ユイユメ国ゆめがたり【完結】

星乃すばる

文字の大きさ
上 下
21 / 126
第4話 月を編む

6 満月を待ちながら

しおりを挟む


 ぱちぱちぱち……、と、あたたかみのある拍手はくしゅの音が、るりなみたちのもとに届いた。

 音のしたほうを向くと、るりなみの父である国王あめかみが、屋上の入り口の扉にもたれかかりながら、るりなみたちと夜空の二日月を見つめていた。

「すばらしい演奏だったよ、るりなみ」

 くだけた言葉をかけてきた父に、るりなみはぱっと笑顔になる。

「父上、……ありがとうございます!」
「とても良いものが見られた。今宵こよいの月は格別かくべつだ。おまえにたのんでよかったと思っているよ」
「父上……」

 るりなみは、うまく言葉を続けることができない。
 ……父のことは、少しだけ、苦手だと思っていたのだ。いつもむずかしそうな仕事をして、父の考えていることには思いもおよばない、と。

 月笛を手にしたままはにかむるりなみを、ゆいりがやさしく見つめていた。

    *   *   *

 るりなみはそれから毎日、月を編むつとめをはたした。

 昼の時間に出ていた白い月が、夕方になるたび、るりなみの前で編まれた新しい月に入れ替わる、というのはふしぎでもあったし、毎日新しくなる月への愛着あいちゃくも感じた。

 満月を見たら、きっと、すごく嬉しくなるはずだ。



第4話 月を編む  * おわり *
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

フロイント

ねこうさぎしゃ
児童書・童話
光の妖精が女王として統治する国・ラングリンドに住む美しい娘・アデライデは父と二人、つつましくも幸せに暮らしていた。そのアデライデに一目で心惹かれたのは、恐ろしい姿に強い異臭を放つ名前すら持たぬ魔物だった──心優しい異形の魔物と美しい人間の女性の純愛物語。

父が政府に殺された日、僕は最後に父の目を見た。

経済・企業
父が…殺された。_____ 新聞記者の父が政府の不正を密告しようとし、結果政府に消された。 ある日、父の遺品整理をしていたら、父の遺書とみられるものを見つけた。 その内容を読んだ”僕”は一体___ 暇つぶしに作ってみたのですが、よろしければご覧ください。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

王さまとなぞの手紙

村崎けい子
児童書・童話
 ある国の王さまのもとに、なぞの手紙が とどきました。  そこに書かれていた もんだいを かいけつしようと、王さまは、三人の大臣(だいじん)たちに それぞれ うえ木ばちをわたすことにしました。 「にじ色の花をさかせてほしい」と―― *本作は、ミステリー風の童話です。本文及び上記紹介文中の漢字は、主に小学二年生までに学習するもののみを使用しています(それ以外は初出の際に振り仮名付)。子どもに読みやすく、大人にも読み辛くならないよう、心がけたものです。

処理中です...