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第四章 窓辺のコッペリア
06 無口な水色(ブルシェル)
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――― みんな心配してくれるの? 私はただマスターを笑顔にしたかっただけなの……
◇ Real world ◇
「これ見て、赤色(ルージュ)よ! 間違いないわ」
昨夜の監視カメラの映像をチェックしていた、赤羽涼の腕に絡みついている桃色(ローズ)が大きな声を出した。
「お前らの仲間か?」黒岩が覗き込む。
「ええ! 失踪した三体の内の一体、赤色(ルージュ)よ」
「じゃあ、もう二体も一緒の可能性が高い……」
「そうなるわね」
紫色(ヴィオレット)が冷静に答えた。
「でも、おかしくねえか? こいつらは助教授(サブマスター)の命令を聞くんだろう? だったら、そいつが犯人で決定か?」
単純に行くとそうなるが……でも、涼は別の考えを示す。
「捕まって強要されているとしたら……」
「まあ、あるかもな……」
結局、確保しなければ真相はハッキリしない様だ。
今回の犯行の手口なのですが……。
小雪が涼の腕に絡みついている桃色(ローズ)をチラチラ見ながら報告する。
「失踪した三体の内の一体、赤色(ルージュ)の犯行は確かですが、誰がどのような意図での犯行かははっきりしません。
付近の住民の証言で、不審な黒のワンボックスが目撃されていますが、ナンバーなど詳しい情報はありませんでした」
「被害者の大学生と研究室や助教授とのつながりは?」白河課長が聞く。
「特にありません。違う大学の学生ですし、その大学との交流もほとんど無いそうです」
「違う大学ね……」ここも決め手がない。
「手始めに近くの反撃されにくい奴を襲っただけなんじゃあ?」黒岩銀次郎が口を挟む。
「一体で手におえなかったら、もう二体も出すつもりだったんですかね?」赤羽涼も思ったことを口にした。
「じゃあ、また、今夜あたりやる可能性が高いのね?」
「そうだな俺ならやる! なんせ、初手で上手くいったんだからな」
課長の質問にそう答えた銀次郎は何故かとても楽しそうだった。
☆☆ ☆☆
「現場近くで、元教授(マスター)と助教授(サブマスター)に関係する施設はないの?」白河課長が涼に問いかける。
涼はデータベースからヒットした項目をモニターに映し出す。
「そうですね、二人の自宅と後は……近くに協賛企業の研究所がありますね!」
「協賛企業?」
「ええ! 最近では企業が大学の研究室と共同で開発などをするケースが増えています。大久保教授の自動人形(オートマタ)の製作に協力している企業もかなりの数ありますよ。まあ、どこも近くって訳じゃないですけど……」
日本全国の地図にたくさんの印の付いたものが映し出される。
「ここ! ダイナミック・ロボテック社ならすぐ近くです」
都内のそれも大学の近くのビルがモニターに映し出された。
「当たってみる価値はありそうだな!」
銀次郎は腰を上げ、三体の自動人形(オートマタ)を振り返って聞いた。
「オイ!お前ら。あの三体は強いのか?」
紫色(ヴィオレット)が返答に困っていると、隣の水色(ブルシェル)が答えた。
「……あの三体は攻撃型。戦闘用に作られた……私たち思考型とは違う……」
「……気を付けて……それぞれ武器を持っている……殺傷能力は高いから……」
「ありがとよ! 心配してくれるんだ」と言って、銀次郎は水色(ブルシェル)の頭をなでた。
「……そんなんじゃない……ばか……」横を向いてしまった。
水色(ブルシェル)は無口だが案外優しい性格の様だ。
突然、音声による通信が電脳のメインコントロール室に入った。
「クロウだ! すまないが、急ぎで教えたい事が出来たんだが聞くか?」
ホワイトハッカーである『unknown』のクロウが急に連絡をして来たのだ。
「あんたら、自動人形(オートマタ)に襲われた女子大生を調べていたよな!
