37 / 39
永遠の決心と瑠衣の涙とヒナタの捨てた心④
しおりを挟む
「瑠衣ちゃん、猫の姿に未練ある?」
と、僕は訊いてみると、瑠衣ちゃんは、
「ないのじゃー」
と満面の笑みを浮かべて元気に答えたので安心した。
とりあえず一件落着ということで良いのだろうか。
なんだかあまりにも泣きすぎて疲れたので今日は寝ようかな……。
でも、こうして瑠衣ちゃんをまた抱きしめながら寝られると思うと、さっきまで悲しかった気分はどこかへすっ飛んで行ってしまった。
「ヒナタ、わらわはおぬしとずっと一緒じゃ。人間の姿のままでおられるのなら、もう二度と猫になれなくても構わん。猫の姿など要らぬ」
と笑顔で背中に両手を回して僕にぎゅーっとしてくる瑠衣ちゃん。
さっきまでは人間の姿の瑠衣ちゃんに二度と会えなくなる恐怖と焦りと悲しみしかなかったが、こうして瑠衣ちゃんは僕の腕の中に居る。何事もなかったように。
その温もりやありがたみがいつも以上によくわかる。
「ヒナタ、愛しておるぞ。いつもありがとう」
瑠衣ちゃんから恥ずかしげもなく満面の笑みで直球ストレートの愛の言葉と感謝を告げられ、ふと僕の脳裏にあることが浮かんだ。
それは今まで考えたこともなかったことだった。
それは亡くなった僕の両親のこと。
僕の両親はどんな思いで僕を育ててくれたのだろうか。
僕のために働いてくれたのだろうか。
僕の学費を払ってくれていたのだろうか。
僕の生活費を出していてくれたのだろうか。
僕の将来を考えてくれていたのだろうか――。
ああそうか、そういうことだったのか。
ようやくわかった。
僕は両親に対して感謝の気持ちを持って生きていなかったんだ。
親不孝者だったんだ。
両親も全く感謝しない僕に対して腹が立ち、堪忍袋の尾が切れて僕に酷いことを言い始めた。
だから僕は両親が事故で亡くなってひとりぼっちになっても、特に悲しくもなく、逆にごちゃごちゃ口出しして命令してくる人間が居なくなり自由になったと、内心思ってしまって、それからの人生は周囲への感謝も忘れてしまっていた。
その結果僕を必要としてくれる人は周囲から消え、僕は孤立することになった。
そこで僕と同じように孤独で路頭に迷っている瑠衣ちゃんを拾って、僕を必要としてくれる純真無垢の素直さに惹かれてしまった。
僕はそんな瑠衣ちゃんを見て、本当は僕も意地を張らずにこのくらい素直に生きたかったと思ってしまったのだ。
そして自分の身を挺してまで僕に幸せになってほしいと、その健気な気持ちで、捨てていたはずのあの感情を思い出してしまったのだ。
心の谷に投げ捨てたあの感情。
素直にお父さんやお母さんに、いつもありがとう、愛してると感謝と愛の気持ちを伝えること。
と、僕は訊いてみると、瑠衣ちゃんは、
「ないのじゃー」
と満面の笑みを浮かべて元気に答えたので安心した。
とりあえず一件落着ということで良いのだろうか。
なんだかあまりにも泣きすぎて疲れたので今日は寝ようかな……。
でも、こうして瑠衣ちゃんをまた抱きしめながら寝られると思うと、さっきまで悲しかった気分はどこかへすっ飛んで行ってしまった。
「ヒナタ、わらわはおぬしとずっと一緒じゃ。人間の姿のままでおられるのなら、もう二度と猫になれなくても構わん。猫の姿など要らぬ」
と笑顔で背中に両手を回して僕にぎゅーっとしてくる瑠衣ちゃん。
さっきまでは人間の姿の瑠衣ちゃんに二度と会えなくなる恐怖と焦りと悲しみしかなかったが、こうして瑠衣ちゃんは僕の腕の中に居る。何事もなかったように。
その温もりやありがたみがいつも以上によくわかる。
「ヒナタ、愛しておるぞ。いつもありがとう」
瑠衣ちゃんから恥ずかしげもなく満面の笑みで直球ストレートの愛の言葉と感謝を告げられ、ふと僕の脳裏にあることが浮かんだ。
それは今まで考えたこともなかったことだった。
それは亡くなった僕の両親のこと。
僕の両親はどんな思いで僕を育ててくれたのだろうか。
僕のために働いてくれたのだろうか。
僕の学費を払ってくれていたのだろうか。
僕の生活費を出していてくれたのだろうか。
僕の将来を考えてくれていたのだろうか――。
ああそうか、そういうことだったのか。
ようやくわかった。
僕は両親に対して感謝の気持ちを持って生きていなかったんだ。
親不孝者だったんだ。
両親も全く感謝しない僕に対して腹が立ち、堪忍袋の尾が切れて僕に酷いことを言い始めた。
だから僕は両親が事故で亡くなってひとりぼっちになっても、特に悲しくもなく、逆にごちゃごちゃ口出しして命令してくる人間が居なくなり自由になったと、内心思ってしまって、それからの人生は周囲への感謝も忘れてしまっていた。
その結果僕を必要としてくれる人は周囲から消え、僕は孤立することになった。
そこで僕と同じように孤独で路頭に迷っている瑠衣ちゃんを拾って、僕を必要としてくれる純真無垢の素直さに惹かれてしまった。
僕はそんな瑠衣ちゃんを見て、本当は僕も意地を張らずにこのくらい素直に生きたかったと思ってしまったのだ。
そして自分の身を挺してまで僕に幸せになってほしいと、その健気な気持ちで、捨てていたはずのあの感情を思い出してしまったのだ。
心の谷に投げ捨てたあの感情。
素直にお父さんやお母さんに、いつもありがとう、愛してると感謝と愛の気持ちを伝えること。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる