上 下
29 / 94
第二章 アリスの楽園

18 集合

しおりを挟む
 ◇ Real world ◇

 日野と銀次郎は部屋から飛び出してGPSの示す西側の端に走った。
「いません! この階ではないようです」
 GPSは位置を正確に示してくれていたが、高さまでは表示できない。五階までひとつづつ階を探さないといけなかった。

「日野、手分けをするぞ。お前は下だ、俺は上を探す」
「わかりました!」
 日野は階段を降りて行く。
 銀次郎は三階を探し、四階へ上った時、五階の階段を降りてくるマイケルに会った。

「お前、今までどこにいた!」
「え? 所用ですよ。言わないといけないんですか?」
「とにかく来い! 話を聞かせろ」
 銀次郎はみんなの集まる、二階の中央監視室にマイケルを連れて行った。

 二階の喫煙室で、仁義弘は、恵とヒナが寝ているリクライニングシートの横に立っていた。無言で見つめていたその時、突然乱暴にドアが開く。
「こんな所に居たんですか、仁さん! トリックがわかりました。ここは他のメンバーに任せて、早くみんなのところに来てください」
 ドカドカと慌ただしく、仁の前に交通総務課の三人娘が登場したのだった。

 † † † 

 研究棟二階の中央監視室に、ほぼ全員が集まった。後は、夏美と恵がリアルに戻れば完了だ。その間に、涼と小雪は何やら打ち合わせをしている。

 夏美は目を覚ました時、銀次郎の腕の中にいた。無事に帰れた、子供達を守れた、色々な感情が涙となって頬を伝おうとしたその時、急に横にはじき出された。

「親父。死にかけたよ! 痛かったよ!」
 恵がわざわざ夏美を弾き飛ばして、銀次郎の腕の中に飛び込んできたのだ!

  めちゃめちゃ確信犯だ!
 そこまでやるか!
 怖い……。

 涼はこの時、女性の争いには決して関わってはいけないと心に誓ったのであった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この満ち足りた匣庭の中で 三章―Ghost of miniature garden―

至堂文斗
ミステリー
 幾度繰り返そうとも、匣庭は――。 『満ち足りた暮らし』をコンセプトとして発展を遂げてきたニュータウン、満生台。 その裏では、医療センターによる謎めいた計画『WAWプログラム』が粛々と進行し、そして避け得ぬ惨劇が街を襲った。 舞台は繰り返す。 三度、二週間の物語は幕を開け、定められた終焉へと砂時計の砂は落ちていく。 変わらない世界の中で、真実を知悉する者は誰か。この世界の意図とは何か。 科学研究所、GHOST、ゴーレム計画。 人工地震、マイクロチップ、レッドアウト。 信号領域、残留思念、ブレイン・マシン・インターフェース……。 鬼の祟りに隠れ、暗躍する機関の影。 手遅れの中にある私たちの日々がほら――また、始まった。 出題篇PV:https://www.youtube.com/watch?v=1mjjf9TY6Io

フリー朗読台本

𝐒𝐀𝐘𝐀𝐊𝐀
エッセイ・ノンフィクション
これは、私の心に留まる言葉たち。 この言葉たちを、どうかあなたの声で生かしてあげて。 「誰かの心に残る朗読台本を。」 あなたの朗読が、たくさんの人の心に届きますように☽・:* この台本は、フリー朗読台本となっております。 商用等、ご自由にお使いください。 Twitter : history_kokolo アイコン : 牛様 ※こちらは有償依頼となります。 無断転載禁止です。

そして、天使は舞い降りた

空川億里
ミステリー
 舞台は東京都の北区。赤羽大学の女子寮で、不可解な事件が起きるのだが……。

愛と狂気のダンス

春巻翠
ミステリー
本心なんて分からない。 でもそこに愛を感じたんだ。 愛じゃなきゃ説明できないよ。 愛じゃなきゃ… 愛って…何?

【 よくあるバイト 】完

霜月 雄之助
BL
若い時には 色んな稼ぎ方があった。 様々な男たちの物語。

「繊細さんの日々のこと」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
「繊細さん」の私が、日常で感じたことなどを綴ります。 ちなみに私は内向型HSPです✨

白パン探偵物語-陰謀&都市伝説を調査せよ-

あふろ
ミステリー
白パン探偵事務所が、都市伝説や陰謀の謎に挑む!

消失

ミステリー
突然山の中で目覚めた主人公が、自分に関するすべての記憶を失ってしまい、自分の運命を他人任せにするしか無い生活の中に、いくつもの奇妙な出来事が起きてくる。 最終的に、何が本当で何が嘘なのか・・・。

処理中です...