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四章
別離と出会い その9
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混雑した町の中心地に、極上の香りがただよう。
「肉の宮殿」というグリーンヘイブンでは繁盛している料理屋がこの店だった。
豪奢な名前に反して店構えは地味である。冒険者たちが多い、「幻想へと続く道」の一角に存在していて、質実剛健とした店が建ち並ぶ路地に良く溶け込んだ店だった。
店の中はである。
いつでも活気に満ちていて、地味な門構えとは真逆の雰囲気があった。
調理人たちの情熱的な掛け声と鍋のカチンカチンという音が響き渡り、刺激的な音の波紋が耳を喜ばせる。彼らがひとたび肉を鍋に落とすと、熱気とともに噴き出した香りが室内全体を満たす。それはまるで、香りの洪水が店内を覆うかのようで、誰もがその匂いに心を奪われる。
初めての客はすぐに「肉の宮殿」の良さを理解する。
彼らの瞳は料理を見つめるときだけでなく、その満足感を他人に伝えるためにも輝いている。新規の客も、店内の熱烈な歓迎に心を開き、早速その美食の魔法にかかってしまうのだ。
とは言っても、やはり食事の時間帯を過ぎると店は暇そうである。
この静かな時間帯を狙ってくる客もいた。
今もまた一人の老人が店の入り口をくぐってきた。
そして、彼がいつも座る席に着いて、いつもの注文をする。
するとおかしなもので、彼の周囲には若干の人だかりが出来る。
みんなから「親父さん」と言われて親しまれている彼は、年の頃であれば、六十手前と言ったところか。
昼時を過ぎた頃に肉の盛り合わせを平らげて、名物の一つであるエール酒を飲み干すだけあって、まだまだ元気なようである。
彼はリーランド・パウゼッタという名前である。
元々は詩人をしており、今は「黒猫冒険物語 パウゼッタ商会」の主人であり、店番をしているリュセットの祖父である。
彼は「肉の盛り合わせ」や「エール酒」と並ぶこの店のちょっとした名物であり、彼の話を聞きたいがためにこの時間にやってくる者も多かった。
「で、親父さん、今日はブレイトハートのどんな話を聞かせてくれるんだ?」
中肉中背の労働者風の男が訊ねた。
しかし、リーランドはすぐには答えない。
しばらく考えたような仕草を見せてから、おもむろに訊ね返した。
「新しい顔が混じっているな。ブレイトハートという男の説明をまずその人たちのためにしようか…」
まるで、現役の詩人だった頃のようにもったいぶって全員の顔を眺めるリーランド。
皆々期待したような顔つきで、この老人に注目していた。
「結論から言うと、ブレイトハートは詩人の話を聞いたり物語を読めば、皆が彼のようになりたいと感じる人物だ。しかし、実際のブレイトハートを見ていると、『俺はブレイトハートにならなくていいかな』と思えてしまう。そんな人物だ」
「めちゃくちゃな人物だったんだろ? いつも話聞いてて面白いよな?」
それを誰かが口にすると皆が同意したように頷いた。
「ブレイトハートの最後を見たんでしょう? 最後ってどうだったの?」
ある女性が言った。
そこで今日はその話をしようとリーランドは思った。
「ブレイトハートの最後に話す前にみんながよく知っている話があるな? これは歴史としてこの国に残る話だが、《ヴィクトリオ・アルカディア戦争》。あの話のことは知っているか?」
「知ってるよ。ブレイトハートがエメラルドリーフのお姫様をさらって戦争になったってやつだろ?」
「まあ、大まかにはな。あれも実は裏があるんだぞ」
エメラルドリーフというのはシルバートーンの隣国だ。
そこの麗しき王女殿下の一人をブレイトハートが拉致し、その返還に応じなかったために戦争にまで発展した。まだ生きている当事者たちの中には「かの五年の戦い」や「五年戦争」などと呼ぶ者もいた。
その戦争の話をし始めた。しかも世間で思われているような「ブレイトハートが狂った」などという認識がある話である。みなが「最後について」訊ねたのにいきなりこんな話をしだしたので、さすがに周りもきょとんとしていた。
「みんなはどれくらい。彼のその理由について知っているだろうか? まず知らないはずだ。もう三十年ほど前の話だ。国のことなれば、世間に話は回ってこないものだ。だからブレイトハートは最後はおかしくなったと思っている人もいるだろう」
それまでの活躍は詩となり、物語となり、演劇にまでなっている。
だが、この件に関してはまったくといって良いほど話の筋が見えない。
それは先に彼が話したとおりの事情もあった。
「ブレイトハートってのはな、詩人を引き連れて旅をしていたんだ。俺はその一人だった。彼の話がここまでたくさん残っているのは、彼自身が俺たち詩人に歌わせていたからだよ。だから彼は有名になり、英雄としての名声を得た。でもな…」
そこまで話した彼の表情は心なしか暗かった。
「ブレイトハートのやつがアリア…いや、ソフィア・アルカディアを拉致した件…あれは正直、話していて気持ちが良いものではなかった。そして、聞いても楽しい話ではない。だからみんなあの時彼のそばにいた詩人たちはみんな口をつぐんでいるんだ」
そう言って老人は静かに懐かしい者でも見るかのような表情になった。
「…とても可愛らしいお姫様だったよ」
「だから拉致したくなったのか?」
だれかが茶々を入れたが、その声は無視された。
「彼女はとてつもない虐待を受けていた。それこそ口にするのがはばかられるような…だ。体中は傷だらけ。人としての尊厳も王族としての尊厳も奪われた等しい扱いを受けていた。
偶然にもそのことを知ったブレイトハートは彼女を拉致して逃げた」
静かに厳かに老人が言うと、皆一様に黙ってしまった。誰も茶々を入れる者はいなかったし、厨房から聞こえるわずかな音がその場に届くくらいに場は静かになった。
「ブレイトハートはその王女に『アリア』という名前を与えた」
ブレイトハートが可哀想なお姫様をさらって、アリアという名前を与えたことくらいはみんな知っている。だが、その王女様がそんな扱いをされていたなどと言うことは知らないはずだ。
もっとも王族が虐待と言っても、庶民たちには良く勝手が分からないだろう。
王族なんてのは幸せな暮らしをしているとみんなは盲目的に思っているからだ。
「彼はその娘を連れて旅をした。ある日、その娘が魔物の虜囚となってしまった。その魔物との戦いでブレイトハートは消されてしまったんだ」
「消されたって? 死んだんじゃないの?」
「…いや、文字通り消えてしまったんだ。俺は目の前で見ていた。ブレイトハートは相手に一矢報いて、相手の一部を破壊したが、次の一撃の時に本当に溶けるようにしてなくなってしまったんだ」
やはりみんな静かだった。
しばらくその状態が続いたが、次の瞬間にはこんな言葉が飛んできた。
「でも親父さんはどうして助かったんだ? その魔物はどうなった? ブレイトハートが消えてしまったんなら、親父さんも魔物に殺されてしまうじゃないか?」
当然しごくとも言える疑問だろう。現に彼は生きてこうして「肉の宮殿」通っているのだ。
「消えてしまったんだよ。その魔物も。ブレイトハートと同じように溶けるようにしてその場からいなくなったんだ」
ようやく運ばれてきたエール酒を口にしてから、リーランドは言った。
「それでつまり、そのお姫様を助けようとしてブレイトハートは消えたのか…」
「そういうことだ。そして、そのことはほとんど語られることはない。なぜならば、ブレイトハートはこの話は詩にしなくていい。詩にしないでくれと頼んだからだ」
その話とは《ヴィクトリオ・アルカディア戦争》の発端となった話のことだ。
それを話にしてしまうと、彼女…ソフィア・アルカディア…。アリアのことを話してしまうことになる。
そうすることで、彼女の足取りが追われてしまうし、元の場所に連れ戻されるかも知れない。それに詩となった自分の境遇を聞いて彼女の気分が良くなるはずもない。
諸々の気遣いがあって、彼はそのように詩人たちに申しつけていたというわけだ。
そういった事情があって、アルカディア王女の消息は歴史からぱったりと消えてしまっている。
「ちなみに王女様はどんな虐待を受けていたんだ?」
「飯屋でする話ではないな。ちなみにうちの妻に話したことがあるが、店の裏に吐きに行ってたぞ。あと一緒にいた女詩人はショックを受けて度々そのことを思い出して泣いていた」
そのことを告げると、皆が顔を見合わせた。そして、それ以上聞いてくる者はいなかった。それぞれが納得してくれたらしい。
「でも素敵な話ね。つらい目に遭っていたお姫様を助けるなんて」
「まあ、そこはやっぱりブレイトハートってことなんだろうな!」
「でも親父さん、そんなにブレイトハートはいいやつなのに、なんで親父さんは度々彼の悪口を言うんだい?」
それぞれが口々に言った後、良く聞かれる質問が飛んできた。
親父さんと呼ばれた元詩人、リーランドの表情は途端に渋くなった。
「…ある時、アルカディア姫の名前をなんで『アリア』という名前にしたのかと聞いたことがあるんだよ」
「ほう…」
「で、どんな理由なんだ?」
「ブレイトハートの野郎はにこやかな顔でこういった。『俺、昔から猫が好きで、子供の頃いた街の路地に黒い野良猫がいたんだ。すげーカワイイ猫でそいつにアリアって名前を付けていたんだ。いっつも腹を空かせていてあいつ見ているとそれを思い出したからだ』と言っていたんだよ」
彼は苦々しさここに極まると言った表情で言ってから、一気に酒杯のエール酒を飲み干すのだった。
それを聞いた一同は、やや複雑な面持ちでリーランドの親父さんが酒を飲むのを見ているだけだった。
「肉の宮殿」というグリーンヘイブンでは繁盛している料理屋がこの店だった。
豪奢な名前に反して店構えは地味である。冒険者たちが多い、「幻想へと続く道」の一角に存在していて、質実剛健とした店が建ち並ぶ路地に良く溶け込んだ店だった。
店の中はである。
いつでも活気に満ちていて、地味な門構えとは真逆の雰囲気があった。
調理人たちの情熱的な掛け声と鍋のカチンカチンという音が響き渡り、刺激的な音の波紋が耳を喜ばせる。彼らがひとたび肉を鍋に落とすと、熱気とともに噴き出した香りが室内全体を満たす。それはまるで、香りの洪水が店内を覆うかのようで、誰もがその匂いに心を奪われる。
初めての客はすぐに「肉の宮殿」の良さを理解する。
彼らの瞳は料理を見つめるときだけでなく、その満足感を他人に伝えるためにも輝いている。新規の客も、店内の熱烈な歓迎に心を開き、早速その美食の魔法にかかってしまうのだ。
とは言っても、やはり食事の時間帯を過ぎると店は暇そうである。
この静かな時間帯を狙ってくる客もいた。
今もまた一人の老人が店の入り口をくぐってきた。
そして、彼がいつも座る席に着いて、いつもの注文をする。
するとおかしなもので、彼の周囲には若干の人だかりが出来る。
みんなから「親父さん」と言われて親しまれている彼は、年の頃であれば、六十手前と言ったところか。
昼時を過ぎた頃に肉の盛り合わせを平らげて、名物の一つであるエール酒を飲み干すだけあって、まだまだ元気なようである。
彼はリーランド・パウゼッタという名前である。
元々は詩人をしており、今は「黒猫冒険物語 パウゼッタ商会」の主人であり、店番をしているリュセットの祖父である。
