電脳捜査課 黒岩銀次郎の受難

第四章 窓辺のコッペリア

00 プロローグ

――― 嬉しい、苦しい、切ない、この胸に渦巻く感情は一体何なんでしょうか？ 

　高原の暖かい日差しが教会のステンドグラスを通して降り注いでいる。
　そんなゆったりした光景の中に、一人せわしなく時間を気にする男がいた。
「舞（まい）！ 準備はできたのか？」
「待って、お父さん！　もうすぐだから」
　娘の準備に外で待ちぼうけをくっている父であった。

　やがて、部屋のドアが開けられ、中には純白のドレスに身を包んだ娘が立っていた。
「あのー、どう？　お父さん」
「……」父は言葉が出なかった。

　色々な思いが走馬灯のように流れていく。
　母を早いうちに亡くし、ここまで色々なことがあった。それでも今、この時、幸せな娘の姿を見て父親は涙を流せる幸せを噛み締めていた。

「とても綺麗だよ！　舞」
　二人は腕を組んでバージンロードへ向かっていった。