21 / 39
瑠衣の看病②
しおりを挟む
本来なら誰かが看病してくれる、心配してくれる。
それにより寂しさや心細さ、苦しみが緩和されるのであるが、両親が突然この世から消え、途中からそれを享受することができなくなった。
過去の自分の心境と今の瑠衣ちゃんの気持ちが重なり合って、それが痛いほどよくわかってしまった。
瑠衣ちゃんの隣に潜って添い寝し、瑠衣ちゃんの頭を腕枕して、背中に手を回し抱きしめてあげた。
瑠衣ちゃんの手も背中に回ってくる。
そのままゆっくりと背中を摩ってあげていると少しづつ落ち着いてきて、静かに寝息を立て始めた。
瑠衣ちゃん早く治って、元気になってくれ……。
瑠衣ちゃんの背中に手を当てていると、僕もいつの間にか眠りの淵に引き摺り込まれていった。
日が落ちて目覚めると、少し熱が下がってきたのか瑠衣ちゃんは、
「お腹が空いたのじゃ……」
と食欲が出てきたようなので、
「よし、すぐに作るからね」
僕はキッチンへ向かう。
少しでも塩分と栄養をとってもらうために、鍋にお米と水、出汁を入れ、卵とほうれん草も入れて煮込む。
十分ほどで出来上がり、半身を起こした瑠衣ちゃんの布団まで卵ほうれん草粥を持っていく。
レンゲで掬ってフーフーしたあと、
「瑠衣ちゃん、あーん」
口元に持っていくと瑠衣ちゃんは素直に口を開けてきたので、そのまま食べさせてあげる。
もぐもぐと食べている様子を微笑ましく眺めつつ、僕の分も自分の口に運んで食べた。
うん、我ながらいい味だ。
「おいしい?」
と僕が訊ねると、
「うむ、美味しいのじゃ」
とにっこり笑ってくれた。
瑠衣ちゃんはぱくぱくと食べていって、すぐにお皿は空になった。
これだけ食べられればもう大丈夫だろう。
お風呂のお湯をたらいに汲んできて、タオルを絞って、瑠衣ちゃんには上半身の服を脱いでもらい体を拭いてあげる。
体は汗ばんでいて、大きな胸を見ないように拭くのは結構難しい作業ではあったが、病人に対してこんなことを考えたらダメだと自分を叱咤して頭を振る。
拭き終わるとすごく気持ちいいみたいで瑠衣ちゃんは嬉しそうだった。
そして新しいパジャマを着せてあげて、掛け布団を掛けてあげる。
「明日には治ってるといいね」
と頭を撫でると、瑠衣ちゃんは、
「早く治して一緒に遊ぶのじゃ」
と笑顔を向けてきて、僕はホッと一安心した。
そして瑠衣ちゃんと添い寝して体を冷やさないように抱きしめると、瑠衣ちゃんも僕の背中に腕を回してきてギュッと抱きしめ合う形になった。
お互いに相手の温もりを感じながら目を閉じると心地よい眠気がやってきて僕らは眠りに落ちていった。
翌朝、朝の微睡みの中、何かが僕のお腹の上によじ登っていく感触がして目を開けると、猫のように丸くなった瑠衣ちゃんがこちらを見ていた。
昨日までの弱々しさはどこへやらといった感じで、顔色も良くなりすっかり元気になっているようだ。
「ヒナタ、おはよう、腹減ったのじゃ」
と、無邪気な笑顔を僕に向けてきて、起き抜けなのに笑みが溢れた。
さらに瑠衣ちゃんは、
「ヒナタ、ありがとう。大好きなのじゃ」
僕に顔と体を擦り付けながら、また喜びをほほに浮かべた。
ああ、瑠衣ちゃんが喜んでくれている……それだけで胸がいっぱいになる。
瑠衣ちゃんを見ていると、こちらも自然と嬉しくなってきてしまうのだ。
お礼なんていい。彼女が苦しんでいる様を見て、放っておけるわけないんだから。すぐに熱が下がって本当に良かった。
こんなことを考えていると、瑠衣ちゃんは僕にとってかけがえのない大切な存在だと改めて認識する。
「瑠衣ちゃん、大好きだよ」
僕がそう返すと瑠衣ちゃんはニコニコと嬉しそうに顔を擦り付けてくる。
「来週はどこか遊びに行こうね」
「行くのじゃ!」
こんな感じで、めでたしめでたしで終わるはずだったのだが、そうはいかないようで、
