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第三章 奈落のマリオネット

32 清掃員

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 銀次郎たちは地下の監視室に集まって、今まで出てきた調査結果を突き合わせていた。
「でかしたぞ! これで点検業者の方は捕まえられる。中山、大金星だぞ!」
「いいえ! 志乃ちゃんが見つけてくれたんですよ! 褒めてあげてください」
「ありがとう! よくやってくれた。上の連中には話しておくが、さすがに高校生が見つけたなんて公表できないからな、公には小雪と佐久間の実績になるぞ」
 そんな銀次郎の小雪は少し困り顔だった。

「もう一人の清掃員の方が難しいです。一階と犯行現場のフロアでカメラにちょっと映っただけで、それ以外では写っていませんでした」
「駐車場はどうだ? ヤツは駐車場までは行っている。そこから車で出ていないのか?」
「はい! 全てチェックしましたが車では出ていません」
「着替えて戻ったか。着替えれば、普通に一階から出られるからな」
「そう考えるのが普通です。見学者に紛れて出てしまえば見つかりません」
「通行証はどうなんだ? 返さなくても帰れるのか」
「はい、清掃員や業者の通行証はその日限りのものを発行しています。回収ボックスに入れて帰る仕組みです」

 この件は完全に手詰まりになってしまった。
「ヤツは、ひとつだけ手がかりを残した。猫背の男なんかじゃない! 背筋の伸びた男だ! 身長も5センチぐらい高いかもしれないぞ」
 ヘルプマンにたどり着く証拠はなかなか出てこない。残ったのはチラチラと映った清掃員の後ろ姿だけだった。
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