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第1章 止まった世界の生き方
9話 能力
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「それで?僕の能力は何なんだ?」
冬馬はゲニウスに問いかける。もちろん万夏に時の心臓が行ったということでいいのだがもう一つ、「悪魔の心臓」を食べた冬馬にも能力は備わっているのだ。
「そうだな」
ゲニウスは一言言うと冬馬にひざまずく。頭を下げ、敬意の念を示す。
「簡単に言えばオレらはオマエの、冬馬のしもべだな。まずはオレらの主人であると思ってみろ」
唐突なゲニウスの発言に冬馬は困惑するが、無理矢理ゲニウスの主人だと思い込む。
「げ、ゲニウスの…」
するとまるで泥が落ちるかのようにゲニウスの体が溶けていき、人の形をしていく。がっしりとした筋肉に包まれた体、大きさは変わらずとてもでかい、しかし顔は目のような二つの赤い光が怪しく光るお面のようなものをつけている。ゲニウスはそんな巨漢へとなり得ていたのだった。
「これがオレの正式な見た目だ。オマエらが見てたのとはぜんぜん違うだろ?」
「あ、あぁ。でもなんで…」
「あ?そんなの決まってんだろ。オレらは時を止めるいわば“時の使者”だぞ?それはそのすべてを統括する、まさに万夏の逆、悪魔の能力だ」
ゲニウスは当たり前だと言わんばかりに言う。
「統括って一体…?時の使者…?それに『オレら』ってゲニウス以外にもいるのか?具体的にどんな能力を持ってるんだ?」
「質問が多いんだよめんどくせぇ。そういう能力っつったらそういう能力なんだ!」
ゲニウスはめんどくささからか適当に答える。
「だいいちこういうのは百聞は一見にしかず?ってやつだろ。それに、『オレら』ってのはそのまんまだろうが。オマエらがダウンさせた“時の使者”たちも含めてんだよ」
「なっ!?」
それはとんでもない情報であった。あの命尽きるギリギリで戦ってもまだダウンさせることしかできなかったヤツらを使役させる能力。まさに最強としか言えない。
「あ、最強なんておもうなよ?オマエが思うより使役ってのはムズいんだよ。それにオマエの言う事しか聞かねぇんだ、言い換えちまえば命令になければそこの嬢ちゃんも、万夏たちにだって殺しにかかる」
それは冬馬にとって絶対に許されないことである。もしすずの手にかすり傷ひとつでもつけようものなら冬馬は迷わず自分の片腕を切り落とす。つまりはそんな危険な化け物を何体も使役させなくてはならない。そんなことなら喜んで使いたくないものだ。
「それに、これはもはや能力じゃねぇ。“呪い”だ。この力を得てして幸せに生きることなんて無理だと思え」
その圧と、力を感じる声音でゲニウスは淡々と話す。
「ま、それがどういうことか詳しくはいずれ分かるこった。これに慣れれば何かが変わるかもしれねぇしな」
その力を嫌うかのような素振りを見せたゲニウスはそういうと冬馬の横に立つ。
「さぁ、創造から行くか。出したヤツは俺がすぐに殺してやるから安心しな」
「わかった。よろしく頼む」
冬馬は従順に従う。この力を早く理解しすずに害のないようにしなくてはならない。
「ん。じゃあまずはここから時の使者のことを想像し、出てくるところまで具体的に想像しろ」
そう言われると冬馬は目を閉じて先程戦ったような時の使者の姿を想像する。
すると下から円形のワープホールのようなものが生成されそこから一体のヤツが出てくる。
「……成功だな。オマエ、意外と筋があるかもな。初めてにしてはかなりいいぞ」
そういうとゲニウスは時の使者の頭を握り潰しその姿を消滅させた。
「ま、これに命令を出して動かすんだ。たいして難しくもねぇだろ?今じゃゲームでもよくある展開だしな」
