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第五章 慟哭のヘルプマン
05 倉庫捜索
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仁と薫、佳子の小雪捜索部隊はそれぞれ内陸側と海岸側に分かれて捜索を開始した。
薫たちは仁の指示通り、まず一番遠い羽田空港の近くへとミニパトを走らせた。助手席の佳子は送られたデータをカーナビにセットしていく、
「ざっと、十三か所かな? 今日中に半分はこなしたいね」
「ノルマ七か、よし。頑張るぞ!」そう言って薫はスピードを上げた。
一方、仁は覆面パトカーを借りて池袋に来ていた。繁華街からは少し外れた雑居ビル、
「ここか……」
車を横付けすると、管理会社の人間が待っていた。一緒に目当ての階までエレベーターで登る。
「こちらは先月リフォームを済ませて来週には入居の予定ですが、何かございましたでしょうか?」心配そうに尋ねて来る。
「いや、この近辺で未入居物件への不法侵入が多発していましてね。確認にまわっているんですよ。他の物件でも何か不審な事がありましたら、警察に通報よろしくお願いします」と管理業者に丁寧に説明した。
「中は綺麗ですね。荒らされた形跡なしと」
仁は器用にガラケーで写真を撮って電脳へ送った。
「あと、一九か、サッサとやらないと日が暮れちまうな……」そう言って次の目的地へ車を向かわせた。
京浜島は羽田空港の隣に位置する小さな埋め立ての島でゴミの処理施設がある。空港のすぐ隣のため、京浜島つばさ公園は飛行機の離着陸が間近に見られるスポットとして人気がある場所でもあった。
薫と佳子は業者から借りた南京錠の鍵を持って車から降りた。
「ここだね!」
そこには五階建ての四角い武骨な倉庫が建っていた。ごみ処理施設の近くなのであまり良い立地条件ではない、トラックなどの交通量も多く、とても住んだり事務所にするには向かない場所だ。ただ、物流センターとなると話は違ってくる様だった。
「微妙な建物だね」薫が第一印象を言った。
「何、それ」
「うーん、それこそ、めちゃくちゃ古いわけでもなく、かと言って新しくもなく……」
「でも、南京錠が鍵って時点でボロ倉庫じゃない?」そう言いながら佳子が南京錠の鍵を解除した。
「待ってよ! 仁さんに注意しろって言われたでしょう」
「あ! そうだったけ?」
「お邪魔します……」
仁が心配するのもうなずける二人の捜査だった。
☆☆ ☆☆
電脳捜査課には逐次、報告と写真が送られて来ていた。
「仁さん、ガラケーでもちゃんとメール送れるんだ。写真も付いてる」涼の世代は、ガラケーの機能をあまり知らないようだった。
「こっちの方が問題だ。何だこの、微妙な倉庫って?」銀次郎は薫と佳子の報告の文面に頭を抱えていた。
まあ、それでも実働部隊の捜索は順調に進んでいる様だったが、銀次郎と涼の二人は予定変更を余儀なくされていた。
その理由は、午前中に捜査一課の取り調べを受けた金城が体調不良のため、午後から予定していた電脳の取り調べを拒否してきたのだ。
黒岩は、午前中に取り調べを担当した捜査一課の原田に事情を詳しく聞いた。
「原田、午前中の調べではどうだったんだ? 何か気になることは無かったか?」
「別に何時も通りだったが、俺もさっき聞いて驚いているんだ」
「仮病か?」
「何を今さら、そんなもの使ってどうすんだよ」
確かに、ここまで来て少しぐらい引き延ばしてどうなるってものではない。
「時間稼ぎが必要な場合では無いしな……」
一人つぶやき、考え込んだ銀次郎であった。
☆☆ ☆☆
「見てよ! 夜景が綺麗!」
「ホント。タワマンがこんなに近くに見えるなんて素敵ね」二人はタワーマンションをバックにスマホの自撮りに夢中になっていた。
今日のノルマをこなして、晴海ふ頭の倉庫を調べた後の自由時間での事である。決してサボってやっている訳では無い。
京浜島から晴海ふ頭まで、計七か所の報告と現場写真を送って、今日のミッションは終了した。夕暮れの防波堤に並んで薫と佳子はこう叫んだ。
「こら! 小雪。心配してるんだからね! 早く出て来い」
「冷蔵庫に残しておいたケーキ。賞味期限、明日だからねー!」
思い思いの言葉を海に向かって声にした。届くと信じて……。
一方、仁も今日のノルマを終え公園で缶コーヒーを飲んでいた。上機嫌なのか鼻歌が聞こえる。
「……キラ、キラ、ひかる。お空の星よ……」
ガラケーの待ち受け画像に映し出された、親子に語り掛ける。
「いよいよ明日だ。待っていろよ……」
運命の明日がもうすぐ訪れる。
薫たちは仁の指示通り、まず一番遠い羽田空港の近くへとミニパトを走らせた。助手席の佳子は送られたデータをカーナビにセットしていく、
「ざっと、十三か所かな? 今日中に半分はこなしたいね」
「ノルマ七か、よし。頑張るぞ!」そう言って薫はスピードを上げた。
一方、仁は覆面パトカーを借りて池袋に来ていた。繁華街からは少し外れた雑居ビル、
「ここか……」
車を横付けすると、管理会社の人間が待っていた。一緒に目当ての階までエレベーターで登る。
「こちらは先月リフォームを済ませて来週には入居の予定ですが、何かございましたでしょうか?」心配そうに尋ねて来る。
「いや、この近辺で未入居物件への不法侵入が多発していましてね。確認にまわっているんですよ。他の物件でも何か不審な事がありましたら、警察に通報よろしくお願いします」と管理業者に丁寧に説明した。
「中は綺麗ですね。荒らされた形跡なしと」
仁は器用にガラケーで写真を撮って電脳へ送った。
「あと、一九か、サッサとやらないと日が暮れちまうな……」そう言って次の目的地へ車を向かわせた。
京浜島は羽田空港の隣に位置する小さな埋め立ての島でゴミの処理施設がある。空港のすぐ隣のため、京浜島つばさ公園は飛行機の離着陸が間近に見られるスポットとして人気がある場所でもあった。
薫と佳子は業者から借りた南京錠の鍵を持って車から降りた。
「ここだね!」
そこには五階建ての四角い武骨な倉庫が建っていた。ごみ処理施設の近くなのであまり良い立地条件ではない、トラックなどの交通量も多く、とても住んだり事務所にするには向かない場所だ。ただ、物流センターとなると話は違ってくる様だった。
「微妙な建物だね」薫が第一印象を言った。
「何、それ」
「うーん、それこそ、めちゃくちゃ古いわけでもなく、かと言って新しくもなく……」
「でも、南京錠が鍵って時点でボロ倉庫じゃない?」そう言いながら佳子が南京錠の鍵を解除した。
「待ってよ! 仁さんに注意しろって言われたでしょう」
「あ! そうだったけ?」
「お邪魔します……」
仁が心配するのもうなずける二人の捜査だった。
☆☆ ☆☆
電脳捜査課には逐次、報告と写真が送られて来ていた。
「仁さん、ガラケーでもちゃんとメール送れるんだ。写真も付いてる」涼の世代は、ガラケーの機能をあまり知らないようだった。
「こっちの方が問題だ。何だこの、微妙な倉庫って?」銀次郎は薫と佳子の報告の文面に頭を抱えていた。
まあ、それでも実働部隊の捜索は順調に進んでいる様だったが、銀次郎と涼の二人は予定変更を余儀なくされていた。
その理由は、午前中に捜査一課の取り調べを受けた金城が体調不良のため、午後から予定していた電脳の取り調べを拒否してきたのだ。
黒岩は、午前中に取り調べを担当した捜査一課の原田に事情を詳しく聞いた。
「原田、午前中の調べではどうだったんだ? 何か気になることは無かったか?」
「別に何時も通りだったが、俺もさっき聞いて驚いているんだ」
「仮病か?」
「何を今さら、そんなもの使ってどうすんだよ」
確かに、ここまで来て少しぐらい引き延ばしてどうなるってものではない。
「時間稼ぎが必要な場合では無いしな……」
一人つぶやき、考え込んだ銀次郎であった。
☆☆ ☆☆
「見てよ! 夜景が綺麗!」
「ホント。タワマンがこんなに近くに見えるなんて素敵ね」二人はタワーマンションをバックにスマホの自撮りに夢中になっていた。
今日のノルマをこなして、晴海ふ頭の倉庫を調べた後の自由時間での事である。決してサボってやっている訳では無い。
京浜島から晴海ふ頭まで、計七か所の報告と現場写真を送って、今日のミッションは終了した。夕暮れの防波堤に並んで薫と佳子はこう叫んだ。
「こら! 小雪。心配してるんだからね! 早く出て来い」
「冷蔵庫に残しておいたケーキ。賞味期限、明日だからねー!」
思い思いの言葉を海に向かって声にした。届くと信じて……。
一方、仁も今日のノルマを終え公園で缶コーヒーを飲んでいた。上機嫌なのか鼻歌が聞こえる。
「……キラ、キラ、ひかる。お空の星よ……」
ガラケーの待ち受け画像に映し出された、親子に語り掛ける。
「いよいよ明日だ。待っていろよ……」
運命の明日がもうすぐ訪れる。
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