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第二話・赤ずきん
壱
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校内に期末テスト終了を告げるチャイムが鳴り響いた。解答用紙をまとめた担任の五島は簡単に連絡事項を告げる。
「さあ、お楽しみの試験休みだ! 注意事項のプリントは配ってあるから読んどけよ」
もうこれ以上生徒を引き止めておけないことは五島も十分わかっている。
「羽目を外さない程度に楽しめよ! 俺は変なところに呼び出されたくはないからな」
みんなの失笑が聞こえ、担任の五島は出ていった。もうすぐクリスマス、今日から試験休み、喜ばない生徒は誰一人いない。
後ろの席をくるっと向いて大分千夏は親友に話しかけた。
「ヒナタ、どうする? カラオケで良い」
聞かれた福岡ヒナタは当然とばかり立ち上がり言った。
「カラオケ行く人!」
楽しい試験休みの始まりであった。
☆ ☆ ☆
カラオケボックスで隣に座った、千夏はこの時とばかりヒナタに話しかける。
「ねえヒナタ、あなた隣のクラスの佐藤くんから告られたんでしょう? 何でOKしなかったの」
千夏は前から気になっていた事をさっそく聞いてみた。
「え? 佐藤くん……」
無い無いと、ヒナタは手を振って否定する。
「わたし、同年代はダメ! 年上、それもワイルド系?」
ストローをくわえながら話すヒナタは真面目に話しているのか、冗談なのか千夏には分からなかった。
「気を付けなよ。ヒナタ、あんた美人なんだから怖い狼に食べられちゃうよ!」
「何、それ!」
千夏の妙な例えにヒナタは吹き出した。
「わたし、一人旅に行ってこようと思うんだ。初めてのお使い?」
とぼけた言い回しに、今度は千夏が思わず笑ってしまった。
「何、それ!」
「東北のおばあちゃんがね、入院しちゃったんだ。そこで一家を代表してわたしがお見舞いに行く事にね、なったんだよ!」
「その病院は泊まれるんだって、一泊二日の一人旅って感じ?」
ヒナタは楽しそうに話した。
「クリスマスは大丈夫なの?」
予定を心配する千夏をよそに、
「大丈夫! それまでには帰るから、わたしも参加でお願いね」
楽しいことには、全部参加したいヒナタだった。
「さあ、お楽しみの試験休みだ! 注意事項のプリントは配ってあるから読んどけよ」
もうこれ以上生徒を引き止めておけないことは五島も十分わかっている。
「羽目を外さない程度に楽しめよ! 俺は変なところに呼び出されたくはないからな」
みんなの失笑が聞こえ、担任の五島は出ていった。もうすぐクリスマス、今日から試験休み、喜ばない生徒は誰一人いない。
後ろの席をくるっと向いて大分千夏は親友に話しかけた。
「ヒナタ、どうする? カラオケで良い」
聞かれた福岡ヒナタは当然とばかり立ち上がり言った。
「カラオケ行く人!」
楽しい試験休みの始まりであった。
☆ ☆ ☆
カラオケボックスで隣に座った、千夏はこの時とばかりヒナタに話しかける。
「ねえヒナタ、あなた隣のクラスの佐藤くんから告られたんでしょう? 何でOKしなかったの」
千夏は前から気になっていた事をさっそく聞いてみた。
「え? 佐藤くん……」
無い無いと、ヒナタは手を振って否定する。
「わたし、同年代はダメ! 年上、それもワイルド系?」
ストローをくわえながら話すヒナタは真面目に話しているのか、冗談なのか千夏には分からなかった。
「気を付けなよ。ヒナタ、あんた美人なんだから怖い狼に食べられちゃうよ!」
「何、それ!」
千夏の妙な例えにヒナタは吹き出した。
「わたし、一人旅に行ってこようと思うんだ。初めてのお使い?」
とぼけた言い回しに、今度は千夏が思わず笑ってしまった。
「何、それ!」
「東北のおばあちゃんがね、入院しちゃったんだ。そこで一家を代表してわたしがお見舞いに行く事にね、なったんだよ!」
「その病院は泊まれるんだって、一泊二日の一人旅って感じ?」
ヒナタは楽しそうに話した。
「クリスマスは大丈夫なの?」
予定を心配する千夏をよそに、
「大丈夫! それまでには帰るから、わたしも参加でお願いね」
楽しいことには、全部参加したいヒナタだった。
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