッ
その後ろで唖然とする男2人の手首を斬りつける。
カランカランッ
「ぁッ、グア…ァァ手首がぁぁっ」ブシャァッ
「ガァっ…くそ… 」ボタボタボタ…
槍を落とした2人は手首を押さえつつ膝をつく。
「サヨナラ」
「ひィぃっ⁉︎ 」「…ぁ、っ」
私の振り上げた剣を見て目を見開く2人。
ダタッ
「コノヤロ『ドシュッ‼︎ 』っ⁉︎ …グッ…ぅ」
それをさせまいと槍を伸ばした男の脇腹に、さっきとは別の方向から飛んだ矢が突き刺さる。
「「うわぁっ⁉︎ 」」「ヤベェっ」
「バカやろぉぉッ‼︎ ミレインさえ殺りゃ終わんだよっ、ビビんじゃねぇぇえっ……てか人質がどうな… 」
『ザダタッ』
視界の端でバカを捉えながら右端の男を目掛け駆け
「うわぁぁあっ」ブンっ
そして中途半端に振り出された槍を避け…
脇の下を『ズクッ』突きっ
「ぅブっ⁉︎ 」
『グシュゥッ』斬るっ
「ギィヤァーーッ‼︎ …ぁあゥ… 」ズシャっ
「うわぁァァぁあっ、テメっミレインっまた斬りやがったなぁああっ」
門の上で頭を抱えるバカ。
「フゥゥーーーーーッ」
これで6人が倒れた。
バラけたコイツら程度に遅れをとる私じゃない。
"…ミレイン。陽動のお前が戦えば、人質のいくらかは無事で済まないかも知れない "
「そう、私さえ殺せば終わりだッ」
『ヒュンッヒュヒュヒュンッ 』
「なればこの首、取れるものなら取ってみろォォオッ‼︎ 」
だからゴメン皆んな…
私もこの命をここに賭けるから。
今一度裂帛の気合いを張り巡らせ、私はこの身全てをただ一対の剣と化す。
sideヒロ
ザっザっザっザっザ…
((ふぅぅ~~~~っ… ))
((ドクっドクっドクっドクっドクっ… ))
((ふぅぅ~~~~っ… ))
二射とも命つ…中ぅぅーー~
ゴクっゴクっゴクっ
「ぷふぅぅっ… 」ポイっー~カサ…
溢すほどの勢いで飲み切った水筒を後ろの草むらに放り置く。
"この子大丈夫?かなりヤバ目な感じすんだけど"
流石だよシロ。
ミレの実力はヤバいどころじゃなかった。
((ドクっドクっドクっドクっドクっ… ))
けどこっちも予定通りだし、僕の脈打つ鼓動も悪くない。
うんやれるっ
シロ、人質救出は頼んだよ。
ザッ
…
…
さぁ、次はどいつだっ
「ホァーーーーーーー~~~アァ~~ー~~ンゥ… 」
コキコキっボキっ
「おいっどんけ長い欠伸だよそれっ」
「…いやよぉ何回やっても夜番の見張りのは眠くなるだろ?だからぐぐっと気合いを込めたんだよ」
「いや抜けまくりだよアホ」
辛辣な相棒。
だが顔は笑っている。
「おいっ、お前ら喋るのは良いけど気を抜き過ぎんなよっ」
「へぇへぇ」
門の上から聞こえる小ウルセェのには振り返る気も起きねぇ。
けどそうだな、一層のこと獣でも集まって来ればもしかして…
((なぁアロン… ))
((獣か?それは厳しいぞマハト))
瞬時に察した相棒は前を向いたまま答えた。
普段から俺達が狩って回っているこの街周辺に、いくら夜と言えど都合良く獣が寄って来るはずがないか…
((けど、このまま待ってて良いのか?))
((良くはない。良くはないが、……… ))
そう言ってアロンは目を瞑った。
まったく以ってクソったれな状況だ。
と言っても団長以下幹部を押さえられた今は従う他ない。
「バハハっ、また俺の勝ちだぁ~」
「ウゲェっ、イカサマじゃないよな?」
チッ…
人質さえ居なきゃすぐにでも叩き潰してやるのによ…このクソ雑魚共。
" 団員諸君には10日間指示に従ってもらいたい。大人しくしていれば人質に危害を加えない事も約束する "
にしても何故10日なんだ?
それに…
((なぁアロン。あんな若いのばっか引き連れてって、アイツら何をするつもりだと思う?))