ちゃんと調べたか? 藤堂カオル、あれはダイナミック・ロボテック社の社長の娘だぞ!」
「え!」
聞いていた全員が驚きの声をあげた。
「驚くことはまだあるぞ! そこの社長、藤堂進は金にモノを言わせて研究室の教授を他から引っ張ってきたらしい。お蔭で助教授の砂山は教授に成り損ねたって話だ。
まあ、実際に実績のある人間に研究室を引き継いでもらった方が協賛企業としちゃあ成果も出やすいしな! 一概にひどいこととは言いにくいが……助教授の砂山としちゃあ、恨みたくもなるだろうぜ!」
クロウの何処から手に入れたか分からない情報により、一気に真相に近づけたかもしれない。電脳のメンバーは急いで動き出した。
☆☆ ☆☆
まずは正攻法で、涼と小雪が社長の藤堂進にアポイントメントをとって早速会いに行った。
次に、捜査一課に連絡し応援を頼み、可能性の高い場所に張り込んでもらうことにする。
「場所は一択、社長宅で決まりと言いたいところだが……抑えに一番近い研究所ってところだな」
銀次郎の考えでこの2ヶ所に絞られた。
「俺たちは社長宅を見るから、研究所は頼む!」いつもの捜査一課の三人に銀次郎は頼んだ。
「おい! 銀さん。また例の自動人形(オートマタ)今度は三体かよ! どう対処するんだよ」捜査一課の原田が不安げに聞く。
「大丈夫だ! お前らもよく知っている助っ人を呼んである、現地集合だ!」銀次郎は気安く請け負った。
「さて、俺も動くが……課長! 自動人形(オートマタ)どれか一体借りて行きますが良いですか?」
「ええ! 構わないけど……」(「壊さないでね!」銀次郎はあまり課長からは信用されていなかった)
銀次郎は紫色(ヴィオレット)に聞いた。
「おい! 奴らの説得にはどいつを連れて行くのがベストだ!」
紫色(ヴィオレット)は少し考えてからこう言った。
「私はダメ! 逆に反発されちゃう。桃色(ローズ)もからかっているみたいになっちゃうし……」
「消去法で水色(ブルシェル)か?」
「そうね……そうなるわ」
銀次郎は水色(ブルシェル)の正面に立ち膝を折り目線を合わせて優しく話す。
「水色(ブルシェル)! お前の気持ちをしっかり伝えてくれ。それだけで良い」
「出来るか?」
「……うん! ……やってみる……」
水色(ブルシェル)は小声だがしっかりと銀次郎の目を見て頷いた。
◇ Real world ◇
「これ見て、赤色(ルージュ)よ! 間違いないわ」
昨夜の監視カメラの映像をチェックしていた、赤羽涼の腕に絡みついている桃色(ローズ)が大きな声を出した。
「お前らの仲間か?」黒岩が覗き込む。
「ええ! 失踪した三体の内の一体、赤色(ルージュ)よ」
「じゃあ、もう二体も一緒の可能性が高い……」
「そうなるわね」
紫色(ヴィオレット)が冷静に答えた。
「でも、おかしくねえか? こいつらは助教授(サブマスター)の命令を聞くんだろう? だったら、そいつが犯人で決定か?」
単純に行くとそうなるが……でも、涼は別の考えを示す。
「捕まって強要されているとしたら……」
「まあ、あるかもな……」
結局、確保しなければ真相はハッキリしない様だ。
今回の犯行の手口なのですが……。
小雪が涼の腕に絡みついている桃色(ローズ)をチラチラ見ながら報告する。
「失踪した三体の内の一体、赤色(ルージュ)の犯行は確かですが、誰がどのような意図での犯行かははっきりしません。
付近の住民の証言で、不審な黒のワンボックスが目撃されていますが、ナンバーなど詳しい情報はありませんでした」
「被害者の大学生と研究室や助教授とのつながりは?」白河課長が聞く。
「特にありません。違う大学の学生ですし、その大学との交流もほとんど無いそうです」
「違う大学ね……」ここも決め手がない。
「手始めに近くの反撃されにくい奴を襲っただけなんじゃあ?」黒岩銀次郎が口を挟む。
「一体で手におえなかったら、もう二体も出すつもりだったんですかね?」赤羽涼も思ったことを口にした。
「じゃあ、また、今夜あたりやる可能性が高いのね?」
「そうだな俺ならやる! なんせ、初手で上手くいったんだからな」
課長の質問にそう答えた銀次郎は何故かとても楽しそうだった。
☆☆ ☆☆
「現場近くで、元教授(マスター)と助教授(サブマスター)に関係する施設はないの?」白河課長が涼に問いかける。
涼はデータベースからヒットした項目をモニターに映し出す。
「そうですね、二人の自宅と後は……近くに協賛企業の研究所がありますね!」
「協賛企業?」
「ええ! 最近では企業が大学の研究室と共同で開発などをするケースが増えています。大久保教授の自動人形(オートマタ)の製作に協力している企業もかなりの数ありますよ。まあ、どこも近くって訳じゃないですけど……」
日本全国の地図にたくさんの印の付いたものが映し出される。
「ここ! ダイナミック・ロボテック社ならすぐ近くです」
都内のそれも大学の近くのビルがモニターに映し出された。
「当たってみる価値はありそうだな!」
銀次郎は腰を上げ、三体の自動人形(オートマタ)を振り返って聞いた。
「オイ!お前ら。あの三体は強いのか?」
紫色(ヴィオレット)が返答に困っていると、隣の水色(ブルシェル)が答えた。
「……あの三体は攻撃型。戦闘用に作られた……私たち思考型とは違う……」
「……気を付けて……それぞれ武器を持っている……殺傷能力は高いから……」
「ありがとよ! 心配してくれるんだ」と言って、銀次郎は水色(ブルシェル)の頭をなでた。
「……そんなんじゃない……ばか……」横を向いてしまった。
水色(ブルシェル)は無口だが案外優しい性格の様だ。
突然、音声による通信が電脳のメインコントロール室に入った。
「クロウだ! すまないが、急ぎで教えたい事が出来たんだが聞くか?」
ホワイトハッカーである『unknown』のクロウが急に連絡をして来たのだ。
「あんたら、自動人形(オートマタ)に襲われた女子大生を調べていたよな!
ちゃんと調べたか? 藤堂カオル、あれはダイナミック・ロボテック社の社長の娘だぞ!」
「え!」
聞いていた全員が驚きの声をあげた。
「驚くことはまだあるぞ! そこの社長、藤堂進は金にモノを言わせて研究室の教授を他から引っ張ってきたらしい。お蔭で助教授の砂山は教授に成り損ねたって話だ。
まあ、実際に実績のある人間に研究室を引き継いでもらった方が協賛企業としちゃあ成果も出やすいしな! 一概にひどいこととは言いにくいが……助教授の砂山としちゃあ、恨みたくもなるだろうぜ!」
クロウの何処から手に入れたか分からない情報により、一気に真相に近づけたかもしれない。電脳のメンバーは急いで動き出した。
☆☆ ☆☆
まずは正攻法で、涼と小雪が社長の藤堂進にアポイントメントをとって早速会いに行った。
次に、捜査一課に連絡し応援を頼み、可能性の高い場所に張り込んでもらうことにする。
「場所は一択、社長宅で決まりと言いたいところだが……抑えに一番近い研究所ってところだな」
銀次郎の考えでこの2ヶ所に絞られた。
「俺たちは社長宅を見るから、研究所は頼む!」いつもの捜査一課の三人に銀次郎は頼んだ。
「おい! 銀さん。また例の自動人形(オートマタ)今度は三体かよ! どう対処するんだよ」捜査一課の原田が不安げに聞く。
「大丈夫だ! お前らもよく知っている助っ人を呼んである、現地集合だ!」銀次郎は気安く請け負った。
「さて、俺も動くが……課長! 自動人形(オートマタ)どれか一体借りて行きますが良いですか?」
「ええ! 構わないけど……」(「壊さないでね!」銀次郎はあまり課長からは信用されていなかった)
銀次郎は紫色(ヴィオレット)に聞いた。
「おい! 奴らの説得にはどいつを連れて行くのがベストだ!」
紫色(ヴィオレット)は少し考えてからこう言った。
「私はダメ! 逆に反発されちゃう。桃色(ローズ)もからかっているみたいになっちゃうし……」
「消去法で水色(ブルシェル)か?」
「そうね……そうなるわ」
銀次郎は水色(ブルシェル)の正面に立ち膝を折り目線を合わせて優しく話す。
「水色(ブルシェル)! お前の気持ちをしっかり伝えてくれ。それだけで良い」
「出来るか?」
「……うん! ……やってみる……」
水色(ブルシェル)は小声だがしっかりと銀次郎の目を見て頷いた。
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