永遠の瑠衣

箱枝ゆづき

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変化③

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 授業中にふと笑顔の瑠衣ちゃんのことを思い浮かべると、なんだか顔がニヤけそうになる自分を抑えつつも、授業が終わって家に帰る途中なのだが、ふと思いついた。

 瑠衣ちゃんはあれだけ寂しがるのなら、僕といつでも繋がれるように安いスマホでも持たせてあげようか。
 格安SIMのスマホなら月額料金も安いし、あれくらいの負担増なら問題がない。
 そして家にはWi-Fiがあるし、データ通信料は発生しない。
 よし、そうと決まれば早速契約してこよう。

 すぐに方向転換し歩き出す。
 僕はキャリアショップに行くと三十分ほど契約の処理を済ませて、瑠衣ちゃんにあげる新品のスマホが入った手提げ紙袋を手に帰路を歩く。

 何やら猫の鳴き声が聞こえてくる。
 それも、ぎゃああああという叫び声にも似た鳴き方。
 これは喧嘩している時の声にそっくりだった。

 今は春だし、発情期の猫も居るだろうし、オス同士がメスを巡って決闘でもしてるのかなと、特に気にせずに曲がり角を曲がった時、何やら金属製の手袋をした男二人組が三毛猫を地面に押さえつけている光景に出くわした。

 三毛猫は大声を上げて威嚇し暴れ、体を押さえつけられている手を引っ掻こうとしているが、金属製の手袋の前には猫の爪など歯が立たない。
 僕はその異様な光景に思わず民家の塀の影に身を隠した。
 そして半分だけ顔を出して覗き込む。

「猫又か?」

「いや、違う。ただの野良猫だ」

「ちっ、ただの人懐っこい猫か」

 男は三毛猫の首に金色に塗られた首輪を取り付けて施錠し放す。
 三毛猫は一目散に逃げ出し塀の上にジャンプし、民家の庭の中へ姿を消した。

「全く紛らわしいものを生み出しやがって。いい迷惑だ」

 と忌々しく吐き捨てて、男二人組は近くに停めていた白いワゴン車に乗って去っていった。
 ……なんなんだあいつらは?
 猫を調べていたぞ……?
 しかも猫又とか言っていた。
 もしかして瑠衣ちゃんが狙われているのか!?
 嫌な予感がして僕は急いで家へ走った。

 家の前につくと辺りを見渡す。
 瑠衣ちゃんの姿は見当たらないので僕がお願いしたとおりに家の中に居るのだろう。
 鍵を開けて中に入るといつも瑠衣ちゃんが待ち構えているのに今日は無反応。

 慌てて靴を脱いで部屋を確認すると、ベッドの上で僕の枕を抱きしめて寝ている瑠衣ちゃんの姿が目に入る。
 首には金メッキもどきのネックレスが光っている。

「よかった、無事だった……」

 僕はホッと胸を撫で下ろして、眠っている彼女の顔をよく見ると、頬に涙の跡があることに気付いた。
 どうやら僕の匂いがする枕を抱きしめながら泣き疲れて、そのまま寝てしまったようである。

 僕は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
 僕はベッドに腰掛けて瑠衣ちゃんの頭を撫でながら謝るのだった。

「ごめんね、一人にして……寂しかったよね」

 すると眠っていたはずの瑠衣ちゃんが目を開けて、僕の方を見てくれた。

「……っ! ヒナタ!」

 瑠衣ちゃんは僕に抱きついてくる。
 そして頬をペロッと舐めてきて、熱烈に顔を擦り付けてくる。

「……良かったのじゃ……帰ってきてくれたのじゃ……嬉しいのじゃ……」

 と言って満面の笑みで頬に頬をくっつけてくる。
 今朝学校へ行って夕方に帰ってきただけなのに、まるで僕が出て行って数ヶ月待った後のような感じになっている。
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