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第三章 奈落のマリオネット

23 爆発

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「ドカーン!!」と言う爆発音がビルに響き渡った。
 銀次郎たちは慌てて部屋の外に出たが、現場がどこなのだか分からない。しかし、すぐ報告が来た。18階のアナウンサー室、三人が行った場所だ! 
 銀次郎は急いで駆けつけると、ロッカールームは滅茶苦茶でまだ煙が充満していた。
「涼! 大丈夫か?」
 銀次郎たちは飛び込んで手分けして安否を確認した。
 川辺はどうにか息があるようだ。涼も意識がある、背中と足に破片を受けたようだが命に別状はない。良かった……とっさに小雪を庇ったようだった。
「銀さん、これ! 『unknown』から連絡があると思いますのでお願いします!」涼のスマホを預かる。
「後は任せろ、よくやったぞ!」
 銀次郎は涼を安心させるように励ました。
「小雪! 大丈夫な様なら、涼について行ってやってくれ。頼んだぞ!」
 そう言ってまとめて救急車で送り出した。
 そのすぐ後に、俺の持っている涼のスマホに着信がある。

「おい! 大丈夫か?」
 『unknown』からの連絡だ。
 
「涼はいま病院に搬送された。命に別状はない安心しろ!」
「あんたは誰だ!」
「俺は涼の相棒だ」
「銀さんだな?」
「ああ、そうだ」
「警告はしたんだが間に合わなかったか。くそ!」
「なぜそう思った?」
「俺ならそうするからさ」
 ピリピリとした会話が続いていた時、会話に横から割り込む声がした。

「おっちゃん。何でもいいから現場を動画で見せて。早くして!」無愛想に女が命令口調で銀次郎に指示をする。
「待て! 今、見せてやる。おっちゃんはこういうの苦手なんだよ。急かすな!」
 銀次郎は涼のスマホを捜査して爆破周辺の動画を苦心して送った。

「スマホの大きさでこの破壊力は異常だね。ヨーロッパのテロで最近使い出した高性能爆弾の可能性があるよ。時限式でなければ近くにいて起動させたのかもしれない。鑑識に念入りに調べさせて、何かが残ってるかもしれないから」
 さらに、その会話の途中に割り込んでくるヤツがまたいた。

「どうもすいません。『unknown』のメンバーは礼儀作法が出来ていませんので、ご迷惑をおかけします」ばか丁寧なヤツだ。
「初めまして、私は『unknown』サブリーダーを務めています、フォックスと言います。以後お見知り置きを黒岩銀次郎さん」丁寧すぎて逆に怖い感じがした。
 フォックスという男からは、爆発したスマホの残骸を回収出来るのであれば、電脳と共に『unknown』の方にも見せて欲しいということ。それにもう一つは、現在ドローンで捜索中のペトスの被っていたブラックギアの記憶媒体が見つかったなら、同様にデータが欲しいということだった。涼が入院中の今、俺が中継ぎをしなくてはならないが、電脳だけでなく『unknown』もサポートしてくれる、心強い限りだ。
 
 ここまでは、後手後手で犯人に操られっぱなしだが、どうにかして一矢報いたい。そのチャンスはあるのか? ここからが正念場だ。銀次郎は涼のスマホを強く握りしめた。
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