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第5話 最後の交響曲

2 譜面と手紙

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「それで……」

 るりなみはゆいりと、その手の封筒ふうとうを見た。
 ゆいりは、先ほどまでの重い雰囲気ふんいきき飛ばされたようにほがらかだった。

「ああ、この封筒、なんでしょうね。差出人さしだしにんの名前もないようだし……」

 ゆいりは少しけげんそうに封筒の裏側を見たり、かして見ようとしたりしてから、ぐるぐるとまかれたひもをといてふうをあけた。

 中から出てきたのは、あつい紙のたばだった。
 るりなみは紙面しめんをのぞきこむ。

「これって! 楽譜がくふ、だよね?」
交響曲こうきょうきょく譜面ふめんですね……」

 ゆいりはしばらく無言で楽譜をめくっていた。

「るりなみ様、先ほどの話の続きですが……亡くなったその人は、作曲家だったんです」
「え? それじゃあ、この楽譜は……」
「彼の書いたものに間違いありません。彼の書き方、彼の文字です。ですがなぜ……」

 ゆいりがそう言ったとき、楽譜のあいだから、一枚の小さな紙がひらりと飛んでいこうとした。
 るりなみはそれをつかまえて、書いてあった文章を読み上げた。

「『あらしの日に、嵐の中で、この楽譜を燃やされたし』……」
「嵐の中で、燃やせ、ですか?」

 ゆいりはその紙を受け取って、ほかになにも書かれていないのを見ると、ふしぎそうに目をまたたいた。

「嵐が来るって、みつみさんが言っていたね」

 るりなみの言葉にうなずきながら、ゆいりはじっと楽譜を見つめていた。


   *   *   *
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