Hotひと息

遠藤まめ

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3章 湯けむりカフェと疲れ

【3話】休めない温泉旅行

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 それぞれ部屋に案内され荷物などをしまいそのカフェへと集合する。
「ねーまだなのー?」
美緒が店長に聞くと
「おまたせ~みんなよく来たねぇ」
小柄で少し垂れた目の下にはくまができている女性がそう言いながら拓也たちのもとへと歩いて来た。
「琴乃、久しぶりぃ。相変わらず忙しそうねぇ。隈も濃くなってるし」
「にゃはは。ぼちぼち稼がせてもらってますよ。まぁこの隈は夜までゲームしてるからかもねぇ」
「ふ~ん。まぁ無理はしちゃだめだからねぇ」
「はいはい。それにしても、三人ともまた可愛くなったね~。そっちの坊やは新人さんかな?」
「あ、はじめまして。最近働き始めました、佐藤拓也です。一週間よろしくお願いします」
「田沼琴乃です。呼び方は適当に琴乃でいいから、一週間よろしくね~」
拓也と琴乃がお互いに自己紹介をすると寧々が笑いながら
「琴乃ちゃん。相変わらずおばあちゃんみたいなこと言ってるねぇ」
と言った。琴乃の年齢は見たところだと店長と同い年と感じるほどに若い。店長の年齢は知らないが。
「う~ん。見たところじゃ空ちゃんが前と違ってキラキラしてるねぇ。」
「……別に…」
空はうつむきながら拓也の服の裾をつまんで言った。
「さて、長話をしたいところだけどお仕事しなきゃだね!」
そう琴乃は笑顔で言った。拓也以外の四人は「うっ…」という声を出して苦い顔をしていたのにも気付かずに。

「団子と緑茶、たぬきうどん、玄米茶のおかわり!」
「ブレンド、ブラック、トースト!てんちょーこれ3番様にもってくね!」
琴乃と美緒が注文されたものを書き留めた伝票を読みながらくる。空と店長がそれを聞きすぐに飲み物を用意する。寧々が軽食や何故かメニューにあるうどんやそばを作る。拓也は寧々の手伝いと山積みになった洗い物を洗う。この状況を一言でまとめると大忙しであった。
「はい!ブラックできた!これは…」
「2番様!あとブレンドできたからねぇ!」
「拓ちゃん!ウチがうどん作ってる間にトーストと団子お願い!あーもうなんでうどんとかそばがあんの!?」
「はい!トーストできました!団子の作り方は…」
叫び声に近い声が厨房近くに響き温泉旅館とは思えない落ち着きのなさであった。
ノックのときと違い昼どきやモーニングのときだけでなく常に忙しい状態でこれを普段琴乃一人でさばけるとは思えなかった。

「閉店作業完了!今日のお仕事はおしま~い。みんなお疲れ様~」
「「「「「はぁ~…」」」」」
目の下の隈もあって一番疲れていそうな琴乃が余裕の笑みを浮かべる。ノックのメンバーは完全に疲れきっていた。いつも拓也以外には無口の空ですら大声を出す忙しさだ。
「拓也くん初めてにしてはやるね~。よくあの洗い物をさばけたよ」
「いやこれ限界突破ですよ。火事場の馬鹿力に近いやつっす」
「にゃはは。いつもは一人でも余裕なんだけどねぇ」
「普段は十人くらいしか来ないのにお客さんが大量に来る時期があるのよねぇ…」
疲れのあまり座り込んでいた店長がそういった。
「てかこの旅館を経営してるのになんでこのカフェで働いてるんすか?」
ふと拓也は疑問に思い聞いた。
「ここはカフェではなく茶屋だよ。経営はしてても接客やら何やらと全部従業員がやっちゃうから暇なんだな~」
茶屋であると強調する琴乃がそう答えた。
「まぁ初日にしては上々だね~。あとちょっとしたら夕食を持ってくよう言うからそれまでに温泉にでも入ってゆっくりしてね」
「温泉だー!!」
と空が喜び
「「夜ご飯だ!」」
と寧々と美緒がはしゃぎ
「このために働いてたと言っても過言じゃないわねぇ」
と店長が笑みを浮かべる。
拓也ははしゃぐ四人を見ていち早く疲れを癒やしたいと思うばかりであった。
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