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第2話 石像の鳥
2 鳥を踊らせて
しおりを挟むひんやりとした石の感触。
それなのに、鳥はもぞもぞと動いている……。
「この鳥はいったいなに? 生きているの? 石みたいなのに!」
「王都の東の地方の、鉱山の跡地から見つかったものなのだそうです。いにしえの魔法が残っているようだ、と調査を頼まれたのですが、るりなみ様にもお見せしたくて。魔法の品ですので、生きているわけではないのだと思いますが」
ゆいりが話しているうちにも、机の上に並んだ十数羽の石像たちが、ぴくぴくと体の一部をひきつらせたかと思うと、本物の鳥のように動きはじめた。
そちらに目を奪われていると、るりなみの手の中の鳥は激しく羽をばたつかせて、宙空に舞いあがった。
ほかの鳥たちもそれに続き、たちまち部屋中が、乱舞する鳥たちでわっとにぎわった。
鳥たちは、一羽一羽がちがう種類の小鳥の特徴を持っていた。
小さくて丸っこいもの、くちばしの長いもの、流れるような体の形が魚のようなもの。
そして、その一羽一羽は、それぞれに芸をしはじめた。
機械仕掛けのオルゴールのような声で歌うもの。
マッチの火のような小さな炎をはくもの。
羽ばたきでつむじ風を起こすもの。
るりなみの手から飛び立っていった鳥は、ぴぃぴぃ、ぴぴぴ、とさえずりながら、声に合わせて軽やかなダンスを踊るのだった。
「すごい……!」
「いにしえの国の、おもちゃといったところでしょうね。よくできています」
しばらく芸をすると、鳥たちは机の上に舞い戻り、きちんと一礼をすると、動かなくなった。
るりなみの手の中には踊り上手の鳥が戻ってきて、挨拶するかのようにぴっ、と鳴くと、すっかり固まって、もとの石像になってしまった。
「あ……固まっちゃった……」
るりなみは石像を裏返したり、あたためるように手で包んだりしてみた。
「どうやったら、動くようになるの?」
「目を合わせるんです」
ゆいりは簡単にそう言ったが、それはとてもむずかしかった。
るりなみは鳥をにらむようにしてみたが、石像の視線はるりなみを見てはいない。
それでも視線を追っていると、だまし絵を見ているような気分になってきた。
だがそのうち、かちっ、となにかがはまるように鳥と目が合った。
鳥はぴぃ! と鳴くと、ふたたびぶるぶると身を震わせ、飛び立って踊りはじめた。
「なかなか目を合わせてくれなかったよ。この鳥にも、ご機嫌があるのかな」
「そうですね。でも、るりなみ様はこの鳥に気に入られたようですよ」
「僕も、この鳥すごく気に入ったよ!」
るりなみは踊る鳥に向けて手をのばす。
鳥はぴょん、と跳ねるようにしてその手に着地する。
その様子を、ゆいりは頬をゆるませながら見ていた。
「その一羽、るりなみ様にさしあげましょう」
「本当に!」
ええ、とゆいりは微笑んだ。
るりなみは嬉しくて飛びあがりそうになって、鳥に頬ずりをした。
* * *
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