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第12話 数の国

14 行きついた時の先

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 ふけの王宮おうきゅう、南のとうのある部屋で。

 ぬいぐるみや人形にんぎょうならべられたベッドの上にすわって、手の中のものをながめている少女がいた。
 王女ゆめづきだった。

 ゆらゆらとつづけるはりを見つめるゆめづきの口から、つぶやきがもれた。

王都おうとが、王国が、時空じくうのくぼみに……まさか、この時計のせいで……?」

 ゆめづきは、この時計をもらったばんのことを思い出していた。

 それから、年がれて、新しくはじまって、ゆめづきの日々はめまぐるしかった。

 離宮りきゅうらしていたころとは、なにもかもがちがった。
 父である前王ぜんおうにも、兄としたうるりなみにも再会して、あらゆることが変わった。

 運命を変えたい、といのったはずの自分は……それをかなえてもらったのだろうか。この時計で?

 いや、とゆめづきは内心ないしんで首を横にる。

 私が変えたかったのは……本当に、変えたいとねがうことは……。

 ゆめづきの心のそこいずみに、暗い気持ちがきだす。

 すると、ゆめづきが手ににぎった懐中かいちゅう時計どけいはりが、かちり、と、ある方向ほうこうをさした。

 方位ほういなのか、時刻じこくなのか、そこをさした針は、それ以上ゆらりとも動かなくなる。

「え……ど、どうしたの……?」
「時間れですよ」

 声とともに、ばたん、とはりだした窓がき、風がきこんだ。

 その風に乗ってきたのだろうか、あの少年が──ゆめづきにあの日、この時計を手わたした、光るような白いかみの少年が、大きな楽器がっき背負せおって、ベッドのわきに立っていた。

時空じくうの行き先が、今、決まりました」

 ゆめづきは、いぶかるように少年を見つめた。

 聞きたいことは、山ほどある。
 けれど、少年の雰囲気ふんいきは、どこか普通の世界のものをえていて、普通ふつうの言葉を返すのは、そぐわない相手だと感じた。

「お渡ししてから、ずうっと、あなたはこの時計をお使いになっていましたね? おわかりですか、王女おうじょ殿下でんか
「使ったことは、数回しかないはずです」

 ゆめづきがひかえめに、それでもきっぱりと答えると、少年は「そういうことではないんです」と続けた。

「何回か、というのは、ねじをいたことを言っているのですね。そのねじは、あたりの時空をちょこっとゆがめるだけのもので、たいしたことはありません。一方いっぽうで、その時計全体ぜんたいちからは、この王国のすえすら決めてしまう……いえ、変えてしまうのですよ」

 ゆめづきは、少年をじっと見つめて聞いた。

 少年の手がすっとびて、ゆめづきの時計をゆびさす。

「その針は、れていたでしょう。それは、ぬしである……時計を使っているあなたの心に呼応こおうしながら、未来の流れをどちらの方角ほうがくにするか、揺れていたんですよ。でも、もう時間切れです」

 ゆめづきの心が、ざわりとした。

 なにか、とんでもないことが起こるような……いや、起こってしまったかのような。
 そんな気持ちになり、心にざわざわと風がいた。
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