そう言ってゲニウスは冬馬に背を向け秘密基地へと歩き出す。
「ゲニウス!感謝してる、ありがとう」
ゲニウスは振り返ることなく右腕を挙げる。それが彼なりの返事だったのは言うまでもない。
「トーマ、おかえり」
「すず、ただいま」
暇そうに座り込んでいたすずは冬馬が来ると眠そうな、でも嬉しそうな表情を見せ話しかける。
「どう?食べた心臓は」
「ゲニウス曰くまさに悪魔のようなものらしい。これを持って幸せな暮らしは無理だってさ」
「………。そっか」
すずは少し虚ろげに答える。
「…んで…なんでトーマはそんな能力をつけられたのに平気なの?」
「別に平気じゃないさ。怖いよ、こんな呪いを持ってすずを守れるなんて胸張って言えない…」
「じゃあなんで?別にトーマの家族でも友達でも、知り合いですらなかった人のためにそんなことをしちゃったの?こんなこと言いたくないけどここまでする必要なんて…」
冬馬は反論をすることはなかった。そのとおりだ。はっきり言って冬馬の行動は異常としか言いようがない。偶然知り合った名前と顔ほどしか知らないような相手のために自分の命を賭け、呪いのような能力を自ら得た。
「まぁあの時勝手に話しかけなければこんな事にならなかったんだろうけどさ、話しかけちゃって事情も知ってるのに見殺しにして、一人ぼっちで寂しく状況も敵すら理解できないまま殺されてたかもしれないなんて夢見が悪いだろ?」
詭弁だ。冬馬自身もそんな事はわかっていた。それらしい綺麗事にしかなってないことくらいわかっているがそうでも言わなくては格好がつかないのだ。心のどこかにある自尊心が働いているのだろう。
「ごめんすず。無茶したのは自分でもわかってる、今度からはもっと計画的に動くから」
「んーん。でもトーマはもっと自分を大切にするべきだよ!私や他の人のために頑張りすぎないで」
それはきっとすずが今まで思っていたことなのだろう。本気で言う。
「わかった。人のために無茶しすぎない、約束ね」
そういうと冬馬は自身の小指とすずの小指を交え約束をしたのだった。
冬馬はゲニウスに問いかける。もちろん万夏に時の心臓が行ったということでいいのだがもう一つ、「悪魔の心臓」を食べた冬馬にも能力は備わっているのだ。
「そうだな」
ゲニウスは一言言うと冬馬にひざまずく。頭を下げ、敬意の念を示す。
「簡単に言えばオレらはオマエの、冬馬のしもべだな。まずはオレらの主人であると思ってみろ」
唐突なゲニウスの発言に冬馬は困惑するが、無理矢理ゲニウスの主人だと思い込む。
「げ、ゲニウスの…」
するとまるで泥が落ちるかのようにゲニウスの体が溶けていき、人の形をしていく。がっしりとした筋肉に包まれた体、大きさは変わらずとてもでかい、しかし顔は目のような二つの赤い光が怪しく光るお面のようなものをつけている。ゲニウスはそんな巨漢へとなり得ていたのだった。
「これがオレの正式な見た目だ。オマエらが見てたのとはぜんぜん違うだろ?」
「あ、あぁ。でもなんで…」
「あ?そんなの決まってんだろ。オレらは時を止めるいわば“時の使者”だぞ?それはそのすべてを統括する、まさに万夏の逆、悪魔の能力だ」
ゲニウスは当たり前だと言わんばかりに言う。
「統括って一体…?時の使者…?それに『オレら』ってゲニウス以外にもいるのか?具体的にどんな能力を持ってるんだ?」
「質問が多いんだよめんどくせぇ。そういう能力っつったらそういう能力なんだ!」
ゲニウスはめんどくささからか適当に答える。
「だいいちこういうのは百聞は一見にしかず?ってやつだろ。それに、『オレら』ってのはそのまんまだろうが。オマエらがダウンさせた“時の使者”たちも含めてんだよ」
「なっ!?」
それはとんでもない情報であった。あの命尽きるギリギリで戦ってもまだダウンさせることしかできなかったヤツらを使役させる能力。まさに最強としか言えない。
