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第13話 夢を結う
12 二人でともに
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目覚めた朝、王国は、大変なことになっていた。
前の日の午前中から、世界がどうなっていたか、王宮の誰にも記憶がなかったのだ。
集団で眠ってしまったのか、なにか事件が起きていたのではないか……、
宮廷魔術師たちはまた、大変に騒がしい会議を開いた。
証言が集められ、王都の街には、なにも変わったところのない昨日の記憶がある者も、王宮のみなのようにいつのまにか眠っていたという者もいる、とわかった。
他の街や村はどうか、と各地へ伝令が走っていく。
そんな日に、るりなみは、国王である父から、また呼び出し状をもらった。
そこには、ゆめづきと連れ立っていっしょに来るように、と指示されていた。
* * *
その晴れた午後、るりなみはゆめづきとともに、国王の執務室をおとずれた。
青空のもとの王都を見下ろしていた国王あめかみは、やってきた二人をゆっくりと順に見て、おごそかに言った。
「るりなみと、ゆめづき。同じ年に生まれた二人を──ともに王とする。そんな未来のために動いていこう、という話があるのだが」
えっ、とるりなみは思わず声をもらす。
隣のゆめづきも、はっと息を呑み、小さく言った。
「あめかみ陛下、それは……」
「この王国にはいまだかつて、二人の王を立てた時代はない。だが今年の年越しの祭りの結果からも、考えて相談を重ねた末に、そういう話が出ている。ゆめづきと、るりなみ。二人ともを同時に、王位継承者に指名する、という話が」
るりなみは、答えられなかった。
ゆめづきも、口を開いたまま、言葉が出ないようだ。
そんな二人を見て、あめかみはふっと和やかに笑った。
「年末から、二人も、とても仲良くなったように見えるのでね。ともに支え合い、助け合っていけるのではないかと……」
それからあめかみは、目を閉じてひとりごとのように付け加えた。
「ひとりの王は、孤独だからね」
「父上……」
るりなみがぽつりと呼びかける横で、ゆめづきはじっとうつむき、しばらくして顔をあげた。
「私は、お受けしたいです。るりなみ兄様は、どうですか?」
向けられたゆめづきの表情はりりしく、でもどこかがんばりすぎているような、張りつめたところがあった。
そう思ったとたん、るりなみの心に一瞬のうちに……嵐のように、いろいろなできごとが思い出されて渦巻いては、たしかめる間もなく、過ぎていった。
るりなみは、青空を目に映しながら、口を開いた。
その返事は──……。
* * *
前の日の午前中から、世界がどうなっていたか、王宮の誰にも記憶がなかったのだ。
集団で眠ってしまったのか、なにか事件が起きていたのではないか……、
宮廷魔術師たちはまた、大変に騒がしい会議を開いた。
証言が集められ、王都の街には、なにも変わったところのない昨日の記憶がある者も、王宮のみなのようにいつのまにか眠っていたという者もいる、とわかった。
他の街や村はどうか、と各地へ伝令が走っていく。
そんな日に、るりなみは、国王である父から、また呼び出し状をもらった。
そこには、ゆめづきと連れ立っていっしょに来るように、と指示されていた。
* * *
その晴れた午後、るりなみはゆめづきとともに、国王の執務室をおとずれた。
青空のもとの王都を見下ろしていた国王あめかみは、やってきた二人をゆっくりと順に見て、おごそかに言った。
「るりなみと、ゆめづき。同じ年に生まれた二人を──ともに王とする。そんな未来のために動いていこう、という話があるのだが」
えっ、とるりなみは思わず声をもらす。
隣のゆめづきも、はっと息を呑み、小さく言った。
「あめかみ陛下、それは……」
「この王国にはいまだかつて、二人の王を立てた時代はない。だが今年の年越しの祭りの結果からも、考えて相談を重ねた末に、そういう話が出ている。ゆめづきと、るりなみ。二人ともを同時に、王位継承者に指名する、という話が」
るりなみは、答えられなかった。
ゆめづきも、口を開いたまま、言葉が出ないようだ。
そんな二人を見て、あめかみはふっと和やかに笑った。
「年末から、二人も、とても仲良くなったように見えるのでね。ともに支え合い、助け合っていけるのではないかと……」
それからあめかみは、目を閉じてひとりごとのように付け加えた。
「ひとりの王は、孤独だからね」
「父上……」
るりなみがぽつりと呼びかける横で、ゆめづきはじっとうつむき、しばらくして顔をあげた。
「私は、お受けしたいです。るりなみ兄様は、どうですか?」
向けられたゆめづきの表情はりりしく、でもどこかがんばりすぎているような、張りつめたところがあった。
そう思ったとたん、るりなみの心に一瞬のうちに……嵐のように、いろいろなできごとが思い出されて渦巻いては、たしかめる間もなく、過ぎていった。
るりなみは、青空を目に映しながら、口を開いた。
その返事は──……。
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