雌汁  ― お股つたうは嬉し涙か はたまた尿か ―

余次元

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閑話2

霜次郎のバイト

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「急に来れないって言われても、困るんだよね‥」
「春香ちゃんと二人あわせて、ってなると予約も入っているんだから、対応できないでしょ‥」

 電話の向こうの声が怒気を孕んでいるのが、わかる。
 春香が強姦の被害にあった日、結衣はバイト先の霜次郎に欠席の電話をした。
 これまでも急な用事で休んだことはあったのだが、ふたり同時というのがまずかったのだろう。普段見ることのない霜次郎の怒りに結衣は、バイトの欠席を諦めてしまっていた。実家の太い結衣とは違う。結衣は霜次郎のバイトからの収入に生活を頼っていた。弱っている春香のことは心配だったが、数時間のことだと諦めて、霜次郎の元に向かうことになった。

 結衣と春香のバイトは、元々は人が足りない時にだけとお願いされていたコンパニオンの仕事だった。その手配をしていたのが霜次郎で、最初に紹介してくれたのは春香の叔母、梅子だった。その後に、霜次郎から割りのいいバイトがあると誘いを受けたのが、自分のおしっこをペットボトルに詰めるバイトだった。
 相談した梅子には止められたのだ。それでもコンビニバイトの三倍は稼げるという触れ込みに、嫌がる春香を無理やり誘って始めてしまったのだった。


 毎週一回、霜次郎から渡された錠剤を呑み、個室に入って渡された容器に排泄する。最後にインスタントカメラで容器と一緒に写真を撮っておしまい。当然、顔は隠してだ。
 それで、一週間分のバイト代が賄える。

 錠剤は利尿剤という話だった。
 呑めば実際に尿意が高まっていくのを感じたが、それだけではなかった。排尿行為自体がじんわりと気持ちよさを感じる、意識が下半身にもっていかれるような感覚があった。
 熱を帯びる陰核に恐る恐る指をあてると、痛み似た快感が結衣の身体の芯で跳ねる。それがスイッチになったように尿道が緩む。初めて呑んだ時、堰き止められた濁流のように押し寄せる尿意に、結衣の意識は間に合わなかった。

 この仕事を始めてから、排尿の快感が癖になっているのを実感している。あの薬は、なにか中毒作用があるようなものではないのか。それとなく、訪ねると、市販の催淫剤をベースに漢方を幾つか混ぜてあるのだ、という話だった。結衣の表情から不安を読み取ったのだろう「市販の薬ベースだからねー、中毒性とかはないと思うよ」とフォローにもならないフォローが入る。

「警察には言わないでねぇ」

 霜次郎が冗談めかして言う、その口ぶりに結衣は「やべぇクスリなのだ」と確信していた。
 実際には素人が調剤したことによる薬機法違反程度のものだったのだが、その確信が春香と結衣が圭司の凶行時に警察に駆け込まない理由のひとつになっていた。



 バイト先に着く。それは、霜次郎の借りているマンションの一室だった。

「春香ちゃん、しばらくバイト来れないみたいなんだけど、結衣ちゃん少し穴埋めしてもらえないかなぁ」

 先ほどの電話で聞こえた怒気は抑えられてはいたが、霜次郎の取り繕った声は結衣を締め上げる。結衣からの返事もないというのに、霜次郎は「お願い」をたたみかけた。
 
「それから、さぁ。これは、お願いなんだけれど、ちょっとステップアップしたお仕事があって、お話しだけでも聞いてくれないかなぁって‥」

 霜次郎は部屋の入口まで回り込み、鍵をかけた。カチリという小さな金属音が沈黙に響く。その残響に、今からの話は断れはしないのだ、と結衣は悟った。

(キャバクラのバイトの方が百万倍マシだったな)

 霜次郎からの”これからの話”を聞きながら結衣は、自身の双眸が涙に潤むのを感じていた。
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https://novel18.syosetu.com/n1700im/なろうのリンクです。基本的には同じものなんですが、なろうは前書き後書きがかけるので、雑文をこちらで書いたりしています。あとは、修正をたまにするのを両方に反映させるのが面倒くさく感じて、なろうだけが直っていたりします。すみません
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