ミギイロハナレ

neonevi

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▽ 一章 ▽ いつだって思いと歩幅は吊り合わない

1-14 続1st Smile〜 破顔一緒に〔P2〕

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sideヒロ

『ジャポ…、ジャプ』
「ハァ、ハァ、ハァ…… 」

クソ…



見上げる空はおんなじ色……か。

でも考えナシの自分が招いたことだからなぁ…
仕方がない。

うあっ…‼︎⁈

「ーー~ッ、っツ… 」

僕は大きなやらかしに気が付いた。

オチてる場合じゃない。
シロが…シロがもし追って来たら…

僕は、僕はどうしようもないバカだっ


『ジャブっジャブっジャボっジャプっ』
「ヒロ、ちがうっ」

違う?

そんな時水音を立てながら近付いて来るミレ。


『ジャボジャボっジャプっ』
「………、………、……… 」

やがて僕の側まで来たミレは、浜辺の方と周囲をキョロキョロと見て居場所を少しずつズラす。

そして少し腰を落としたかと思うと

『ジョバァッ』ーーー『バシャンっ‼︎ 』

うおっ⁉︎ 

ミレはその場で跳び上がり中空を指差した。

スっゲ……
めっちゃくちゃ跳んだぞ今…

いやっそれはどうでもいい。
どうやら来た場所と言うか、出入り口?は頭よりも上らしい…

ん?でもミレはどうやって来たんだ?

「ヒロ、バシャバシャっ」

あぁっ潮位か。

ハテナが頭の周りを囲んだ僕を見て、ミレは海面に掌をつけた後その掌を頭の上まで掲げた。

たしかにここに来た時少し落ちたな。
夜だったし一瞬のことだったせいか状況が全然把握出来ていなかった。

ははは…抜けてたな。

" いつもね "

意地の悪い声が聞こえる。

「…………ふぅーー~~… 」

でも良かった。
次の満潮の日がいつなのかは分からないけど、戻れるって言うことならとりあえずシロのことは大丈夫か。

なら僕は目の前のことに集中しよう。
うん。





『ザザァーーーーーーっザザァーーーーン… 』

もぐもぐもぐもぐ…

もぐもぐもぐもぐもぐ…

シロの用意してくれたミレのリュックから、惣菜パンやオニギリを出して食べる。

ゴクっゴクっゴクっ
「ぷフゥ~っ」

静かな海を眺めての朝ご飯は食べ慣れてるいつもの味だけど、それが眠れなかった事とこれからの不安を少しだけ和らげてくれた。

「ご馳走様」
「ごちそうさま」

ミレが食べ終わるのを待ってのこのご馳走も。

さて、ここまで来たんだからもう遠慮はしない。

「あのさミレ、ミレのこと教えて」

僕の覚悟を悟ってかミレは真剣な表情で頷く。

「ぁ…あ、と、ミレの… 」

言葉に詰まりながらもミレは身振りを交え話し出す。


「「…………… 」」

でも何を言ってるのかほとんど分からなかった。


言葉の壁ぇ…


……


2時間後。


「~…でミレ、あそこ、やま… 」
「山の向こうの町?」
「そう、むこういく」

「…そう言うことか…… 」

未だ鬼気迫る表情のミレは、木の棒を持ったままふぅふぅと息を吐き出しながら頷いた。

理解するのにかなり苦労しつつ判ったことを整理する。

まずミレ達の町が何者かに襲撃を受け彼女の家族含め皆んなが捕えられてしまった。
ミレは助けを呼ぶ為に1人逃がされたらしいけど、敵に見つかり追われてしまった。
それから3日間?逃げ続けた結果この海辺まで追い詰められ、最終的に海へ飛び込んで逃げた先が日本だった…と。

で、ミレが2日後に拘ってこっちに戻ろうとしてたのは、ミレたちを襲撃した犯人達が遅くても2週間後には別の町を襲うらしく、それまでに襲撃それを伝えなくてはならないから。
そしてその別の町はあの険しそうな山々を越えた先にあり、そこまではここから8日かかる…と。

8日ねぇ…

「………ぅ~ん」

ちょっとピンと来ないけどたしか成人が1日で歩ける距離は30kmくらいなんて聞いたことある。
ってことは徒歩だと1分60mくらいだから1時間で4km弱……8時間っ⁉︎ 










気が遠くなった…

部屋から実家までの20km弱ですら徒歩なんて考えたこともないのに…
しかも山越え?
それを1週間ぶっ続けなんて200パー無理。

それに…

「ねぇミレ?僕としては間に合うか分からないまま山越えして町を目指して『ガリガリガリ』結局間に合わないで全部ダメになるってのは嫌なんだよね『ガリっガリ』

僕は地面に描かれた山の向こうまでの線を引いた後、その線にバツを引く。

「…ダメっ、ミレいく。ミレのしごとっ」

しかしミレはその町に危険を伝える役目を果たさなければならないと必死に訴える。

「うん、だけどさ……だからこそまずはさ、ミレの町で『ガリガリっ』ご家族の無事を確かめに行こうよ。そして出来たら助け出す『ガリガリっ』

僕は地面に描かれたミレの解説図を棒で指しながら言う。

「そしてそこで馬なりを調達して次の町に伝える『ガリガリガリっ』難しいかもだけど、僕はミレの家族を『ガリガリ』このまま放っては行けないよ」

「………………… 」

言い終えた僕はミレの顔を覗くけど、彼女は俯いてしまって動かない。










ん?伝わってない?

((……いいかな?……ミレのたすけても…?))

僕がもう一度伝え直そうとした時、彼女はボソボソと呟いた。
迷い、戸惑い、罪悪感、色々なものが重なり合った重圧プレッシャーに抗うように。

……だよね。

「僕がそうしたいんだ『ドッ‼︎ 』…ぅっ⁉︎ 」

その瞬間ミレが僕に抱き着いた。

強く強く…

『ギュゥゥ… 』
「………っ、…ぅ」

勢いのままされた抱擁それはあまりに強くて苦しかったけど、肩を震わせる彼女には何も言えなくて…

「…………って、待っミレっ、ちょっ…やっぱ苦っ…しっ… 」

が、結局耐え切れず踠いて引き離す。

ななななにこの子っ
腕力超ツヨっ

すると慌てふためいた僕を見て、彼女は半ベソのままでクシャリと笑った。


「ぁっ…… 」




はじめてだ。




はじめてだったんだ…




僕が彼女の心からの笑顔を見たのは。

そしてその笑顔は一陣の風みたく僕の中を吹き抜けると、僕の中の不安や焦りをいとも容易く吹き飛ばしてしまった。

全部、綺麗さっぱりと…





シュ…『ギュギュッ』

干していた靴を履き、靴ヒモをキツ目に引き絞る。

「よし、行こう」
「うん」

まずはここから3日程の距離にある町まで行ってミレの家族を助ける。

今の僕たちには何の迷いも無い。

やってやるさっ






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