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[第2部] 第8話 夜めぐりの祭り
14 月を受けた都
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そうして、年越しの夜はめぐり──。
年明けの新しい朝、清々しい陽の光の中に起き出した王都の人々は、玄関先の灯籠の中をのぞきこんで、月、あるいは星の形をたしかめた。
夜めぐりの祭りで、子どもたちがともした光は、ろう細工のように固まって、月、または星の形になる。そのどちらがあらわれたかが、その家の今年の運勢をあらわすはずだった。
多くの家の人たちが、灯籠の中を見て家族に知らせ、それから近所の人たちに、その結果をたしかめあって回るうちに──。
王都の人たちは、ざわめきたっていった。
その新しい年、王都のほとんどの家の灯籠が、月の形を受け取ったのだった。
* * *
「まったく、どういうことなんです」
王宮では、その新年の初日の午後には、宮廷魔術師たちが会議を開いていた。
「前代未聞だ、月の加護ばかりとは」
「お伝えします──第七区の家々も皆、月の形だそうです!」
次々に入ってくる報告や資料からわかったことを、机の上に書き出して並べながら、王宮に仕える魔術師たちは、ああでもないこうでもないと言い合っていた。
まるで、朝の市場のような活気だが、それはぴりぴりと緊張したものだった。
ゆいりも、その会議の場に出席していた。
大声で意見を言い合うのには参加せず、机の上の情報を見て、ゆいりはじっと考え続けていた。
街の人々はたいてい、月の形よりも星の形を望むもので、実際に例年は、星の形のほうが多くあらわれるものだった。
星の形があらわすのは、今年のその家の繁栄で、商売繁盛や幸運も約束される。
一方で月の形があらわれたとき、その年は内にこもり、あまり大きな商売や旅行をしないほうがいいとされる。
ただし、こもっているあいだは幸福をあたためていて、穏やかで満ち足りた幸せがその家を包む、と言われていた。
「月が、悪いものであるわけではあるまい」
「凶兆というわけでは……」
机の向こうで、他の魔術師たちが言い合っている。
「なにより、月は我がユイユメ王国王家の象徴ではないか。それを思えば……」
「ひょっとしてこれは、王位継承者の指名のことに、関わっているのでは……」
その日のうちに、王都のほぼすべての家が、月の形を得た、ということがわかった。
星の形を得た数少ない家は、近いうちに王都から引っ越したり、この一年は王都で過ごすわけでなかったり、という事情も、明らかになった。
王都でなにかが起こる予兆ではないか……。
王位継承者として正式に指名されるために呼ばれた、王女ゆめづきに、関わっているのではないか……。
魔術師たちはいくつかの意見をまとめて、国王に報告しに行った。
* * *
年明けの新しい朝、清々しい陽の光の中に起き出した王都の人々は、玄関先の灯籠の中をのぞきこんで、月、あるいは星の形をたしかめた。
夜めぐりの祭りで、子どもたちがともした光は、ろう細工のように固まって、月、または星の形になる。そのどちらがあらわれたかが、その家の今年の運勢をあらわすはずだった。
多くの家の人たちが、灯籠の中を見て家族に知らせ、それから近所の人たちに、その結果をたしかめあって回るうちに──。
王都の人たちは、ざわめきたっていった。
その新しい年、王都のほとんどの家の灯籠が、月の形を受け取ったのだった。
* * *
「まったく、どういうことなんです」
王宮では、その新年の初日の午後には、宮廷魔術師たちが会議を開いていた。
「前代未聞だ、月の加護ばかりとは」
「お伝えします──第七区の家々も皆、月の形だそうです!」
次々に入ってくる報告や資料からわかったことを、机の上に書き出して並べながら、王宮に仕える魔術師たちは、ああでもないこうでもないと言い合っていた。
まるで、朝の市場のような活気だが、それはぴりぴりと緊張したものだった。
ゆいりも、その会議の場に出席していた。
大声で意見を言い合うのには参加せず、机の上の情報を見て、ゆいりはじっと考え続けていた。
街の人々はたいてい、月の形よりも星の形を望むもので、実際に例年は、星の形のほうが多くあらわれるものだった。
星の形があらわすのは、今年のその家の繁栄で、商売繁盛や幸運も約束される。
一方で月の形があらわれたとき、その年は内にこもり、あまり大きな商売や旅行をしないほうがいいとされる。
ただし、こもっているあいだは幸福をあたためていて、穏やかで満ち足りた幸せがその家を包む、と言われていた。
「月が、悪いものであるわけではあるまい」
「凶兆というわけでは……」
机の向こうで、他の魔術師たちが言い合っている。
「なにより、月は我がユイユメ王国王家の象徴ではないか。それを思えば……」
「ひょっとしてこれは、王位継承者の指名のことに、関わっているのでは……」
その日のうちに、王都のほぼすべての家が、月の形を得た、ということがわかった。
星の形を得た数少ない家は、近いうちに王都から引っ越したり、この一年は王都で過ごすわけでなかったり、という事情も、明らかになった。
王都でなにかが起こる予兆ではないか……。
王位継承者として正式に指名されるために呼ばれた、王女ゆめづきに、関わっているのではないか……。
魔術師たちはいくつかの意見をまとめて、国王に報告しに行った。
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