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瑠衣の隠された真実⑦
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僕は下を向いたまま告げた。
「殺せとは言ってない。祓うと言ってるの」
「同じことだろっ!?」
「いいから聞きなさい! 猫又を『祓う』とは言ってるけど、やることはひとつ。この薬を猫又に投与するだけ」
彩芽さんは僕に液体が入ったアンプルを見せる。
「この薬を猫又に投与すれば、猫又の中にある突然変異細胞は大量のカロリーを消費する急激な細胞変化が遺伝子レベルでできなくなる。早い話が、変身能力がなくなる」
……それは要するに、猫又がただの猫になる。そういうことか?
ということは、これをもし瑠衣ちゃんに投与してしまったら、もう二度と人間の瑠衣ちゃんには会えなくなる。
にゃあと鳴く猫の瑠衣ちゃんとしか。
「……そんなの投与したら結局瑠衣ちゃんと一緒に居られなくなるじゃないか!」
と僕が叫ぶと、彩芽さんは僕を見据えて言った。
「何かを得るためには、何かを捨てなければならない。あなたは瑠衣を得るために人類を捨てるというの? もしそうなら、あなたはこれから先、味方になってくれる人類は居なくなってしまうわ。それでもいいの?」
そうだ、僕は瑠衣ちゃんのためなら何でも捨てられる覚悟はあるつもりだ。
でも、人間が生きるためにはどうやっても人間と関わらなければならない。
それが人間だからだ。
全人類を敵に回してしまったら、僕は孤軍奮闘で瑠衣ちゃんをずっと守らなければならなくなる。
国とは人との助け合いで成り立っているからだ。
それらが全てなくなれば間違いなくすぐにジリ貧となってしまうだろう。
そして僕は淘汰されてしまう。
それでは瑠衣ちゃんを守ることができなくなってしまう。
「よく考えて。何が正解なのか。あなたが生きるために何が必要かを、全てを捨てて全ての人類を敵に回して瑠衣と生きることが、可能だと思うの?」
そう言われても僕はまだ答えを見出せずにいた。
すると彩芽さんは再び口を開く。
「今すぐ結論を出す必要はないわ。これはあくまで提案よ。ゆっくり時間をかけて考えるといい。でもね、これだけは覚えておいて」
そして再び真剣な眼差しを向ける彩芽さん。
「人類として生まれたのなら、人類として生きなさい。あなたは人類なのだから」
と告げられ、僕は何も答えることができなかった。
彩芽さんはそれ以上は何も言わず、猫又の変身能力を奪う薬のアンプルを僕の手に握らせる。
「殺せとは言ってない。祓うと言ってるの」
「同じことだろっ!?」
「いいから聞きなさい! 猫又を『祓う』とは言ってるけど、やることはひとつ。この薬を猫又に投与するだけ」
彩芽さんは僕に液体が入ったアンプルを見せる。
「この薬を猫又に投与すれば、猫又の中にある突然変異細胞は大量のカロリーを消費する急激な細胞変化が遺伝子レベルでできなくなる。早い話が、変身能力がなくなる」
……それは要するに、猫又がただの猫になる。そういうことか?
ということは、これをもし瑠衣ちゃんに投与してしまったら、もう二度と人間の瑠衣ちゃんには会えなくなる。
にゃあと鳴く猫の瑠衣ちゃんとしか。
「……そんなの投与したら結局瑠衣ちゃんと一緒に居られなくなるじゃないか!」
と僕が叫ぶと、彩芽さんは僕を見据えて言った。
「何かを得るためには、何かを捨てなければならない。あなたは瑠衣を得るために人類を捨てるというの? もしそうなら、あなたはこれから先、味方になってくれる人類は居なくなってしまうわ。それでもいいの?」
そうだ、僕は瑠衣ちゃんのためなら何でも捨てられる覚悟はあるつもりだ。
でも、人間が生きるためにはどうやっても人間と関わらなければならない。
それが人間だからだ。
全人類を敵に回してしまったら、僕は孤軍奮闘で瑠衣ちゃんをずっと守らなければならなくなる。
国とは人との助け合いで成り立っているからだ。
それらが全てなくなれば間違いなくすぐにジリ貧となってしまうだろう。
そして僕は淘汰されてしまう。
それでは瑠衣ちゃんを守ることができなくなってしまう。
「よく考えて。何が正解なのか。あなたが生きるために何が必要かを、全てを捨てて全ての人類を敵に回して瑠衣と生きることが、可能だと思うの?」
そう言われても僕はまだ答えを見出せずにいた。
すると彩芽さんは再び口を開く。
「今すぐ結論を出す必要はないわ。これはあくまで提案よ。ゆっくり時間をかけて考えるといい。でもね、これだけは覚えておいて」
そして再び真剣な眼差しを向ける彩芽さん。
「人類として生まれたのなら、人類として生きなさい。あなたは人類なのだから」
と告げられ、僕は何も答えることができなかった。
彩芽さんはそれ以上は何も言わず、猫又の変身能力を奪う薬のアンプルを僕の手に握らせる。
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