先日団の半数近くを従え衛都へと出立した反乱兵だが、その中身は新兵も含めた若い衛士が中心。
その衛都と言えば現在約半数の衛士が恒都の定期招集に出ており手薄っちゃ手薄。
と言ってもまだ第二砦街の倍以上の衛士が残っていて、しかもそんな所に若い衛士を無理矢理連れて行ったって何が出来るワケもない。
((…今の所想像もつかないな。だが蜂起したのはあの第9隊隊長ビダンだ。何かしらの目的が必ずあるだろうな))
頭の良い相棒にも分からないか。
けど確かに厄介だ。
外敵との戦闘では俺たち衛士各隊の中継と補助を担い、砦街防衛では守兵を束ねまとめて動く隊長の中でもキレ者と名高い男。
たった一隊でここまで手際良くこの第二砦街を制圧した手腕からも、聞き及んでいた評価に偽りはなかった。
周到なアイツがここまでの事を起こしたってことはアロンの言う通りロクでもないことが絶対にある。
例えば他国と手を結んでいる…とか。
それにあの人は無事なのか?
いや第9隊の兵隊程度に捕まる人じゃない。
けど1人きりじゃ…
『ザリっザリっ』
当たり所がない俺は地面を踏みしだく。
(……心配だよな。今頃何処に居るんだろうな?))
((…あの人のことだ。どうやってか衛都を目指してんだろ))
((けど衛都を始め街道は全て塞がれているぞ?この前森で殺られたヤツらも偶々出て来た中層の獣のせいだったみた…… ))
((だなぁ…ってどうした?獣か?))
突如ピリついたアロンは構えを取り
((…分からん…が、何かが近付いて来てる))
そして異変の先へ向け槍を動かした。
…
…
視線を凝らす平原は真っ暗な闇に浸されて見通せない。
が…
確かに動く生物らしき気配が近付いて来ている。
ゆっくり。
ゆっくりと。
けどあれは……
((人、だよな… ))
((…おそらくな))
とりあえず獣でないことには安堵するも、こんな真夜中に訪れるのは只事の訳がないと警戒する。
((ケガ人か何かか?どうする?報せるか?))
((………… ))
何も答えないままに目を眇める相棒見て、俺も目標の方へと集中する。
そして近付いて来るにつれて人影がだんだんと鮮明になり、シルエットから女か子供だと判る距離になった時…
((サっサっ…カサっ、カサっ、サっ、サっ))
夜風も無い静かな闇の中を、それが近付く足音だけが僅かに響いた。
「「…………… 」」
「おい、どうした?」
俺達が漂わせる張り詰めた緊張感は、遊戯に興じる上のヤツらにまで伝わった。
「なんだ?どうかしたのか?」
「いや、アイツらが… 」
そんな声を聞きつつも俺達は目標から目を離さない。
それは暗闇の中を変わらずにユラユラと進み続けているから。
サ…カサ…、ズサ…サ…
徐々に鮮明になって来る足音と
ズザ、ザ、ズザ、ザ…
浮かび上がるシルエット。
…
…
何者だ?
その時空に敷かれた雲間からふいに微光が漏れ落ちて、辺りを疎らながらに照らし出した。
その一つは目標のすぐ先。
「「「「「「……………」」」」」」
限界まで引き絞られる緊張の糸。
ズザ、ズザ…
ズザ…
っ⁉︎ …あれはまさか…
「ミレイン、…さんっ?」
「……ー~… 」
思わず声が出た俺と呆然とする相棒。
「…っ、おいっあの女を捕らえろっ。殺しても構わねぇっ」スゥゥーーっ
『ピィーーーーッピィーーーーーッ』
そんな中いち早く動き出したのは見張り台のバカ。
「「…ッ」」ザザッ
俺は相棒と目を合わせてすぐミレインさんへと走り寄る。
ザザっザザっ…
「ミレインさんご無事で何よりですっ。もしかして救援…が…… 」
淡い期待に視線を動かすが誰も居ない。
「父…団長達は?」
「団長ら幹部は未だ捕らえられたままです。…抵抗しなければ安全は保証するってことで」
「ッっ……つまり皆んな無事…なのね。良かったぁぁ」
「いヨォっミレイン、お帰りぃ~~って今頃どうしたぁ?」
心底ホッとしたミレインさんを煽るバカ。
「チックソがぁ」
「待てマハト」
「おいおいお前ぇら俺様をイラつかせんじゃねぇよ。もう忘れたのか?人質…どうなっても知らねぇぞォお?」
((……ド…ド…ザドザっザザっドザドザっ))
「…っと、やっとこさ来やがったか。オラ、早くそいつを取り押さえろ。抵抗は無駄なんだからよ」
街の方から向かって来る複数の足音に、バカがニヤついて手首を振る。
ンの野郎ぉッ
ギュゥゥ…
けどっ…
「っ…ミレイン、さんっ、今は… 」
「今はおとなしく従って下さい。俺達がミレインさんに手出しはさせ…⁉︎ 」
冷静を欠きかけた俺を引き継ぎアロンがそう言って近づこうとした瞬間、ミレインさんの雰囲気が一気に険しいものとなる。
「あなた達とは戦いたくない。でも私は捕まる為に戻って来たわけじゃないの。だから邪魔をするのならッ」
「「~ーッ」」
ミレインさんの目付きは本気だ。
どうする?
困った俺が隣を伺うと、相棒もどうしていいか分からないよう。
「チィっお前らくっそ使えねぇ退いてろッ。おーーーーいテメェらーーー早く来いやーーーっ、懸賞金は早いもの勝ちだぞぉーーっ」
ドザっザザっザザザっザっザっ…
近場で警戒中だっただろう10人近くがドタドタと急ぎ足でやって来た。
敵はまだまだ集まって来るこの状況。
一体どうしたらいいんだっ
俺は…
sideミレイン
3、5…7…
…9人か。
「ホラホラ団長様のご息女のお帰りだ。皆んなでしっかりお出迎えしてやんだぞ」
門の中からぞろぞろと出て来た男達は、そのまま取り囲む様にジリジリと前に出て来た。
『ザッーーズザ… 」
私は分かりやすく大きく距離を取る。
「へっ」「…あぁ」
すると私が臆したと感じたのか、左の2人が表情を緩め手を伸ばしながら寄って来た。
ーー『スドッ‼︎ 』
瞬間片方の男の胸に矢が突き立つ。
「…は? …っ、ゥぅ…」
ドサ…
刺さった男は何も言わず崩れる。
「「「「「「っんなっ⁉︎ 」」」」」」
「おいっ茂みに仲間がいるぞっ、矢に警戒しろぉっ」
指揮官ぶったバカは慌てふためいて喚き、驚愕した男達が揃って矢の飛んできた方を向いた。
バカがッ『ズザッ』
と同時に地面を蹴り
ーーシュパッ
寄って来てたもう1人の首をすれ違い様に撫で斬り、更に
『ザッダダッ』
ーザシュッ、ーージュバッ
その後ろで唖然とする男2人の手首を斬りつける。
カランカランッ
「ぁッ、グア…ァァ手首がぁぁっ」ブシャァッ
「ガァっ…くそ… 」ボタボタボタ…
槍を落とした2人は手首を押さえつつ膝をつく。
「サヨナラ」
「ひィぃっ⁉︎ 」「…ぁ、っ」
私の振り上げた剣を見て目を見開く2人。
ダタッ
「コノヤロ『ドシュッ‼︎ 』っ⁉︎ …グッ…ぅ」
それをさせまいと槍を伸ばした男の脇腹に、さっきとは別の方向から飛んだ矢が突き刺さる。
「「うわぁっ⁉︎ 」」「ヤベェっ」
「バカやろぉぉッ‼︎ ミレインさえ殺りゃ終わんだよっ、ビビんじゃねぇぇえっ……てか人質がどうな… 」
『ザダタッ』
視界の端でバカを捉えながら右端の男を目掛け駆け
「うわぁぁあっ」ブンっ
そして中途半端に振り出された槍を避け…
脇の下を『ズクッ』突きっ
「ぅブっ⁉︎ 」
『グシュゥッ』斬るっ
「ギィヤァーーッ‼︎ …ぁあゥ… 」ズシャっ
「うわぁァァぁあっ、テメっミレインっまた斬りやがったなぁああっ」
門の上で頭を抱えるバカ。
「フゥゥーーーーーッ」
これで6人が倒れた。
バラけたコイツら程度に遅れをとる私じゃない。
"…ミレイン。陽動のお前が戦えば、人質のいくらかは無事で済まないかも知れない "
「そう、私さえ殺せば終わりだッ」
『ヒュンッヒュヒュヒュンッ 』
「なればこの首、取れるものなら取ってみろォォオッ‼︎ 」
だからゴメン皆んな…
私もこの命をここに賭けるから。
今一度裂帛の気合いを張り巡らせ、私はこの身全てをただ一対の剣と化す。
sideヒロ
ザっザっザっザっザ…
((ふぅぅ~~~~っ… ))
((ドクっドクっドクっドクっドクっ… ))
((ふぅぅ~~~~っ… ))
二射とも命つ…中ぅぅーー~
ゴクっゴクっゴクっ
「ぷふぅぅっ… 」ポイっー~カサ…
溢すほどの勢いで飲み切った水筒を後ろの草むらに放り置く。
"この子大丈夫?かなりヤバ目な感じすんだけど"
流石だよシロ。
ミレの実力はヤバいどころじゃなかった。
((ドクっドクっドクっドクっドクっ… ))
けどこっちも予定通りだし、僕の脈打つ鼓動も悪くない。
うんやれるっ
シロ、人質救出は頼んだよ。
ザッ
…
…
さぁ、次はどいつだっ
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