21 / 39
2章 学校と疲れ
【8話】疲れを知らない先輩の疲れ
しおりを挟む
一人でもできる。頑張れば何事もうまくいく。まだ疲れてない。体は動くし頭は働く。
そう寧々は自分に言い聞かせ涙を拭くことも忘れて手を動かしていた。
たしかに体は疲れていない。が、どこか疲れている。元を考えたのは自分。責任も自分にある。
ポジティブな思考とネガティブな思考が寧々の頭でぶつかり合う。
もう無理だ。心が完全に砕けた状態で作業のスピードも落ちてきて手が止まりかけていたその時
「なにか手伝いましょうか?」
聞いたことのある声、話していると自然と疲れが取れる不思議な声。振り返った先には
「だから言ったじゃないすか、間に合うかって。だいたい先輩は頑張り過ぎなんですよ」
「う、うるしゃい…」
拓也だ。寧々は涙を拭くことなく拓也の方を見て弱々しい反論をした。
「で、何したらいいですか?」
「じ、じゃあ壁とかの装飾お願いしてもいい?」
優しく聞いた拓也に寧々は泣きじゃくり言った。
拓也が来てくれたのはいいが所詮は一人。間に合う保証はなかった。
涙を拭い作業をしていて10分もすると
「できましたよ。次は何を」
「は、はや…」
「そりゃあ先輩が楽しそうに話してたじゃないですか。それを聞いて想像したものをそのまま作るだけなんで。で、次は?」
「仕掛けとかにイラスト描いてほしい…かも…」
「イラストすか。ラッキーですね先輩」
「……んぇ?」
「俺、イラスト得意っす」
にやりと笑って拓也は仕掛けにイラストを描き始めた。
あと30分もすれば下校時間。間に合わないかと思っていた寧々にとってこんなにも余裕を持ってできるとは思わなかった。
「で、できたぁ…」
完成したのだ。寧々のクラスの出し物「忍者ハウス」が。
「た、拓ちゃん…ありがとぉ…」
完成した。壊れた心で完全に不可能と思われたものがこんなにも余裕で終わるとは
「き、奇跡だ…」
「奇跡なんかじゃないっすよ。先輩が頑張ったから、俺に楽しそうに話したからここまでできたんだ。寧々先輩の努力と熱意が俺の手伝いやすさに繋がったんですよ」
「でも、ウチ一人じゃ…」
「そう。先輩は疲れないことをいいことに誰にも頼らず一人で抱え込む。一人じゃ何もできねぇこともあるんすよ。もっと周りに頼りましょうよ」
「……うん」
寧々は泣き声まじりで返事をした。
「なにかするだけじゃなくて、誰かに何かを頼らなきゃ」
拓也は優しく微笑み寧々を見て言った。
「うん…!」
寧々もまた笑顔で元気に返事をした。
「さて、帰りましょっか。まだ修正したいところとかありますがそれも明日でいいでしょ」
「修正?」
「例えば看板とかね」
「自信作なのに!?」
帰り際廊下にそんな会話を響かせながら昇降口へと歩いていった。
そう寧々は自分に言い聞かせ涙を拭くことも忘れて手を動かしていた。
たしかに体は疲れていない。が、どこか疲れている。元を考えたのは自分。責任も自分にある。
ポジティブな思考とネガティブな思考が寧々の頭でぶつかり合う。
もう無理だ。心が完全に砕けた状態で作業のスピードも落ちてきて手が止まりかけていたその時
「なにか手伝いましょうか?」
聞いたことのある声、話していると自然と疲れが取れる不思議な声。振り返った先には
「だから言ったじゃないすか、間に合うかって。だいたい先輩は頑張り過ぎなんですよ」
「う、うるしゃい…」
拓也だ。寧々は涙を拭くことなく拓也の方を見て弱々しい反論をした。
「で、何したらいいですか?」
「じ、じゃあ壁とかの装飾お願いしてもいい?」
優しく聞いた拓也に寧々は泣きじゃくり言った。
拓也が来てくれたのはいいが所詮は一人。間に合う保証はなかった。
涙を拭い作業をしていて10分もすると
「できましたよ。次は何を」
「は、はや…」
「そりゃあ先輩が楽しそうに話してたじゃないですか。それを聞いて想像したものをそのまま作るだけなんで。で、次は?」
「仕掛けとかにイラスト描いてほしい…かも…」
「イラストすか。ラッキーですね先輩」
「……んぇ?」
「俺、イラスト得意っす」
にやりと笑って拓也は仕掛けにイラストを描き始めた。
あと30分もすれば下校時間。間に合わないかと思っていた寧々にとってこんなにも余裕を持ってできるとは思わなかった。
「で、できたぁ…」
完成したのだ。寧々のクラスの出し物「忍者ハウス」が。
「た、拓ちゃん…ありがとぉ…」
完成した。壊れた心で完全に不可能と思われたものがこんなにも余裕で終わるとは
「き、奇跡だ…」
「奇跡なんかじゃないっすよ。先輩が頑張ったから、俺に楽しそうに話したからここまでできたんだ。寧々先輩の努力と熱意が俺の手伝いやすさに繋がったんですよ」
「でも、ウチ一人じゃ…」
「そう。先輩は疲れないことをいいことに誰にも頼らず一人で抱え込む。一人じゃ何もできねぇこともあるんすよ。もっと周りに頼りましょうよ」
「……うん」
寧々は泣き声まじりで返事をした。
「なにかするだけじゃなくて、誰かに何かを頼らなきゃ」
拓也は優しく微笑み寧々を見て言った。
「うん…!」
寧々もまた笑顔で元気に返事をした。
「さて、帰りましょっか。まだ修正したいところとかありますがそれも明日でいいでしょ」
「修正?」
「例えば看板とかね」
「自信作なのに!?」
帰り際廊下にそんな会話を響かせながら昇降口へと歩いていった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
小児科医、姪を引き取ることになりました。
sao miyui
キャラ文芸
おひさまこどもクリニックで働く小児科医の深沢太陽はある日事故死してしまった妹夫婦の小学1年生の娘日菜を引き取る事になった。
慣れない子育てだけど必死に向き合う太陽となかなか心を開こうとしない日菜の毎日の奮闘を描いたハートフルストーリー。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる