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第四章 窓辺のコッペリア
08 真実のリア
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――― だれ一人欠けないで! みんなで一緒に……それがみんなの願いだから
◇ Real world ◇
ダイナミック・ロボテック社の社長、藤堂進は白衣を着て如何にも研究者上がりと言う感じの人物だった。赤羽涼と中山小雪は研究所の一室に案内され、話を聞くことになる。社長室でどっかり構えるより、研究に没頭する方が良いと言うタイプの様だ。
「すいません! わざわざお時間をいただいて」
「いいえ、私も娘の件がまさか大久保教授の研究室と関係があるとは思いもしなかったもので驚いているんですよ」
自分の娘が巻き込まれた事で、いきなり他人ごとではなくなった感じで焦っているように涼には見えた。
「それで、何か進展があったと言うことですか?」
「いいえ、助教授の砂山との関係についてお聞きしたくて来ました」
「助教授の砂山ですか?」
「はい! 教授になれなくて社長を恨んでいると噂を聞きまして……」涼は藤堂の顔色を観察しながら話す。
「ああ! その噂ですか。当社だけではなく他の協賛企業さんも同様ですよ。私どもだけが恨まれるのはおかしいですよね。実績が全て。酷いと思われるかもしれませんがこちらも生き残らなければならない。シビアな世界ですから……」
「そうですか……」
競争社会の厳しさに大学の研究までもがさらされている感じがいたたまれなかった。
「次は、私が襲われると言うのですか?」不安げに藤堂は涼たちを見る。
「その可能性がありますので、ご自宅と研究所に警護の刑事を置きます。それに、社長自身にも自分たちが付きますのでよろしくお願いします」
「そうですか……すいませんがお願いします」仕方なしに頭を下げた。
交代で藤堂社長の警護をすることになったが、自動人形(オートマタ)三体が相手ではどうしようもない。
「まあ、俺たちは数合わせって感じかな……」涼も小雪も荒事には全く向かない。
「でも、やるからには出来ることをしっかりやらないと!」あくまでも真面目な小雪だった。
☆☆ ☆☆
今井信吾(フランツ)と今井千鶴(スワニー)を乗せたシルバーのセダンは重苦しい空気に包まれていた。
「……おじ様……」
「ん?」
急に水色(ブルシェル)が小声で話しかけて来る。
「……機密事項……」
銀次郎はすぐに気が付き、ハンドルを握りながら後ろの席の二人に声を掛けた。
「これから二人を連れて行く電脳捜査課は特殊な所なんでな! 色々話されると都合の悪い事が多い部署なんだ。この車の中の事もそう、間違ってもSNSなんかに上げるなよ!」
「どうなるかは……俺も保証しかねるからな!」
強面刑事の声にビビりながら二人は大きく首を縦に振った。
垂れ落ちた長い水色の髪の毛を器用に帽子の中にしまった水色(ブルシェル)をじっと観察して、決心したかのように千鶴(スワニー)は声をかけた。
「リアなの? リアよね!」
その声に、ゆっくり振り向いた水色(ブルシェル)は落ち着いた口調で答える。
「……だれ? その人……」
「……わたしは知らない……」
「……でも……」
「……どうして……そう思ったの?……」
水色(ブルシェル)は首を傾げる。
「ごめんなさい。何となく、リアと雰囲気が似ていたの……まるで、人形のような……」
千鶴(スワニー)の言葉に銀次郎は反応する。
「もしかするとビンゴかも知れないぞ! でも、どうして仮想空間(バーチャル)になんか居たんだ!」銀次郎は急に興奮して大声を出した。
水色(ブルシェル)は何も言わずに帽子のリボンをほどき、千鶴(スワニー)に振り向いて声をかけた。
「……私たちクルール・シリーズは共通パーツが多いの……だから姉妹に見えるかも……」
そこには、髪の色と目の色が違うだけの少し幼いリアが居た!!
☆☆ ☆☆
二人を乗せた車は警視庁の地下駐車場に入って、そこからは別の刑事に案内され電脳捜査課のあるフロアーに降りる。
厳重なセキュリティ・チェックを受けスマホなど預かられ、そしてやっと電脳の部屋に案内された。
その部屋はガラス張りで複数に区切られているが、片方の壁が全てモニターになっていて、まさに監視室と言う感じだった。
中央の部屋からスーツ姿の女性が近づいてくる。
「黒岩刑事から報告は受けています。電話で話しましたね、わたしが電脳捜査課の課長、白河です」
優しそうな30代後半の女性だった。
「あなたたちが会った親子の事を時間を追って詳しく教えて欲しいの、なるべく正確にね」
そう言って二人に椅子をすすめじっくりと話を聞いてくれる。
初めて挨拶に行ってから、散歩で挨拶をするようになって、相談を受け、結婚式を挙げて、感謝されて別れた。
この一~二カ月の出来事、それから一カ月ぐらいは過ぎている……。
「教授が退官されたのが三カ月前、確かに合うわね……」白河課長は一人つぶやいた。
「聞こえる? 黒岩さん! 赤羽くんも!」
「ああ!」
「はい!」
音声だけだが会議は始まり、モニターにはテレワークの佐久間さんが器用に議事録を作ってくれている。
最後にもう一人、コーヒーを入れて運んできた女性が席に着いた。
その容姿を見て、フランツとスワニーは息を飲んだ!
まさしくそれはリアと瓜二つであった。
☆☆ ☆☆
「あなたたちが知っている『リアさん』と瓜二つですか?」
白河課長にそう聞かれたフランツたちは言葉も出ずに立ち上がってしまっていた。
それを確認して白河は話を続ける。
「この娘は、自動人形(オートマタ)の紫色(ヴィオレット)! あなたたちと会っていた金色(ドレ)の姉妹に当たるわ」
「実は、三カ月前辺りから二人は失踪しているの……まさか、仮想空間(バーチャル)で目撃者が居るなんて考えもしなかったから、その経緯を話して欲しかったのよ」
失踪事件の目撃者と言う感じなのだろう、困惑しながらもフランツたちは知っている事全てを話した。
リアが見つかることを願って……。
「黒岩さん! こちらで仮想空間(バーチャル)での行動記録(ログ)の提示請求したいので、緑川CEOに貴方の名前出すけど良い?」
「どうぞ! どうぞ! コネはしっかり使ってください」(緑川とは事件で共闘した事でいまだに親しく連絡を取り合っていた)
「有難う」
「それともう一つ、大久保元教授は通院履歴があるんだけど……そちらもどうにかならない?」
「病院ですか……分かりました。夏美、いや、夏美先生に頼んでみましょう」
「ごめんなさいね、色々押し付けちゃって」
「いえ! 使えるものはしっかり使わないと! ただ……こっちは高くつくかな……」
「ふっ、ふっ、高くではなくて、ご褒美が大変なんでしょ?」
「勘弁して下さい……課長」
夏美の要求を色々と想像して考えるのを止めた黒岩だった。(莫妄想・妄想することなかれである)
◇ Real world ◇
ダイナミック・ロボテック社の社長、藤堂進は白衣を着て如何にも研究者上がりと言う感じの人物だった。赤羽涼と中山小雪は研究所の一室に案内され、話を聞くことになる。社長室でどっかり構えるより、研究に没頭する方が良いと言うタイプの様だ。
「すいません! わざわざお時間をいただいて」
「いいえ、私も娘の件がまさか大久保教授の研究室と関係があるとは思いもしなかったもので驚いているんですよ」
自分の娘が巻き込まれた事で、いきなり他人ごとではなくなった感じで焦っているように涼には見えた。
「それで、何か進展があったと言うことですか?」
「いいえ、助教授の砂山との関係についてお聞きしたくて来ました」
「助教授の砂山ですか?」
「はい! 教授になれなくて社長を恨んでいると噂を聞きまして……」涼は藤堂の顔色を観察しながら話す。
「ああ! その噂ですか。当社だけではなく他の協賛企業さんも同様ですよ。私どもだけが恨まれるのはおかしいですよね。実績が全て。酷いと思われるかもしれませんがこちらも生き残らなければならない。シビアな世界ですから……」
「そうですか……」
競争社会の厳しさに大学の研究までもがさらされている感じがいたたまれなかった。
「次は、私が襲われると言うのですか?」不安げに藤堂は涼たちを見る。
「その可能性がありますので、ご自宅と研究所に警護の刑事を置きます。それに、社長自身にも自分たちが付きますのでよろしくお願いします」
「そうですか……すいませんがお願いします」仕方なしに頭を下げた。
交代で藤堂社長の警護をすることになったが、自動人形(オートマタ)三体が相手ではどうしようもない。
「まあ、俺たちは数合わせって感じかな……」涼も小雪も荒事には全く向かない。
「でも、やるからには出来ることをしっかりやらないと!」あくまでも真面目な小雪だった。
☆☆ ☆☆
今井信吾(フランツ)と今井千鶴(スワニー)を乗せたシルバーのセダンは重苦しい空気に包まれていた。
「……おじ様……」
「ん?」
急に水色(ブルシェル)が小声で話しかけて来る。
「……機密事項……」
銀次郎はすぐに気が付き、ハンドルを握りながら後ろの席の二人に声を掛けた。
「これから二人を連れて行く電脳捜査課は特殊な所なんでな! 色々話されると都合の悪い事が多い部署なんだ。この車の中の事もそう、間違ってもSNSなんかに上げるなよ!」
「どうなるかは……俺も保証しかねるからな!」
強面刑事の声にビビりながら二人は大きく首を縦に振った。
垂れ落ちた長い水色の髪の毛を器用に帽子の中にしまった水色(ブルシェル)をじっと観察して、決心したかのように千鶴(スワニー)は声をかけた。
「リアなの? リアよね!」
その声に、ゆっくり振り向いた水色(ブルシェル)は落ち着いた口調で答える。
「……だれ? その人……」
「……わたしは知らない……」
「……でも……」
「……どうして……そう思ったの?……」
水色(ブルシェル)は首を傾げる。
「ごめんなさい。何となく、リアと雰囲気が似ていたの……まるで、人形のような……」
千鶴(スワニー)の言葉に銀次郎は反応する。
「もしかするとビンゴかも知れないぞ! でも、どうして仮想空間(バーチャル)になんか居たんだ!」銀次郎は急に興奮して大声を出した。
水色(ブルシェル)は何も言わずに帽子のリボンをほどき、千鶴(スワニー)に振り向いて声をかけた。
「……私たちクルール・シリーズは共通パーツが多いの……だから姉妹に見えるかも……」
そこには、髪の色と目の色が違うだけの少し幼いリアが居た!!
☆☆ ☆☆
二人を乗せた車は警視庁の地下駐車場に入って、そこからは別の刑事に案内され電脳捜査課のあるフロアーに降りる。
厳重なセキュリティ・チェックを受けスマホなど預かられ、そしてやっと電脳の部屋に案内された。
その部屋はガラス張りで複数に区切られているが、片方の壁が全てモニターになっていて、まさに監視室と言う感じだった。
中央の部屋からスーツ姿の女性が近づいてくる。
「黒岩刑事から報告は受けています。電話で話しましたね、わたしが電脳捜査課の課長、白河です」
優しそうな30代後半の女性だった。
「あなたたちが会った親子の事を時間を追って詳しく教えて欲しいの、なるべく正確にね」
そう言って二人に椅子をすすめじっくりと話を聞いてくれる。
初めて挨拶に行ってから、散歩で挨拶をするようになって、相談を受け、結婚式を挙げて、感謝されて別れた。
この一~二カ月の出来事、それから一カ月ぐらいは過ぎている……。
「教授が退官されたのが三カ月前、確かに合うわね……」白河課長は一人つぶやいた。
「聞こえる? 黒岩さん! 赤羽くんも!」
「ああ!」
「はい!」
音声だけだが会議は始まり、モニターにはテレワークの佐久間さんが器用に議事録を作ってくれている。
最後にもう一人、コーヒーを入れて運んできた女性が席に着いた。
その容姿を見て、フランツとスワニーは息を飲んだ!
まさしくそれはリアと瓜二つであった。
☆☆ ☆☆
「あなたたちが知っている『リアさん』と瓜二つですか?」
白河課長にそう聞かれたフランツたちは言葉も出ずに立ち上がってしまっていた。
それを確認して白河は話を続ける。
「この娘は、自動人形(オートマタ)の紫色(ヴィオレット)! あなたたちと会っていた金色(ドレ)の姉妹に当たるわ」
「実は、三カ月前辺りから二人は失踪しているの……まさか、仮想空間(バーチャル)で目撃者が居るなんて考えもしなかったから、その経緯を話して欲しかったのよ」
失踪事件の目撃者と言う感じなのだろう、困惑しながらもフランツたちは知っている事全てを話した。
リアが見つかることを願って……。
「黒岩さん! こちらで仮想空間(バーチャル)での行動記録(ログ)の提示請求したいので、緑川CEOに貴方の名前出すけど良い?」
「どうぞ! どうぞ! コネはしっかり使ってください」(緑川とは事件で共闘した事でいまだに親しく連絡を取り合っていた)
「有難う」
「それともう一つ、大久保元教授は通院履歴があるんだけど……そちらもどうにかならない?」
「病院ですか……分かりました。夏美、いや、夏美先生に頼んでみましょう」
「ごめんなさいね、色々押し付けちゃって」
「いえ! 使えるものはしっかり使わないと! ただ……こっちは高くつくかな……」
「ふっ、ふっ、高くではなくて、ご褒美が大変なんでしょ?」
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夏美の要求を色々と想像して考えるのを止めた黒岩だった。(莫妄想・妄想することなかれである)
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