「あ、最強なんておもうなよ?オマエが思うより使役ってのはムズいんだよ。それにオマエの言う事しか聞かねぇんだ、言い換えちまえば命令になければそこの嬢ちゃんも、万夏たちにだって殺しにかかる」
それは冬馬にとって絶対に許されないことである。もしすずの手にかすり傷ひとつでもつけようものなら冬馬は迷わず自分の片腕を切り落とす。つまりはそんな危険な化け物を何体も使役させなくてはならない。そんなことなら喜んで使いたくないものだ。
「それに、これはもはや能力じゃねぇ。“呪い”だ。この力を得てして幸せに生きることなんて無理だと思え」
その圧と、力を感じる声音でゲニウスは淡々と話す。
「ま、それがどういうことか詳しくはいずれ分かるこった。これに慣れれば何かが変わるかもしれねぇしな」
その力を嫌うかのような素振りを見せたゲニウスはそういうと冬馬の横に立つ。
「さぁ、創造から行くか。出したヤツは俺がすぐに殺してやるから安心しな」
「わかった。よろしく頼む」
冬馬は従順に従う。この力を早く理解しすずに害のないようにしなくてはならない。
「ん。じゃあまずはここから時の使者のことを想像し、出てくるところまで具体的に想像しろ」
そう言われると冬馬は目を閉じて先程戦ったような時の使者の姿を想像する。
すると下から円形のワープホールのようなものが生成されそこから一体のヤツが出てくる。
「……成功だな。オマエ、意外と筋があるかもな。初めてにしてはかなりいいぞ」
そういうとゲニウスは時の使者の頭を握り潰しその姿を消滅させた。
「ま、これに命令を出して動かすんだ。たいして難しくもねぇだろ?今じゃゲームでもよくある展開だしな」
そう言ってゲニウスは冬馬に背を向け秘密基地へと歩き出す。
「ゲニウス!感謝してる、ありがとう」
ゲニウスは振り返ることなく右腕を挙げる。それが彼なりの返事だったのは言うまでもない。
「トーマ、おかえり」
「すず、ただいま」
暇そうに座り込んでいたすずは冬馬が来ると眠そうな、でも嬉しそうな表情を見せ話しかける。
「どう?食べた心臓は」
「ゲニウス曰くまさに悪魔のようなものらしい。これを持って幸せな暮らしは無理だってさ」
「………。そっか」
すずは少し虚ろげに答える。
「…んで…なんでトーマはそんな能力をつけられたのに平気なの?」
「別に平気じゃないさ。怖いよ、こんな呪いを持ってすずを守れるなんて胸張って言えない…」
「じゃあなんで?別にトーマの家族でも友達でも、知り合いですらなかった人のためにそんなことをしちゃったの?こんなこと言いたくないけどここまでする必要なんて…」
冬馬は反論をすることはなかった。そのとおりだ。はっきり言って冬馬の行動は異常としか言いようがない。偶然知り合った名前と顔ほどしか知らないような相手のために自分の命を賭け、呪いのような能力を自ら得た。
「まぁあの時勝手に話しかけなければこんな事にならなかったんだろうけどさ、話しかけちゃって事情も知ってるのに見殺しにして、一人ぼっちで寂しく状況も敵すら理解できないまま殺されてたかもしれないなんて夢見が悪いだろ?」
詭弁だ。冬馬自身もそんな事はわかっていた。それらしい綺麗事にしかなってないことくらいわかっているがそうでも言わなくては格好がつかないのだ。心のどこかにある自尊心が働いているのだろう。
「ごめんすず。無茶したのは自分でもわかってる、今度からはもっと計画的に動くから」
「んーん。でもトーマはもっと自分を大切にするべきだよ!私や他の人のために頑張りすぎないで」
それはきっとすずが今まで思っていたことなのだろう。本気で言う。
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