彼は「肉の盛り合わせ」や「エール酒」と並ぶこの店のちょっとした名物であり、彼の話を聞きたいがためにこの時間にやってくる者も多かった。
「で、親父さん、今日はブレイトハートのどんな話を聞かせてくれるんだ?」
中肉中背の労働者風の男が訊ねた。
しかし、リーランドはすぐには答えない。
しばらく考えたような仕草を見せてから、おもむろに訊ね返した。
「新しい顔が混じっているな。ブレイトハートという男の説明をまずその人たちのためにしようか…」
まるで、現役の詩人だった頃のようにもったいぶって全員の顔を眺めるリーランド。
皆々期待したような顔つきで、この老人に注目していた。
「結論から言うと、ブレイトハートは詩人の話を聞いたり物語を読めば、皆が彼のようになりたいと感じる人物だ。しかし、実際のブレイトハートを見ていると、『俺はブレイトハートにならなくていいかな』と思えてしまう。そんな人物だ」
「めちゃくちゃな人物だったんだろ? いつも話聞いてて面白いよな?」
それを誰かが口にすると皆が同意したように頷いた。
「ブレイトハートの最後を見たんでしょう? 最後ってどうだったの?」
ある女性が言った。
そこで今日はその話をしようとリーランドは思った。
「ブレイトハートの最後に話す前にみんながよく知っている話があるな? これは歴史としてこの国に残る話だが、《ヴィクトリオ・アルカディア戦争》。あの話のことは知っているか?」
「知ってるよ。ブレイトハートがエメラルドリーフのお姫様をさらって戦争になったってやつだろ?」
「まあ、大まかにはな。あれも実は裏があるんだぞ」
エメラルドリーフというのはシルバートーンの隣国だ。
そこの麗しき王女殿下の一人をブレイトハートが拉致し、その返還に応じなかったために戦争にまで発展した。まだ生きている当事者たちの中には「かの五年の戦い」や「五年戦争」などと呼ぶ者もいた。
その戦争の話をし始めた。しかも世間で思われているような「ブレイトハートが狂った」などという認識がある話である。みなが「最後について」訊ねたのにいきなりこんな話をしだしたので、さすがに周りもきょとんとしていた。
「みんなはどれくらい。彼のその理由について知っているだろうか? まず知らないはずだ。もう三十年ほど前の話だ。国のことなれば、世間に話は回ってこないものだ。だからブレイトハートは最後はおかしくなったと思っている人もいるだろう」
それまでの活躍は詩となり、物語となり、演劇にまでなっている。
だが、この件に関してはまったくといって良いほど話の筋が見えない。
それは先に彼が話したとおりの事情もあった。
「ブレイトハートってのはな、詩人を引き連れて旅をしていたんだ。俺はその一人だった。彼の話がここまでたくさん残っているのは、彼自身が俺たち詩人に歌わせていたからだよ。だから彼は有名になり、英雄としての名声を得た。でもな…」
そこまで話した彼の表情は心なしか暗かった。
「ブレイトハートのやつがアリア…いや、ソフィア・アルカディアを拉致した件…あれは正直、話していて気持ちが良いものではなかった。そして、聞いても楽しい話ではない。だからみんなあの時彼のそばにいた詩人たちはみんな口をつぐんでいるんだ」
そう言って老人は静かに懐かしい者でも見るかのような表情になった。
「…とても可愛らしいお姫様だったよ」
「だから拉致したくなったのか?」
だれかが茶々を入れたが、その声は無視された。
「彼女はとてつもない虐待を受けていた。それこそ口にするのがはばかられるような…だ。体中は傷だらけ。人としての尊厳も王族としての尊厳も奪われた等しい扱いを受けていた。
偶然にもそのことを知ったブレイトハートは彼女を拉致して逃げた」
静かに厳かに老人が言うと、皆一様に黙ってしまった。誰も茶々を入れる者はいなかったし、厨房から聞こえるわずかな音がその場に届くくらいに場は静かになった。
「ブレイトハートはその王女に『アリア』という名前を与えた」
ブレイトハートが可哀想なお姫様をさらって、アリアという名前を与えたことくらいはみんな知っている。だが、その王女様がそんな扱いをされていたなどと言うことは知らないはずだ。
もっとも王族が虐待と言っても、庶民たちには良く勝手が分からないだろう。
王族なんてのは幸せな暮らしをしているとみんなは盲目的に思っているからだ。
「彼はその娘を連れて旅をした。ある日、その娘が魔物の虜囚となってしまった。その魔物との戦いでブレイトハートは消されてしまったんだ」
「消されたって? 死んだんじゃないの?」
「…いや、文字通り消えてしまったんだ。俺は目の前で見ていた。ブレイトハートは相手に一矢報いて、相手の一部を破壊したが、次の一撃の時に本当に溶けるようにしてなくなってしまったんだ」
やはりみんな静かだった。
しばらくその状態が続いたが、次の瞬間にはこんな言葉が飛んできた。
「でも親父さんはどうして助かったんだ? その魔物はどうなった? ブレイトハートが消えてしまったんなら、親父さんも魔物に殺されてしまうじゃないか?」
当然しごくとも言える疑問だろう。現に彼は生きてこうして「肉の宮殿」通っているのだ。
「消えてしまったんだよ。その魔物も。ブレイトハートと同じように溶けるようにしてその場からいなくなったんだ」
ようやく運ばれてきたエール酒を口にしてから、リーランドは言った。
「それでつまり、そのお姫様を助けようとしてブレイトハートは消えたのか…」
「そういうことだ。そして、そのことはほとんど語られることはない。なぜならば、ブレイトハートはこの話は詩にしなくていい。詩にしないでくれと頼んだからだ」
その話とは《ヴィクトリオ・アルカディア戦争》の発端となった話のことだ。
それを話にしてしまうと、彼女…ソフィア・アルカディア…。アリアのことを話してしまうことになる。
そうすることで、彼女の足取りが追われてしまうし、元の場所に連れ戻されるかも知れない。それに詩となった自分の境遇を聞いて彼女の気分が良くなるはずもない。
諸々の気遣いがあって、彼はそのように詩人たちに申しつけていたというわけだ。
そういった事情があって、アルカディア王女の消息は歴史からぱったりと消えてしまっている。
「ちなみに王女様はどんな虐待を受けていたんだ?」
「飯屋でする話ではないな。ちなみにうちの妻に話したことがあるが、店の裏に吐きに行ってたぞ。あと一緒にいた女詩人はショックを受けて度々そのことを思い出して泣いていた」
そのことを告げると、皆が顔を見合わせた。そして、それ以上聞いてくる者はいなかった。それぞれが納得してくれたらしい。
「でも素敵な話ね。つらい目に遭っていたお姫様を助けるなんて」
「まあ、そこはやっぱりブレイトハートってことなんだろうな!」
「でも親父さん、そんなにブレイトハートはいいやつなのに、なんで親父さんは度々彼の悪口を言うんだい?」
それぞれが口々に言った後、良く聞かれる質問が飛んできた。
親父さんと呼ばれた元詩人、リーランドの表情は途端に渋くなった。
「…ある時、アルカディア姫の名前をなんで『アリア』という名前にしたのかと聞いたことがあるんだよ」
「ほう…」
「で、どんな理由なんだ?」
「ブレイトハートの野郎はにこやかな顔でこういった。『俺、昔から猫が好きで、子供の頃いた街の路地に黒い野良猫がいたんだ。すげーカワイイ猫でそいつにアリアって名前を付けていたんだ。いっつも腹を空かせていてあいつ見ているとそれを思い出したからだ』と言っていたんだよ」
彼は苦々しさここに極まると言った表情で言ってから、一気に酒杯のエール酒を飲み干すのだった。
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