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黒猫少女との日々④
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「……熱々で舌が火傷をするので、冷めるまで待っておるのじゃ……」
あー、そうだ、瑠衣ちゃんは猫だから猫舌だった。
というわけで僕は瑠衣ちゃんのポトフが入ってる器を持ってフーフーしてあげる。
するとたちまち笑顔になる瑠衣ちゃん。
可愛いなちくしょう!
そんなことを繰り返してるうちにようやく適温になったらしく、瑠衣ちゃんは嬉しそうに背筋を伸ばして正座をし、箸を器用に使って行儀よくご飯を食べ始めた。
猫なのに僕よりも食べ方が綺麗というか、いや、もう見慣れたはずなんだけども。
「んんー、美味じゃ……。鮭は絶品じゃのう♡」
幸せそうな顔でもぐもぐと、鮭とご飯を交互に口にして、水を少し飲んだあとにポトフもスプーンですくって口に入れる。
「こちらも野菜と肉の出汁が効いて美味じゃ……」
いつものことだけど、本当に美味しそうに食べるよな瑠衣ちゃんは。
こんな適当な男の料理なのに。
見てて気持ちがいいくらいだよ。
それにしても、これだけ綺麗に食べてくれたら作った甲斐があったってもんだよね。
そんなことを考えながら僕も食事をしていると、あっという間に皿の上は空になっていた。
瑠衣ちゃんはご飯おかわりして三杯食べてたし。本当によく食べる子だ。
その後二人で食器を片付けてから歯を磨いて、一人ずつお風呂に入ったあと壁を背もたれにクッションに座ってテレビを見ることに。
しばらくぼーっとしていたけど、突然肩に重みを感じたので横を見ると、瑠衣ちゃんが僕の肩に頭を預けて目を閉じている。
どうやら眠くなったらしい。
時計を見ると時刻は午後九時を過ぎていた。確かにこの時間になると眠くなるよね。
ということで布団を敷いてそこに二人揃って寝転がる。そして電気を消して眠りにつく前に一言だけ言う。
「おやすみ、瑠衣ちゃん」
僕の言葉に反応したのかたまたまなのか、瑠衣ちゃんは僕の胸に腕をかけてくる。
顔を見てみると長いまつ毛の目は閉じられて寝息を立てている。
どうやら無意識にやっているようだ。僕はその手を握って眠りにつくことにした。
翌朝、鳥のさえずりで微睡んでいる僕の上に、自分と質量がそれほど大差ない物体がよじ登ってくる感覚がして、明るい光に顔を顰めつつ薄く目を開けると、そこには瑠衣ちゃんが猫のように体を丸くしながら乗っかっていた。
目が合うと彼女は僕をじーっと見つめながら、
「ヒナタ、おはよう。腹が減ったのじゃ」
と、屈託のない笑顔で明るく言ってきた。
その表情に僕はつられて笑顔になってしまう。
孤独で空虚な日々が続いていた一ヶ月前が、まるで嘘のように充実している。
◇ ◇ ◇
それから一週間ほどが経過したある日のこと。
その日は休日だったので僕はコードレス掃除機で軽く床の掃除をしていたのだが、床には僕の髪の毛と体毛しか落ちておらず、瑠衣ちゃんの長い髪は一本も見当たらなかった。
……普通は髪の毛って毛髪サイクルで抜けるはずだよな……?
と不思議に思ったが、瑠衣ちゃんは和風美人で可愛いから、きちんと髪の手入れもしていて抜け毛が少ないのだろう、それに掃除の手間も省けるし。
ということで気にしないことにした。
その後瑠衣ちゃんと家でのんびりと過ごしていたら、インターホンが鳴ったので玄関に向かいドアを開けると、そこには一人の女性が立っており、僕を見つめてくる。
そしてすぐに頭を下げて挨拶をしたかと思えば、急に顔を上げて真剣な眼差しを向けられ、こう言ったのだ。
「あなたの家に、猫又が居るって情報があったの」
と――。
あー、そうだ、瑠衣ちゃんは猫だから猫舌だった。
というわけで僕は瑠衣ちゃんのポトフが入ってる器を持ってフーフーしてあげる。
するとたちまち笑顔になる瑠衣ちゃん。
可愛いなちくしょう!
