60 / 126
[第2部] 第8話 夜めぐりの祭り
11 優しい灯り
しおりを挟む
次の家では、るりなみが灯籠に灯りをともした。
杖先で、こん、と灯籠を叩くと、わぁん……という響きとともに光が宿った。
その優しい色の光は、ゆめづきが先ほど宿した光とは少し色合いが違って、淡い雲に包まれた空のような色だった。
「兄様の色みたいです」
ゆめづきが灯籠の光とるりなみを見比べながら言った。
「みんなの心の色が、映るのかな?」
「次はどうでしょうね。違う気持ちで叩いたら、色も変わるのでしょうか?」
るりなみは、ゆめづきの言ったことを考えて、思い出した。
「新しい年を祝福する希望の心でめぐりなさい、って、ゆいりは言っていたね」
ゆめづきはくすくすと笑い出した。
「兄様は昔っから、ゆいりさんの言うことだけは、しっかり覚えるのですよね」
「うん!」
るりなみは嬉しくなってうなずいてから、はっとする。
「ほ、ほかのことも、ちゃんと覚えているよ!」
「本当でしょうかね」
ゆめづきはくすくすと笑い続けていた。
* * *
次の家、また次の家……。
るりなみとゆめづきはかわるがわる順番に、家の玄関先の灯籠に光をともしていった。
すべての光の色合いが、少しずつ違っていた。
ゆめづきのともす光は、海の中で揺れたり、木々の若葉を透かして踊ったりする、優しい陽の光のようだった。
るりなみのともす光は、晴れの日も、雨の日も、朝焼けのときも夕暮れどきも、いつも移りかわっていく空のさまざまな光り方のようだった。
二人は、光の色をたしかめるたびに嬉しくなって、もう恥ずかしさもなく、高らかに歌いながら歩いていった。
* * *
杖先で、こん、と灯籠を叩くと、わぁん……という響きとともに光が宿った。
その優しい色の光は、ゆめづきが先ほど宿した光とは少し色合いが違って、淡い雲に包まれた空のような色だった。
「兄様の色みたいです」
ゆめづきが灯籠の光とるりなみを見比べながら言った。
「みんなの心の色が、映るのかな?」
「次はどうでしょうね。違う気持ちで叩いたら、色も変わるのでしょうか?」
るりなみは、ゆめづきの言ったことを考えて、思い出した。
「新しい年を祝福する希望の心でめぐりなさい、って、ゆいりは言っていたね」
ゆめづきはくすくすと笑い出した。
「兄様は昔っから、ゆいりさんの言うことだけは、しっかり覚えるのですよね」
「うん!」
るりなみは嬉しくなってうなずいてから、はっとする。
「ほ、ほかのことも、ちゃんと覚えているよ!」
「本当でしょうかね」
ゆめづきはくすくすと笑い続けていた。
* * *
次の家、また次の家……。
るりなみとゆめづきはかわるがわる順番に、家の玄関先の灯籠に光をともしていった。
すべての光の色合いが、少しずつ違っていた。
ゆめづきのともす光は、海の中で揺れたり、木々の若葉を透かして踊ったりする、優しい陽の光のようだった。
るりなみのともす光は、晴れの日も、雨の日も、朝焼けのときも夕暮れどきも、いつも移りかわっていく空のさまざまな光り方のようだった。
二人は、光の色をたしかめるたびに嬉しくなって、もう恥ずかしさもなく、高らかに歌いながら歩いていった。
* * *
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
玲奈と、境ノ森町の魔法使い ―ワクワクはドラゴンと不思議を添えて―
杵島 灯
児童書・童話
“境ノ森町(さかいのもりまち)”に引っ越してきた小学五年生の女の子、彗崎(はくさき) 玲奈(れな)は、いきなりすごいワクワクに出会う。
なんと『夜空をホウキで飛ぶ男の子』と『小さなドラゴン』を見てしまったのだ。
ホウキで空を飛ぶ人間も、ドラゴンも、玲奈は今まで見たことがない。
しかもその男の子を玲奈は転校初日に同じクラスで見つけてしまった。
名前は、宝城(たからぎ) ヒスイ。
正体は、魔法使い!?
「オレの役目は『ちがう世界から入り込んできた悪い魔法使いたち』を、元の世界へ送り返すことなんだ」
「キュー! キュキュ!」
「……オレと、ドラゴンのキューイの役目は」
「キュ!」
普通なら見えないはずの『魔法使いたち』が見えちゃう玲奈は、ヒスイのお手伝いをすることに!
元気な女の子とちょっぴりひねくれた男の子、そして意外と可愛いドラゴンの物語。
イラスト:銀タ篇様
下出部町内漫遊記
月芝
児童書・童話
小学校の卒業式の前日に交通事故にあった鈴山海夕。
ケガはなかったものの、念のために検査入院をすることになるも、まさかのマシントラブルにて延長が確定してしまう。
「せめて卒業式には行かせて」と懇願するも、ダメだった。
そのせいで卒業式とお別れの会に参加できなかった。
あんなに練習したのに……。
意気消沈にて三日遅れで、学校に卒業証書を貰いに行ったら、そこでトンデモナイ事態に見舞われてしまう。
迷宮と化した校内に閉じ込められちゃった!
あらわれた座敷童みたいな女の子から、いきなり勝負を挑まれ困惑する海夕。
じつは地元にある咲耶神社の神座を巡り、祭神と七葉と名乗る七体の妖たちとの争いが勃発。
それに海夕は巻き込まれてしまったのだ。
ただのとばっちりかとおもいきや、さにあらず。
ばっちり因果関係があったもので、海夕は七番勝負に臨むことになっちゃったもので、さぁたいへん!
七変化する町を駆け回っては、摩訶不思議な大冒険を繰り広げる。
奇妙奇天烈なご町内漫遊記、ここに開幕です。
サクラと雪うさぎ
春冬 街
児童書・童話
ひとりぼっちのうさぎ、サクラ。ひょんなことから、初めてのお友だちができた。ちょっぴり変だけど、たのもしいユキがいつも助けてくれる。どうしてもユキに桜を見せたくて……。春を待ちわぶ2匹のうさぎの物語。
カクヨムでも投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる