電脳捜査課 黒岩銀次郎の受難

第三章 奈落のマリオネット

12 定期点検

　収録スタジオにはまだ沢山の人達が残されていた。その中には高校生三人も含まれていた。
　スタッフへの事情聴取、観客への聞き込みなどなど、捜査一課と電脳が手分けをしてやっている所である。
「仁さん！　見てみなよ。地上の人があんなに小さく見えるよ」
「恵、分かったから窓から離れろ。あぶねーぞ！」
「窓開いてるわけじゃないからさ、大丈夫だよ！　仁さん怖いの？」
「馬鹿言うんじゃねえよ。俺はなぁ！　足が地につかないところは嫌いなだけなんだよ！」
「それを高所恐怖症って言うんじゃない？」
「うるせえ！　ほっとけー」
　全く緊張感のない二人であった。

「あのー、小雪さん」
　遠慮気味に一郎は小雪に質問した。
「あらかじめスタッフが用意したギアではなく、違うギアをつけていたんですよね。それはいつ運び入れたんでしょう？　それと、排気口の鉄柵はいつ取ったんでしょう？」
「エエ、その辺は、今調べてもらっているところだけど、何日か前にメンテナンス業者が来ているみたいなんだけど、それがおかしいの」
　小雪はそう言って少しずつ説明を始める。

「定期的に点検に来てくれている、メンテナンス業者の定期点検は来週の予定なんだって、今週は来てないの」
「じゃあ、今週来たのは？」
「分からない、向こうから連絡があったみたい」
「それが犯人？」
　一郎と志乃は顔を見合わせた。

　立川志乃は考えをまとめながらさらに疑問を口にする。
「でも、最終的に脚立を移動させて、排気口の出口に誘導したのは誰なんですか？」
「入口には警備員がいるからチェックはできているの、スタッフと出演者、それに清掃員ぐらいしかいないわ」
「メンテナンス業者、清掃員。これじゃあ、誰だか分からないよ」
　頭を抱える一郎に小雪は微笑んだ。
「でも大丈夫！　スタッフの誰かが、この計画に加わっていなければ成立しないから。捜査一課の事情聴取の結果を待ちましょう」
　
　小雪たちは期待して待ったのである。