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第6話 影の国
12 この星々の中に
しおりを挟むるりなみはゆっくりと目を開けた。
夜の海岸に倒れていたようだった。波の音が耳に心地よい。
となりで、今しがたなにかを見送ったかのように、星空と満月をながめている人がいた。
見間違うはずのないその人は……。
「ゆいり!」
るりなみが叫ぶと、ゆいりはこちらを向いて微笑んだ。
「るりなみ様。痛いところはありませんか」
「ゆ、ゆいり! ゆいりは大丈夫なの?」
「おかげさまで」
ゆいりはしゃがんで、上体を起こしただけのるりなみに視線をあわせた。
「るりなみ様、影の国まで助けにきてくださって、本当にありがとうございました」
「僕、ゆいりを、助けられたの?」
「ええ。小さな私を助けてくださったのですよね」
「うん」
るりなみはしばらくゆいりを見つめたあと、勢いよく抱きついた。
「ゆいり、ゆいり、心配したんだから……!」
ゆいりのあたたかさに、涙があふれてきそうになる。
本当に、また会えて、よかった……。
しばらくゆいりを感じたあと、るりなみはそっと体をはなした。
今度は妙に照れくさくて、ゆいりの顔が見られない。
「ここは……どこなんだろう」
ゆいりは優しく答えてくれた。
「ここは世界の夢のはざまです、るりなみ様。そこここに、星が落ちているでしょう」
「星……これのこと?」
るりなみは、強くちかちかとまたたく星形のかたまりを手に取った。
「その星々の中には、それぞれ世界があって、私やるりなみ様がいるのです」
「えっ?」
ゆいりがなにを言っているのか、すぐにはわからなかった。
水平線の彼方を見るようなまなざしで、ゆいりは語る。
「それぞれの世界の、それぞれのるりなみ様。王子かもしれないし、そうではないかもしれない。世界の様子も、まったく違うかもしれないし、よく似ているかもしれない。無数の世界が、この海岸には散らばっていて……いえ、海の中にも、海の向こうにも散らばっていて、流されたり、波に運ばれたりしているのです」
「世界が……?」
だが、手の中の星を見ていたるりなみは、急に意識が薄れていくのを感じた。
まるで、その星の中に吸い込まれてしまうかのように……。
「ゆいり……」
るりなみはそうつぶやいて……星空と夜の海を背にして立つゆいりを見て……。
安心しきって、眠りにおちた。
* * *
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