電脳捜査課 黒岩銀次郎の受難

第三章 奈落のマリオネット

09 奈落へ

　ニコラス・ペトスは、鼻歌交じりで排気口の中を移動していた。ペトス自慢のこのブラックギアには、ネットワークに繋がらなくてもAIにより、ある程度のナビゲーションシステムが使える。今もそのAIの案内で収録スタジオまで行き、排気口ダクトから人気キャラクターのコスチュームで登場！ という手はずになっていたのである。

「正面が出口です。さあ、そこから一気に登場して下さい！」
 ナビの声に急かされながら、ペトスは颯爽とスタジオに登場するはずだった……。

「うぁ？　あああああー！」

　その声は、あたり一面に響きわたり。やがて小さくなっていく、そして消えた……。
　
　その時、一郎は収録スタジオの窓際にいた。何気なく見ていた外の風景に、突然、異物が混ざり込む。最初は人形だと思った、糸が切れて落っこちていくマリオネット。でも違う！　そのマリオネットは悲鳴をあげていた！　同じように見ていた、女の人が悲鳴を上げる。
　スタジオ内は騒然となった。

　なんでこうなった！　どこから落ちたんだ？　混乱する中、とりあえず捜査一課と鑑識に連絡をして、銀次郎たちは地上へ向かった。スタジオの方は仁さんを呼び出して小雪と一緒に任せた。