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四章
別離と出会い その8
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『時空のコンパス』を探してくれとアリアは言われたのだ。
つまるところ、このフローズン・シャドウホールにはその品物が存在するという疑惑があり、アリアはその調査のためにここにやってきた。
彼女が仕事を無事に遂行できるかどうかの目付役としてエリックがやってきた。
そして、自分は旧知のランディに声をかけて協力を依頼した。
彼にはなにも話していなかった。
ただ自分の援助をする役割として雇ったのだ。
彼はそれを受け入れてここまで付き合ってくれた。
その過程で、彼はフローズン・シャドウホールで起きている奇妙な現象の源泉を突き止めようと、古老や詩人に話を聞きに行っていた。
そこで『時空のコンパス』が存在するということを突き止めた。
そのようにアリアは認識したのだが、それは違っていたようだ。
では彼はいったい、どうして「空間が歪んでいる」などと口にしたのだろうか。
「ランディ、あなたはなにを知ってしまったの?」
「どういうことだ?」
困ったような顔つきでアリアの問いに答えた。
やはり何かが変だった。
彼とは一回情報を出し合って、物事を整理する必要があるかも知れない。
こういった認識のずれが命を失う事態に発展することはなんとしてでも避けたい。
「なにかあなたの知っていることと私が知っていることは違うのかも知れない」
アリアがそれを口にすると、ランディは左手で目の辺りを押さえた。
「確かにそうかも知れないな…」
「ねぇ、話してくれない? あの日、あなたが一人でなにを調べてなにを知ったのかを…」
「そうしよう…」
ランディはそれを言って、適当な場所に腰を下ろした。なんだか、観念したような疲れたような表情にも見えてしまった。
アリアはそれに同道した。
「あの日、俺はエリックと君に手紙を残した。その後、『パウゼッタ商会』に向かった。リュセットなら顔が広いと思った。内容はそうだな…『この街に伝説や伝承の類いに詳しい人物はいないか。《古代の遺物》に詳しいやつならなおのこと良い』と」
「それで当たりを付けることが出来たのね?」
「ああ。意外なやつがいた。しかもすぐに会えるとのことだった。そして、彼と会い、フローズン・シャドウホール内で起きている事案で、なにか心当たりがないかどうかを訊ねた」
つまりは『時空が歪んでいる』ことに対して、過去に似たような事案がなかったかをランディは訊ねたのだ。
「それで…?」
アリアがのぞき込むように言うと、ランディは眉をひそめてこう言った。
「『クロノスフィア』…」
それはアリアが聞いたことがない単語だった。
つまるところ、このフローズン・シャドウホールにはその品物が存在するという疑惑があり、アリアはその調査のためにここにやってきた。
彼女が仕事を無事に遂行できるかどうかの目付役としてエリックがやってきた。
そして、自分は旧知のランディに声をかけて協力を依頼した。
彼にはなにも話していなかった。
ただ自分の援助をする役割として雇ったのだ。
彼はそれを受け入れてここまで付き合ってくれた。
その過程で、彼はフローズン・シャドウホールで起きている奇妙な現象の源泉を突き止めようと、古老や詩人に話を聞きに行っていた。
そこで『時空のコンパス』が存在するということを突き止めた。
そのようにアリアは認識したのだが、それは違っていたようだ。
では彼はいったい、どうして「空間が歪んでいる」などと口にしたのだろうか。
「ランディ、あなたはなにを知ってしまったの?」
「どういうことだ?」
困ったような顔つきでアリアの問いに答えた。
やはり何かが変だった。
彼とは一回情報を出し合って、物事を整理する必要があるかも知れない。
こういった認識のずれが命を失う事態に発展することはなんとしてでも避けたい。
「なにかあなたの知っていることと私が知っていることは違うのかも知れない」
アリアがそれを口にすると、ランディは左手で目の辺りを押さえた。
「確かにそうかも知れないな…」
「ねぇ、話してくれない? あの日、あなたが一人でなにを調べてなにを知ったのかを…」
「そうしよう…」
ランディはそれを言って、適当な場所に腰を下ろした。なんだか、観念したような疲れたような表情にも見えてしまった。
アリアはそれに同道した。
「あの日、俺はエリックと君に手紙を残した。その後、『パウゼッタ商会』に向かった。リュセットなら顔が広いと思った。内容はそうだな…『この街に伝説や伝承の類いに詳しい人物はいないか。《古代の遺物》に詳しいやつならなおのこと良い』と」
「それで当たりを付けることが出来たのね?」
「ああ。意外なやつがいた。しかもすぐに会えるとのことだった。そして、彼と会い、フローズン・シャドウホール内で起きている事案で、なにか心当たりがないかどうかを訊ねた」
つまりは『時空が歪んでいる』ことに対して、過去に似たような事案がなかったかをランディは訊ねたのだ。
「それで…?」
アリアがのぞき込むように言うと、ランディは眉をひそめてこう言った。
「『クロノスフィア』…」
それはアリアが聞いたことがない単語だった。
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