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第一章

第29話

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「はい、クーズ!クーズ!クーズ!
クズは死ぬならどっちがいい?火炙り、串刺し、腹裂き、斬首!
はやく、選べ!選べ!選べ!」

「やめっ、やめてくれよおぉお!
た、たすけ、誰かぁ!助けてくれぇ!」

僕は今、汚ならしい盗賊紛いの格好のクズを豚の丸焼き方式に縛り付けて、その前で笑顔で処刑方法を選んでいる。いやあ、どうしてこうなったんだかなぁ。


少し前、冒険者ギルドでの更新が終わった僕はクエストを受けて生産世界に戻った。アリアを誘うためだ。ちょうど良く今はアリアしか居ないので、生産世界の拡張を行おうと思ったのだ。

生産世界の範囲は無限だけれど、細かく調べるとそのままの意味で無限というわけではないと分かった。
簡単に言ってしまえば成長範囲が無限ということらしい。ゲームとかやってると新しいエリアには行ったときに画面がロードされて固まるような感覚があったので調べたら、奥に進むごとにステータスポイントが減っていた。拡張は無限だが、そのままでは世界の範囲は有限だということらしい。範囲の表記は成長範囲ということだった。それの方が都合がいい部分もあるからいいんだけど。

で、アリアを連れてく理由。それは、拡張というよりアップデートとかアップグレードとかいうものをするため。

生産世界って世界っていう割にフラット過ぎるんだよね。どこまでも平らで山や川すら無い。マコトさんが作った海に見えるぐらい広い湖だけだから、ステータスポイントで範囲を広げられるなら他のこともできないかなぁ、と探していたらどうやら誰も居ない状態だと勝手にステータスポイントが吸われてそういった景観を作ってくれるらしい。中にいる状態だとひたすらフラットに広げていくというちょっとめんどくさい仕様だった。

ステータスポイントが吸われるのは痛いけど、戦うだけでそこそこのポイントが貯まっていくだけで使わないのも確か。ここに来るまでに何度か戦って見ない間にステータスポイントが1515まで貯まってたから、これを機に世界のレベルアップをやろうかな、と思っている。

それならステータスポイントを貯めながら歩くのが良いだろうということで、大規模な魔物駆除クエストが募集されているのでそこに参加してみた。ついでにそこにアリアを連れていこうと思っている。忌み子だのなんだの、くだらないことを言ってくる奴がいたら、ね。

で、案の定下らない奴が居たわけだ。どうやら、勝手に鑑定を使ったようだ。

「おいおい、気持ち悪いガキ連れてる奴がいるぜ。ありゃあ、忌み子だな」
「まじかよ。うっわ、キモッ!大人しく死んどけば良かったのによ。祟られたらどうするよ。あんなやつのせいで死ぬなんて真っ平だよな」
「おい兄ちゃん、殺せないんなら俺が殺しといてやろうか」

「忌み子にしては顔もいいみたいだしな。十分楽しんでから殺してやるからお互い幸せだと思うぜ!」

「「違えねぇや!ギャハハハ!!」」


まあ、大変かわいいのは確かなことだ。それはいい。それはいいが…

「それ以外が問題だよなァ…」


その後、俯いて震えていたアリアをなんとか励ましていたら掃討作戦の始まりが告げられた。

この作戦に乗じて、あいつらは潰しておくことにする。それにはあちらが襲いかかってくれた方が都合がいいのだが、こっちを見てニヤついている様子からしても都合良く進めることが出来そうだ。
背丈や格好だけで言えば僕が嘗められるのも仕方がない。だからこそああいうのが集まってきて容赦なくブチ殺せるのだから、僕のこれも使い用のある特徴と言えるだろう。

さて、この以来では最低100の指定害魔獣を討伐し、証明部位を提出することで依頼達成となる。が、それは本人が討伐したという証明をはっきりさせることはできないために、弱い冒険者を襲う冒険者狩りが行われていることも暗黙の了解として知られている。

依頼の対象に比べて実入りが大きいために初心者冒険者やさっきのような態度の悪さによって他の割りのいい仕事を受ける条件が満たせないやつはここにいることが多い。



そして、こいつらは僕たちを狩りの対象にして、無様にも失敗した愚かなやつらということだ。

「さて、何だったかな。楽しんでから殺すから幸せだろうとかだったかな。ねえ」

「許して!ゆるしてええぇぇ!」

「忌み子、なんて古くさい考えだよねぇ。皆がそれを言いふらすことによって周囲に当たり前と認識されれば称号として認定されるなんてことは良く分かったんだけどさ。それ以外にも称号に増やす方法があるらしいじゃん」

「いやだぁ!あついぃぃイィィ!」

「忌み子の烙印だっけかな。それを親類縁者もしくは邪教であっても何らかの神に仕えている限り、それを刻むことが出来るだっけかな」

「自分より弱いもの、という制限はあるけどね」

「それも、教会国家だけの制限で今では形骸化して宗教的な理由より民衆の結束を強めるスケープゴートがほとんど。ホント、最低だよね~」

「やめ、やめてくれよぉ!軽い冗談だったんだよぉ!」

「で、背中側にある焚き火の中で暖めてるのがその烙印の焼きごての模造品何だけど。これを…」

ジュウゥゥ…

「ギャアァッ!!」

肉の焼ける音と生臭い香りが立ち込める。盗賊紛いの奴らの背中に「裁きの紋様」と呼ばれる烙印が刻まれた。

アリアの綺麗な背中には無かった紋様だ。

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