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第一章

第28話

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 おはようございまーすっと。まだ朝というには暗すぎる時間帯だが、ここに潜っていれば時間も潰せるだろう。アリアの様子も見ておきたいし。なんだかんだ一人にさせちゃったからな。

 そんなわけで、in 生産世界。相も変わらず人のいない町といった様相だ。原動くんからすると建築のゲームでもしているような感覚だからな。いつか住む人が増えたりするなら使うこともあるだろうし、何より何もないよりかはある方が見映えが良いからどんどん造って欲しい。

「それで、アリアは…あそこか」

 マコトさんが作った毒沼でスキルの練習をしているアリアを見つけた。

「やほ、アリア。調子はどうだい?」

「あ、オーマ様。悪くないです。というより、悪くなりようが無いことはよく知ってますよね」

「会話の定型みたいなものだろう?」

「そうですか。それで、何しに来たんですか?」

「アリアの様子を見に来たのと、ステータスの確認とスキルの試し打ちに来たんだ。一応、ここから離れたところでやるけど、出来れば家に戻っておいて。何があるか分からないから。原動くんの家なら大抵は大丈夫だろうからね」

「分かりました。この水は汲んでいっても良いですかね?」

「良いと思うよ。後でマコトさんには自分で言っておいてね」

「はい。それでは。あ、用事が済んだら一度戻ってきてください。ごはん作って待っておきますから」

「はーい、ありがと。いってきまーす」


 よし。それじゃあ、ステータスの確認していこう。



≪ステータス≫
名前:悪鬼 桜満
種族:悪鬼族
年齢:17
職業:観察者・暗殺者

レベル:2

筋力:5000
耐久:100
知力:100
精神:7000[操作不可]
敏捷:100

ステータスポイント:50

【固有スキル】
『無個性Lv.1』
『融合』
『四字熟語』
『生産世界の創造者』
『災いの悪鬼』
『災厄の目覚め』


 あらぁ、やっぱり種族変わってますねぇ。人間辞めちゃってますねぇ。スキルもちょっと変わってるけど。



『融合』
削除する必要なんてない。手間をかけて合成する必要なんてない。例え必要ないと思うものでも合わされば気にする必要なんてない。

『災厄の目覚め』
人を辞め、それを自覚した。人であれば存在した善なる才は、悪鬼となり厄を呼び込む業と化した。



 スキルの変更はこれだけ。『削除・合成』の制御が効かなくなって、『災厄の目覚め』は害を広げる類いの能力が目覚めやすくなるらしい。特に変わったことはないからどうでもいいか。


 まぁ不老不死の時点で人間を辞めたことに後悔はない。ただ面倒くさいことが一つ。人間至上主義の国に入る時だ。当分この国に滞在するつもりとはいえ、国によっては人族かそれ以外かを探知する罠が張ってあるらしい。そこにも行ってみたいが、やっぱり面倒なことになるのはだるいから穏便に行きたい。

「ていうか、そういや使ったことなかったな、これ。『災いの悪鬼』」


 軽い気持ちで使ってみる。

「いてっ、あててててて」

 こめかみと額に痛みを感じる。撫でてみると角が生えていた。こめかみからこめかみまで9本の角が。

「はぁー。ありきたりではあるけどね、鬼に角っていうのは。スキル発動で出し入れできるのは良いけど」

 他にも色々できるようだが、ここで使うものでもない。脅しとか悪戯に使える能力セットって感じだ。

「他に変化は特になし。あるとすれば」

 悪意の加速的増加ってところだな。どんなやつにでも手当たり次第に厄を振り撒きたい気分になる。高笑いしたい気分だし、頭の鈍痛がやけに遠のいていく気がする。

 有り体にいえば、めっちゃ興奮する。

 一応アリアから離れておいて良かった。近くにアリアが居たら、被害にあっていたかもしれない。それをしたら、アリアのことをめちゃくちゃに気に入っているマコトさんにミンチにされていただろうし、その後の関係に亀裂が走ったり、僕個人の社会的地位が底辺を越える底辺におちることになっていただろう。そうならなくて良かった。

 まあ、例え抑えることができなかったとしても、アリアのステータスを突破することは不可能だったので傷をつける心配はほとんどないんだが。その後に心に傷を負うかもしれないからそうならないに越したことはないよね。

 アリアなら何も気にしないどころか、意外と肝が据わっているので弱みをしっかり握られて、逆にこっちが服従させられる気もする。ご主人様、わたくしはあなたの忠実なる奴隷です。なんつってね。

 何はともあれ、スキルの試しとステータス確認が無事に出来て良かった。一応、今度町の外に出て悪党にでも試しておくことにしよう。

 取り敢えず気分を落ち着けてから、アリアとご飯を食べることにしよう。

 
〔あ、お帰りなさいオーマ様。ご用は済みましたか?〕

「うん。大したことでもないからね。すぐ終わったよ」

〔そうですか。これからまた出かけるんですよね?〕

「そうだね。夜になったら一度ここに来ようと思ってるけど」

〔それならこれ持っていってください。お弁当です。中身はサンドイッチだけなのですが〕

「お、ありがと。じゃ、行ってくるね。それとも一緒に行く?」

〔いえ、忌子とされるのはどこでも一緒なのでなるべく外には行きたくないんです〕

「そっか。じゃあ何かお土産買ってくるから楽しみにしててね。行ってきます」

〔はい。行ってらっしゃいませ〕


 やっぱり、外に一緒に行くのは怖いだろうな。例え死なないとしても。僕にはあんまりわかんないけど、みんながみんな敵に見えるってのは苦しいんだろうな。

 敵はみんな殺してしまえばいいと、物騒な考え方しているせいでアリアの優しい考えが分からないのもあるのかも。

 いつか何も気にならなくなって、自分の意思で歩けるようになるといいな。

 他人の意思や行動でねじ曲げられた欲求ほど、後悔を生むものは無いんだから。

 少なくともその後悔を彼女は得るべきではない。得させてはならない。あれは苦しく足を止めさせ、息を詰まらせる。

 僕だってもう二度と感じたくはない。だから好きに生きるって決めているんだ。

 二度と友達を仲間を壊してはならない。壊すなら徹底的に敵を壊して、のんびり生きるんだ。そのためならいくらでも殺していこう。
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