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第4話 月を編む
6 満月を待ちながら
しおりを挟むぱちぱちぱち……、と、あたたかみのある拍手の音が、るりなみたちのもとに届いた。
音のしたほうを向くと、るりなみの父である国王あめかみが、屋上の入り口の扉にもたれかかりながら、るりなみたちと夜空の二日月を見つめていた。
「すばらしい演奏だったよ、るりなみ」
くだけた言葉をかけてきた父に、るりなみはぱっと笑顔になる。
「父上、……ありがとうございます!」
「とても良いものが見られた。今宵の月は格別だ。おまえに頼んでよかったと思っているよ」
「父上……」
るりなみは、うまく言葉を続けることができない。
……父のことは、少しだけ、苦手だと思っていたのだ。いつもむずかしそうな仕事をして、父の考えていることには思いも及ばない、と。
月笛を手にしたままはにかむるりなみを、ゆいりが優しく見つめていた。
* * *
るりなみはそれから毎日、月を編むつとめをはたした。
昼の時間に出ていた白い月が、夕方になるたび、るりなみの前で編まれた新しい月に入れ替わる、というのはふしぎでもあったし、毎日新しくなる月への愛着も感じた。
満月を見たら、きっと、すごく嬉しくなるはずだ。
第4話 月を編む * おわり *
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