そんなことを繰り返してるうちにようやく適温になったらしく、瑠衣ちゃんは嬉しそうに背筋を伸ばして正座をし、箸を器用に使って行儀よくご飯を食べ始めた。
猫なのに僕よりも食べ方が綺麗というか、いや、もう見慣れたはずなんだけども。
「んんー、美味じゃ……。鮭は絶品じゃのう♡」
幸せそうな顔でもぐもぐと、鮭とご飯を交互に口にして、水を少し飲んだあとにポトフもスプーンですくって口に入れる。
「こちらも野菜と肉の出汁が効いて美味じゃ……」
いつものことだけど、本当に美味しそうに食べるよな瑠衣ちゃんは。
こんな適当な男の料理なのに。
見てて気持ちがいいくらいだよ。
それにしても、これだけ綺麗に食べてくれたら作った甲斐があったってもんだよね。
そんなことを考えながら僕も食事をしていると、あっという間に皿の上は空になっていた。
瑠衣ちゃんはご飯おかわりして三杯食べてたし。本当によく食べる子だ。
その後二人で食器を片付けてから歯を磨いて、一人ずつお風呂に入ったあと壁を背もたれにクッションに座ってテレビを見ることに。
しばらくぼーっとしていたけど、突然肩に重みを感じたので横を見ると、瑠衣ちゃんが僕の肩に頭を預けて目を閉じている。
どうやら眠くなったらしい。
時計を見ると時刻は午後九時を過ぎていた。確かにこの時間になると眠くなるよね。
ということで布団を敷いてそこに二人揃って寝転がる。そして電気を消して眠りにつく前に一言だけ言う。
「おやすみ、瑠衣ちゃん」
僕の言葉に反応したのかたまたまなのか、瑠衣ちゃんは僕の胸に腕をかけてくる。
顔を見てみると長いまつ毛の目は閉じられて寝息を立てている。
どうやら無意識にやっているようだ。僕はその手を握って眠りにつくことにした。
翌朝、鳥のさえずりで微睡んでいる僕の上に、自分と質量がそれほど大差ない物体がよじ登ってくる感覚がして、明るい光に顔を顰めつつ薄く目を開けると、そこには瑠衣ちゃんが猫のように体を丸くしながら乗っかっていた。
目が合うと彼女は僕をじーっと見つめながら、
「ヒナタ、おはよう。腹が減ったのじゃ」
と、屈託のない笑顔で明るく言ってきた。
その表情に僕はつられて笑顔になってしまう。
孤独で空虚な日々が続いていた一ヶ月前が、まるで嘘のように充実している。
◇ ◇ ◇
それから一週間ほどが経過したある日のこと。
その日は休日だったので僕はコードレス掃除機で軽く床の掃除をしていたのだが、床には僕の髪の毛と体毛しか落ちておらず、瑠衣ちゃんの長い髪は一本も見当たらなかった。
……普通は髪の毛って毛髪サイクルで抜けるはずだよな……?
と不思議に思ったが、瑠衣ちゃんは和風美人で可愛いから、きちんと髪の手入れもしていて抜け毛が少ないのだろう、それに掃除の手間も省けるし。
ということで気にしないことにした。
その後瑠衣ちゃんと家でのんびりと過ごしていたら、インターホンが鳴ったので玄関に向かいドアを開けると、そこには一人の女性が立っており、僕を見つめてくる。
そしてすぐに頭を下げて挨拶をしたかと思えば、急に顔を上げて真剣な眼差しを向けられ、こう言ったのだ。
「あなたの家に、猫又が居るって情報があったの」
と――。
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