ユイユメ国ゆめがたり【完結】

星乃すばる

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第4話 月を編む

4 楽譜に向き合って

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 それから三日間、るりなみは月笛と楽譜に向かいきりで、必死ひっしに練習をした。

 最初の頃は大変だった。

 一小節しょうせつごとに譜面ふめん解読かいどくし、音にしていく。
 メロディーの形がつかめるまで、何度も吹いてみる。

 やがて、こんな感じかな、とメロディーが見えてくるものの、うまく演奏ができないこともある。そういうときは、何度も同じところを練習した。

 そしてなにより、曲はとても長く、一日はあっというまに過ぎてしまった。

 だが、二日目の晩に、なんとか演奏ができるようになると、るりなみはその曲にのみこまれそうなほど夢中になった。

 いくつものかねの音がからみあってひびきあうような曲だった。

 ひとりで吹いているはずなのに、何人もの演奏者がいるかのようにこえた。
 低音ていおんきざんでいくるりなみ、中音域ちゅうおんいきで歌い上げるるりなみ、高音こうおんを飛びねておどるかのようなるりなみ……、まるで自分の分身がたくさんいるかのようだ。

 そして、新月が過ぎた翌日……。


   *   *   *
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