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第四章 窓辺のコッペリア

11 優しい銀次郎

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――― 真実とはこんなにも醜いものなのでしょうか? 探し求めてはいけないのでしょうか……

 ◇ Real world ◇

 赤色(ルージュ)のモニターが突然消えた!
「くそ! どうなっている!」男はモニター画面を叩いて喚いた。

 距離の離れたこの場所からでは、実際の状況が分かりずらかった。もう少し近づくかこの距離を維持するべきか……判断しかねているところに、急に外からワゴンのスライドドアが開かれた。
 ギョッとして振り向いた瞬間! 口に何か固いものを押し込まれる。

「!」何も言えない男に対して、入って来た悪人顔の男はこう言う。

「オイ、お前! このまま、頭を吹っ飛ばされたくなかったら、自動人形(オートマタ)の戦闘を止めさせろ!」
 そう言いながら、さらに銃口を口の中に押し込んでくる。
「俺は、気が長い方では無いんでな……一度しか言わないぞ」返答に躊躇していると……。
「……そうか! じゃあ仕方ないな……」ニヤリと笑って引き金を引こうとしする。

 砂山鉄也は震える指でどうにか自動人形(オートマタ)の戦闘モードを解除し、両手を挙げて懇願した。
「頼む、頼むから殺さないでくれ……俺は、まだ死にたくないんだ」
「良い子だ。じゃあもう一つ、自爆装置のスイッチも切ってもらおうか!」入って来た男は口から引き抜いた銃口を、今度は眉間に強く押し当てそう言った。
「ま、待ってくれ! どうしてそれを……」砂山は驚きを隠せなかった。

「ばれているんだよ。全てな! まあ、良いぜ。お前を殺して、車に火を着けても結果同じだからな」
「どうする? そろそろ俺も待てなくなりそうだが……」眉間当てた拳銃を更に強く押し込んでくる。

 パニクッた、砂山はズボンのポケットからスマホを出し拝んで言った。
「た、頼む。命だけは助けてくれ! 俺は指示されただけなんだ!」そう言って必死で縋りつこうとする砂山からスマホをもぎ取り、邪魔だとばかり蹴りつけてからこう言う。

「最後のチャンスだ! 3秒待つ、誰の指示だ?」

「1」
「2」
「分からないんだ! ただ、奴は自分のことをヘルプマンと言っていた!」

「……ヘルプマンか……」

「銀さん! 大丈夫ですか?」慌てて、涼が車のスライドドアを開けて入ってくる。眉間に拳銃を当てていた銀次郎は、そのままの体勢で後ろ手で涼にスマホを渡した。
「これと自動人形(オートマタ)三体に爆発物がセットされているはずだ! すぐ隔離して、爆弾処理班を呼べ!」

「爆弾! 分かりました」前回の事件で巻き込まれた涼はビビりながら対応した。

「警察だ! 20時15分、藤堂社長襲撃の現行犯として逮捕する」

 助教授の砂山鉄也は捜査一課の原田に手錠をかけられ連行されていく。
「おっ、お前。警察官だったのかよ!」不服そうに砂山が銀次郎に突っかかった。
「ん? 他に何だと思ったんだ?」
「俺は、てっきり殺し屋かと……拳銃を押し付けられたんだぞ!」他の刑事にわめき散らした。
 しかし、銀次郎はだからどうしたと言う感じで拳銃をとり出した。

「よく見ろ! 水鉄砲だ。おもちゃで脅かされて吐いたんだよな? ご苦労さん」

 ポンポンと銀次郎に肩を叩かれた砂山はガックリと崩れたのだった。

 ☆☆ ☆☆

「銀さん! どうして爆弾のことまで分かったんですか?」後を、駆けつけて来た爆弾処理班に任せた涼が聞いて来る。
「なに、ネタを明かせば、お前の仲間の『UNKNOWN』のクロウとバスターの入れ知恵だ。ヘルプマン絡みなら有るとな」
「あいつらですか? 俺でなく銀さんに?」
「俺も匂ったんで、予め頼んでおいたんだ。刑事の勘もバカにならないだろう」やけに得意げな銀さんだった。

 でも、これでヘルプマンに繋がる重要な証拠が手に入った。電脳捜査課、『UNKNOWN』の両方で解析をすれば一体どんなモノが出て来るのか?涼は浮足立つ気持ちを必死に抑えていた。

 一方、銀次郎は淡々と実務をこなしていた。砂山を捜査一課に、藤堂社長を涼と小雪に任せて。爆弾処理の終わるのを待ち、終了後、自動人形(オートマタ)たちを回収して電脳捜査課に戻るところだった。

「課長、こっちはこれで完了です! 後はそちらに追加で自動人形(オートマタ)三体を運びますがよろしいですか?」
「ええ、有難う。受け取り準備して待ってます。ご苦労様でした」
「何か、新規の連絡は無かったですか?」
「いいえ、特に……大久保教授と金色(ドレ)の仮想空間(バーチャル)へのログイン記録は頂けたわ。今、こっちで解析中。戻ったら詳しくは話すわね」
「ええ、ありがとうございます」

 車中が、沈黙で満たされる。
「……おじ様……」
 その静かな空間に申し訳ないような声が小さく響いた。

「……みんなを助けてくれて……有難う……」
 助手席の水色(ブルシェル)がいつもよりも更に小さな声であったが、しっかりと感謝の気持ちを伝えてきた。
 銀次郎は何も言わず、だだ、大きな手で水色(ブルシェル)の頭をなでた。後ろの三体も何も言わないが、微かにすすり泣く声が星の無い夜を更に暗くしていった。
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