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大吉? 大凶?
Ⅰ
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俺の今年の運勢は、改めて占うまでも無い。大凶のようだ……。
大晦日、することもなく、アパートで惰眠をむさぼっていた俺に、悪友どもから誘いの電話があった。当然の事とばかり、俺がヒマだと決めつけているあたりからして気に入らない。ましてや、女絡みならホイホイ俺が来ると思われているところが、また気に入らなかった。
「場所は?」とりあえず場所だけ確認する。 意外と近場だったので、仕方なく俺は付き合うことにする。腐れ縁の悪友だ、遠慮など何もいらない。悪態をつくだけついて来るか。ストレス発散ぐらいにはなりそうだ。
俺は適当なダウンをはおり家を出た。外ではすでに除夜の鐘が鳴り響いている。寺も神社も気が早いもんだ。ひと突きいくらで金が落ちるのか? この不景気に景気の良いもんだ。やさぐれた今の俺からはネガティブな言葉しか出てこない。
「ちっつ」冷えると右の膝が疼く。
「サポーターでもしてくるんだったな……」
冷えきった空を恨めしく俺は見上げた。都心の空でも少しは星が見えるもんだ。だが、俺からは、とうてい綺麗だとか言う感想は出て来ない。期待されても困ると言うもんだ。
† † †
あいつが潰れて寝ているすきに、わたしは逃げるようにマンションから出ました。とりあえず現金などは持ち、後のがさばる荷物は友人の家にすでに送ってあります。
わたしは震える右手を左手で押さえ、深く深呼吸をしました。やがて除夜の鐘が鳴りだし、見上げた空には小さく瞬く星が見えました。でも、それらはすぐに滲み出し見えなくなりました。自分が泣いていることに気が付いたのは、しばらくしてからでした。
友人と連絡を取り、今、バイト仲間と近くのファミレスにいると言うので、わたしも混ざることにしました。友人の顔を見て安心し、再び涙腺が緩みそうになります。慌てて化粧室に駆け込んだわたしを友人は優しく抱きしめてくれます。世界で一番優しいハグでした。
大晦日、することもなく、アパートで惰眠をむさぼっていた俺に、悪友どもから誘いの電話があった。当然の事とばかり、俺がヒマだと決めつけているあたりからして気に入らない。ましてや、女絡みならホイホイ俺が来ると思われているところが、また気に入らなかった。
「場所は?」とりあえず場所だけ確認する。 意外と近場だったので、仕方なく俺は付き合うことにする。腐れ縁の悪友だ、遠慮など何もいらない。悪態をつくだけついて来るか。ストレス発散ぐらいにはなりそうだ。
俺は適当なダウンをはおり家を出た。外ではすでに除夜の鐘が鳴り響いている。寺も神社も気が早いもんだ。ひと突きいくらで金が落ちるのか? この不景気に景気の良いもんだ。やさぐれた今の俺からはネガティブな言葉しか出てこない。
「ちっつ」冷えると右の膝が疼く。
「サポーターでもしてくるんだったな……」
冷えきった空を恨めしく俺は見上げた。都心の空でも少しは星が見えるもんだ。だが、俺からは、とうてい綺麗だとか言う感想は出て来ない。期待されても困ると言うもんだ。
† † †
あいつが潰れて寝ているすきに、わたしは逃げるようにマンションから出ました。とりあえず現金などは持ち、後のがさばる荷物は友人の家にすでに送ってあります。
わたしは震える右手を左手で押さえ、深く深呼吸をしました。やがて除夜の鐘が鳴りだし、見上げた空には小さく瞬く星が見えました。でも、それらはすぐに滲み出し見えなくなりました。自分が泣いていることに気が付いたのは、しばらくしてからでした。
友人と連絡を取り、今、バイト仲間と近くのファミレスにいると言うので、わたしも混ざることにしました。友人の顔を見て安心し、再び涙腺が緩みそうになります。慌てて化粧室に駆け込んだわたしを友人は優しく抱きしめてくれます。世界で一番優しいハグでした。
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