短編集「空色のマフラー」

ふるは ゆう

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空色のマフラーⅡ

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若菜わかなの様子が少しおかしいとわたしが気付いたのは夏休み明け頃だったと思う。
「どうしたの?」なんて、わたしは聞けなくてずるずると時間だけが過ぎていったけど。
今思えばあの頃から思い悩んでいたんだろう、生真面目なアイツらしい。
「ふうっ」わたしは一つ大きく息を吐いてから、改めて正面玄関にアイツを探した。
 吐いた息が白くなる2学期も終わり近く。わたしはお手製のマフラーに顔を半分埋めた。

 彼にマフラーを編んでプレゼントしたい。そう思ったのはゴールデンウイークにクラスの仲間たちとで遊園地に行ってからだった。
 その頃から少しずつ、彼とは仲間の中の一人から、ステップアップしていったんだと思う。
 そして、2学期になって若菜に本屋の立ち読みを見られた時。
 そう、あの時。編もうって決めたんだ……。
 だから、若菜が急にわたしを避けていることが理解できなくって。こうして彼女を待っている。

 たぶん若菜は彼が転校することを聞いていたんだよね。だからホームルームの時、あんな泣き出しそうな顔していたんだよね。
 悪いのは彼だ。若菜のせいじゃない。それなのにアイツはわたしを避け続けている。
 わたしは校門の陰に隠れるようにして若菜の帰りを待った。
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