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[番外編] 第7話 虹の王冠

8 隠しごとを明かして

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 馬車は、おしのびの王子るりなみと教育係のゆいりを乗せて、王都おうとを走りけていった。

 がたごとと音を立てながら、王宮からの橋をわたり、大通りを走り切り、城壁じょうへきの門をくぐって、王都の外の街道かいどうへ……。

 そのほろの中から、るりなみはちらちらと空を見上げていたが、大きな二重にじゅうの虹は、いつまでも消えないままだった。

 大草原だいそうげんにいたって、周りの景色は、風にそよぐやわらかな草の緑の一色になる。

 るりなみが座席ざせきに落ち着くと、ゆいりは決心けっしんをして話をはじめた。

「るりなみ様、実は……私も、虹に関する夢を見ていたのです」

 ゆいりは、るりなみがはじめてバルコニーで虹をかけようとしていたあの朝に見た夢のことを、かたっていった。

 王都をえてかかった大きな虹のこと。
 その虹のふもとで、るりなみが王冠おうかんを拾い上げていたこと。

 最後にゆいりは、その夢をかくしていたことをあやまった。

「良い夢か、悪い夢か、そのときは判断はんだんがつかなかったのです。でも、同じばんにるりなみ様が虹の夢を見ていたとわかったときに、おつたえすればよかったのでしょうね、素直な気持ちのままに」

 ごめんなさい、とゆいりは頭を下げ、首を少しかしげて、るりなみをうかがった。

「そんな、ゆいり、僕は……」

 るりなみが言葉にまってしまうのを見て、ゆいりはつづけた。

「誰にも知らせずに胸にしまっておくつもりだったのですが、結局こうして、遠足えんそくに行くことにもなって……お父上は、うらやましさのあまり、さぞおいかりになることでしょう」

 ゆいりが神妙しんみょうにそう言ってみせると、るりなみは目をぱちぱちさせた。

 それから一拍いっぱくおくれて、二人は視線しせんわしながら、くすくすと笑い出してしまった。

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