それにより寂しさや心細さ、苦しみが緩和されるのであるが、両親が突然この世から消え、途中からそれを享受することができなくなった。
過去の自分の心境と今の瑠衣ちゃんの気持ちが重なり合って、それが痛いほどよくわかってしまった。
瑠衣ちゃんの隣に潜って添い寝し、瑠衣ちゃんの頭を腕枕して、背中に手を回し抱きしめてあげた。
瑠衣ちゃんの手も背中に回ってくる。
そのままゆっくりと背中を摩ってあげていると少しづつ落ち着いてきて、静かに寝息を立て始めた。
瑠衣ちゃん早く治って、元気になってくれ……。
瑠衣ちゃんの背中に手を当てていると、僕もいつの間にか眠りの淵に引き摺り込まれていった。
日が落ちて目覚めると、少し熱が下がってきたのか瑠衣ちゃんは、
「お腹が空いたのじゃ……」
と食欲が出てきたようなので、
「よし、すぐに作るからね」
僕はキッチンへ向かう。
少しでも塩分と栄養をとってもらうために、鍋にお米と水、出汁を入れ、卵とほうれん草も入れて煮込む。
十分ほどで出来上がり、半身を起こした瑠衣ちゃんの布団まで卵ほうれん草粥を持っていく。
レンゲで掬ってフーフーしたあと、
「瑠衣ちゃん、あーん」
口元に持っていくと瑠衣ちゃんは素直に口を開けてきたので、そのまま食べさせてあげる。
もぐもぐと食べている様子を微笑ましく眺めつつ、僕の分も自分の口に運んで食べた。
うん、我ながらいい味だ。
「おいしい?」
と僕が訊ねると、
「うむ、美味しいのじゃ」
とにっこり笑ってくれた。
瑠衣ちゃんはぱくぱくと食べていって、すぐにお皿は空になった。
これだけ食べられればもう大丈夫だろう。
お風呂のお湯をたらいに汲んできて、タオルを絞って、瑠衣ちゃんには上半身の服を脱いでもらい体を拭いてあげる。
体は汗ばんでいて、大きな胸を見ないように拭くのは結構難しい作業ではあったが、病人に対してこんなことを考えたらダメだと自分を叱咤して頭を振る。
拭き終わるとすごく気持ちいいみたいで瑠衣ちゃんは嬉しそうだった。
そして新しいパジャマを着せてあげて、掛け布団を掛けてあげる。
「明日には治ってるといいね」
と頭を撫でると、瑠衣ちゃんは、
「早く治して一緒に遊ぶのじゃ」
と笑顔を向けてきて、僕はホッと一安心した。
そして瑠衣ちゃんと添い寝して体を冷やさないように抱きしめると、瑠衣ちゃんも僕の背中に腕を回してきてギュッと抱きしめ合う形になった。
お互いに相手の温もりを感じながら目を閉じると心地よい眠気がやってきて僕らは眠りに落ちていった。
翌朝、朝の微睡みの中、何かが僕のお腹の上によじ登っていく感触がして目を開けると、猫のように丸くなった瑠衣ちゃんがこちらを見ていた。
昨日までの弱々しさはどこへやらといった感じで、顔色も良くなりすっかり元気になっているようだ。
「ヒナタ、おはよう、腹減ったのじゃ」
と、無邪気な笑顔を僕に向けてきて、起き抜けなのに笑みが溢れた。
さらに瑠衣ちゃんは、
「ヒナタ、ありがとう。大好きなのじゃ」
僕に顔と体を擦り付けながら、また喜びをほほに浮かべた。
ああ、瑠衣ちゃんが喜んでくれている……それだけで胸がいっぱいになる。
瑠衣ちゃんを見ていると、こちらも自然と嬉しくなってきてしまうのだ。
お礼なんていい。彼女が苦しんでいる様を見て、放っておけるわけないんだから。すぐに熱が下がって本当に良かった。
こんなことを考えていると、瑠衣ちゃんは僕にとってかけがえのない大切な存在だと改めて認識する。
「瑠衣ちゃん、大好きだよ」
僕がそう返すと瑠衣ちゃんはニコニコと嬉しそうに顔を擦り付けてくる。
「来週はどこか遊びに行こうね」
「行くのじゃ!」
こんな感じで、めでたしめでたしで終わるはずだったのだが、そうはいかないようで、
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる