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第五章 慟哭のヘルプマン

04 死霊島二日目

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 孤島の朝は、小鳥のさえずりと波の音から始まる。いつもなら、セットされたスマホの目覚まし機能で叩き起こされる小雪であったが、今朝はスマホのアラームはオフにしての自然な目覚めであった。
「こんなの初めてだな。なんて清々しい朝なんだろう……」強制された目覚めではなく、不思議と自分の体がとても軽くなった感じがした。
 小雪が目覚めたのを計ったようにドアをノックする音がした。
「お嬢様、小雪お嬢様。お目覚めですか?」「朝食はどちらでお召し上がりになられます。こちらでも、外のテラスでも可能ですが」ピッパー君が朝食の用意をしてくれたのだ。

 まさに、至れり尽くせりの対応だ。こんなバカンス気分に浸っていて良いものだろうか。このままでは人間がダメになりそう、などと考えながらも、小雪は最近は忙し過ぎたから少しはゆっくりしても罰はあたらないとか、一人、心の中で葛藤を繰り返していた。
 海の見えるコテージのテラスで優雅に朝食を取った小雪は、食器を片づけに来たピッパー君に改めて聞いてみた。
「ピッパー君。わたしは、いつまでここに居る予定になっているの? 迎えの船は来るの?」
「特に何も指示は受けておりません。迎えの船の件も私は聞いてはおりません」すまなそうにピッパー君は答えた。
「じゃあ、こちらからの連絡はどうしているの?」
「連絡ですか?」
「そう、連絡方法ぐらいあるでしょう?」何か凄い盲点のようなモノがある気がして、わたしは尋ねた。

「伝書バト……」
「ハト?」
「狼煙……」
「マジ?」

「冗談です!」後ろを向きながらピッパー君は答えた。肩が微妙に動いている……。 
 コノヤロー。笑っているな! 
 またしてもからかわれた小雪であった。

 すごくフレンドリーになってきたピッパー君との楽しいが進展しない会話をしてから。小雪は、再び島を詳しく調べることにした。

 昨日、簡単にまわってみたがこの島は本当に狭い。周囲1キロ、2~30分で一周出来てしまう。
 それでも何か重要なモノを見落としていないかと思い、じっくり観察しながら歩いた。

 東と南の岩場には小舟を隠せるような場所も無く、この島よりもひと回り小さな島が三つ少し距離を置いて点在していた。当然、人の住んでいる形跡は無い。

「あの島に船があっても、どうにもならないよね……」小雪はあきらめて次の場所に移動する。
 西も北もくまなく調べてから、最終的にここに辿り着いた。

 死霊の館に……。

 恐る恐る、近付いて古びた窓から中を覗いていると、後ろから生暖かい風が……。
「って! お前か!」

 わたしのすぐ後ろにピッパー君が立って風を送っていた。
「要らん事するなー!」
 わたしは、もう何度目かの突っ込みをピッパー君に入れた。 
 絶対楽しんでいるよこいつ。

「小雪お嬢様。よろしければこの死霊の館をご案内いたしますが、この館で起こった悲惨な事件についても事細かく……」
 わたしは速攻で回れ右をして西のコテージに逃げ込んだ。

「本当にひどいわね『ヘッパー君』の意地悪」
「私は『ピッパー君』です。そんな匂いそうな名前ではありません」
「ごめんね、『ゲッパ―君』間違えちゃった」
「人を嘔吐物のような名前で呼ばないで下さい『ピッパー君』です」
「デッパー君?」
「ちゃいまんがな!」
 一人と一体の不毛なボケと突っ込みであった。

 こうして、二日目も何も無く終わろうとしていた。ピッパー君の作る美味しい夕飯をいただき、コーヒーを飲んでゆっくりした時間を過ごす。人生の充実した時間……。
 小雪は、ふと、犯人の事を考えた。
「TV局では、人殺しまでさせちゃったんだよね……」
 何が原因で犯人をそこまでさせたのか?
次に誰を狙っているのか? 情報が無いので想像する事すら出来ない。
「ネットが無いと、わたしは全然ダメね……」ぐるぐると思考がループしだした。 

「さてと」
 小雪は、いい加減考えることを止め、スマホのタイマーをセットして早めに布団に入る。

 明日のために……。(死霊島二日目終了)
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