短編集「空色のマフラー」

ふるは ゆう

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大吉? 大凶?

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 騒ぎになって、わたし達も居られなくなり。とりあえず、当初の目的であった参拝のために境内へと足を運ぶことになりました。
 まだ日の出前にもかかわらず、参拝の長い行列は続いています。仕方なく、わたし達もその列に加わりました。
「まあ、これに懲りて、当分、近付いてこないんじゃないのか?」ノリの良い方の男の人は、冗談交じりに笑って言ってくれます。気を使わせている感じで、申し訳なかったです。
 もう一人の大きいは方は何も言わず横を歩いています。こちらをチラチラと見て、彼なりに気遣ってくれているようでした。
「さっきは、ありがとう」
 わたしはもう一度、感謝の言葉を口にしました。
 彼はまじめな顔で噛みしめるように言いました。
「……俺のやったことは、その場しのぎでしかないからな……根本的な問題は何の解決もしていない……」
「うん、わかってる。落ち着いたら、ちゃんとやるから」
「そうか……でも、俺がいた方が良かったら言ってくれ。まあ、いるだけだけどな」
 彼の言葉が素直にわたしの心にしみ込んでくる気がしました。
「ありがとう」
「それは、さっき聞いた。迷子になるなよ」そう言った彼はこの人ごみの中でも、頭一つ抜け出していて、目立つことこの上もありません。これなら見失うことなんて、絶対にないでしょう。
「わかった」そう言って、わたしは混雑の中彼の後ろを追いかけていきました。
 
 無事、初詣を終え、みんなでおみくじを引きました。わたしは大吉でした。
「やったね、願いは叶う。恋愛運も最高じゃない?」
 友人がわたしのおみくじを覗き込んで騒ぎます。わたしはとなりの彼が気になって尋ねました。
「どうだった?」
 聞いたわたしに背を向けて、おみくじを隠すように彼は言い淀むのです。
「べ、別に……」そう言って、すぐに近くの枝に結ぼうとします。それも、わたしの届かないくらいの高い枝にです。
「見せてくれても、良いんじゃない?」
「ダメだ」
 
 そんなじゃれ合いを友人たちは少し離れて見ていた。
「あいつ絶対、大凶だな」
「なんで?」
「あんな、めんどくさいのと出会っちまったんだからな」
「どっちも、どっち。じゃあない?」
「ふっ、そうかもな」
 日の出まではまだ少しある。
 とある神社の境内は、これから初詣のピークを迎えるところだった。
      了
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