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第10話 時の訪問者
6 侵入者たち
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三人で連れ立って歩くと目立つ、というゆめづきの指摘で、三人はそれぞれに東の塔のゆいりの部屋の近くへ向かうことになった。
ゆめづきと子どものゆいりが出て行ったあと、やっと服を着替え、図書室で自習をするだのなんだの、と世話係たちをごまかして、るりなみも東の塔へ向かう。
屋上庭園を抜けて東の塔へ。
らせん階段をのぼり、ゆいりの部屋を見あげることのできる踊り場の暗がりで、ゆめづきと子どものゆいりに合流した。
ゆいりの部屋のある階はがらんとして、人の目はない。
子どものゆいりがちょいちょいと、るりなみをつついた。
「こういうのは、待っててもしょうがないから。王子様と姫が、なにか理由があってゆいりの部屋を訪ねたんだ、っていうふうに、扉を開けに行ってよ」
ゆめづきが、やれやれ、という顔で応じる。
「わかりました。で、あなたはどうするんです?」
「二人のうしろに隠れて部屋に入る」
「本当に、普通に忍び込むのですね」
呆れました、というふうに、ゆめづきはため息をつく。
るりなみは心配になって言った。
「誰か来る前に、早く行かないと」
呆れました、という目を、ゆめづきはるりなみにも向けた。
「兄様……こういう段になると、兄様の心配性も役にたつのかもしれませんね。まぁ、では行きましょう」
るりなみとゆめづきは、子どものゆいりを隠すようにしながら、ゆいりの部屋の前まで歩いていった。
るりなみは、ゆめづきと目を見合わせ、扉に手を伸ばし……こんこんこん、とノックをした。
「ノックしてどうするんだよ!」
小声の叫びとともに、子どものゆいりがぐい、とるりなみの服のうしろを引っ張る。
「だって、中に誰かいるかもしれないから……!」
「それにしたって、この状況で扉を開けられたら、僕が丸見えじゃないか!」
しかし、部屋の向こうもこちらの廊下も、しーんとしていた。
るりなみは思いきって、がちゃり、と扉を開け、中をのぞきこんだ。
午前中の光が差しこむ部屋は、しんと静まり、誰もいない。
「正面から入るときは、鍵のひとつもないんだな」
子どものゆいりがそう言いながら、ずかずかと部屋に入っていく。
「ま、待ってよ……!」
「なにを待つんだよ」
るりなみと子どものゆいりがそんな言い合いをしながら部屋に踏み入り、ゆめづきがうしろ手に、扉を閉めようとしたところ……。
「みなさん、ゆいり様のお部屋に、なにかご用が?」
やけに明るい声がして、扉の向こうから、給仕長の「みつみ」がひょっこりと顔をのぞかせた。
るりなみは心臓が止まりそうになる。
るりなみの世話係でもある、妖精の生まれの彼女は、気配を断つことを得意としていた。
いつからるりなみたちを見ていたのだろうか……?
ゆめづきと子どものゆいりが出て行ったあと、やっと服を着替え、図書室で自習をするだのなんだの、と世話係たちをごまかして、るりなみも東の塔へ向かう。
屋上庭園を抜けて東の塔へ。
らせん階段をのぼり、ゆいりの部屋を見あげることのできる踊り場の暗がりで、ゆめづきと子どものゆいりに合流した。
ゆいりの部屋のある階はがらんとして、人の目はない。
子どものゆいりがちょいちょいと、るりなみをつついた。
「こういうのは、待っててもしょうがないから。王子様と姫が、なにか理由があってゆいりの部屋を訪ねたんだ、っていうふうに、扉を開けに行ってよ」
ゆめづきが、やれやれ、という顔で応じる。
「わかりました。で、あなたはどうするんです?」
「二人のうしろに隠れて部屋に入る」
「本当に、普通に忍び込むのですね」
呆れました、というふうに、ゆめづきはため息をつく。
るりなみは心配になって言った。
「誰か来る前に、早く行かないと」
呆れました、という目を、ゆめづきはるりなみにも向けた。
「兄様……こういう段になると、兄様の心配性も役にたつのかもしれませんね。まぁ、では行きましょう」
るりなみとゆめづきは、子どものゆいりを隠すようにしながら、ゆいりの部屋の前まで歩いていった。
るりなみは、ゆめづきと目を見合わせ、扉に手を伸ばし……こんこんこん、とノックをした。
「ノックしてどうするんだよ!」
小声の叫びとともに、子どものゆいりがぐい、とるりなみの服のうしろを引っ張る。
「だって、中に誰かいるかもしれないから……!」
「それにしたって、この状況で扉を開けられたら、僕が丸見えじゃないか!」
しかし、部屋の向こうもこちらの廊下も、しーんとしていた。
るりなみは思いきって、がちゃり、と扉を開け、中をのぞきこんだ。
午前中の光が差しこむ部屋は、しんと静まり、誰もいない。
「正面から入るときは、鍵のひとつもないんだな」
子どものゆいりがそう言いながら、ずかずかと部屋に入っていく。
「ま、待ってよ……!」
「なにを待つんだよ」
るりなみと子どものゆいりがそんな言い合いをしながら部屋に踏み入り、ゆめづきがうしろ手に、扉を閉めようとしたところ……。
「みなさん、ゆいり様のお部屋に、なにかご用が?」
やけに明るい声がして、扉の向こうから、給仕長の「みつみ」がひょっこりと顔をのぞかせた。
るりなみは心臓が止まりそうになる。
るりなみの世話係でもある、妖精の生まれの彼女は、気配を断つことを得意としていた。
いつからるりなみたちを見ていたのだろうか……?
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